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無理は禁物

*この小説はフィクションです。

 司たちは戦いから隠れ住処アジトへ戻っていた。然し、美鶴が居ないことを知らない彼らは無事に帰還できたことに安堵している。

「とりあえず、美鶴さん呼びましょうか」

 その言葉を合図に司と御角は奥へと移動する。誰かが駆け寄ってくる音が聞こえ、武蔵は立ち止まった。

 駆け寄ってきたのは探だった。探は司を見ると、一度は安心した表情を見せるが、足を止めてしまう。

 その理由は流を背負っている武蔵の存在だった。探は武蔵を知らない。武蔵と初対面だ。それは武蔵も同じこと。

 だが、武蔵は元阻止する者(ブロッカー)。探とは初対面でも素性を知っている。

 一方、探は知らない。咄嗟に身構えた。 

「この人誰? もしかして奴ら? それなら、」

 武蔵を睨みつけながら、司に問いかける。言葉が途切れてしまう。

 司が武蔵を庇うように立ちはだかった。

 司を信頼している探にだけにこそできる行動だ。司は探を見つめるだけ。

「分かったよ。俺、どうすればいい?」

 表情を和らげ、再び問いかける。

「美鶴さんを呼んでほしいんだ。一刻も早く、流を助けたいんだ」

 司は真剣な表情で頼み事をするが、探は表情を曇らせる。

 美鶴はいない、司たちを探しに行ったと言えば司たちがまた出て行ってしまうと思ったのだ。何も話せず黙っていた。

 口を噤んでいる探に武蔵は状況を把握する。すぐにあることに気づく。

「美鶴さんはここには居ないんですね? どこに行ったのでしょう」

 その言葉に司は難しい顔をする。自分が原因だとは気づいていない。

「どこ、」

「馬鹿なの? じいさんに会わせろって言ってたじゃん。能力使って僕たちを連れ出したのはどこのどいつだよ」

 司の言葉を遮り、呆れながら言葉を口にする。

 司は御角の言葉に思い出し、事の重大さに気づく。

「瘉維さんに頼みましょうか。このまま放っておけば流さんの命が危ない。一刻も早く、」

「何言ってるの。俺、案内するから早く!」

 武蔵が背負っている流の姿を見れば、説明している時間などないはずだと探も理解できる。

 勢いよく走り出すと、ついてくるように言葉を口にした。


 流は危うい状態にも関わらず、一命を取り留めた。

 腹部に受けた傷の処置などを含め、時間は大いに掛かった。今は薬で眠っている。

「今は落ち着いてますけど、状態は変わらずです。良くなればいいんですけど、」

「そうですか。ありがとうございます」

 癒維は当たり前のように説明しているが、内心は未だに流を心配している。それに加え、突然現れた武蔵。

 彼女は武蔵を知っている。なぜ生きていたのかまでは知らない。

 司に教えてもらおうとした瞬間、司がふらついた。咄嗟に瘉維は司を支える。

 司にも限界が来ていたのだ。

 それもそうだ。優勢な状況だったとしても、能力を使いすぎている。

 どれほど強くても、阻止する者(ブロッカー)は代償の影響を受ける。

 それでも、司は気を取り戻す。

「ありがとう。でも、俺は大丈夫だから。武蔵を、」

「何を言ってるんですか。私はまだ(••)あちら側ですよ。代償はありません。それに先ほど、体が透けてたじゃないですか。無理はいけません」

「大丈夫だ。俺より年寄りを優先させるべきだ」

「失敬な!」

 そんな会話を横目に瘉維は苦笑いをする。二人のやり取りがどこか懐かしさを感じつつも久々の口論に慌て出す。

 数分間、瘉維は二人のやり取りに入れず、ただ収まるのを待つことにした。


 突然、司とやり取りをしていた武蔵が一瞬の隙をつき司を怯ませた。司はしゃがみ込んでしまう。

「瘉維さん、司坊ちゃんをお願いします。私は行かなければいけないところがあるので失礼します」

 癒維は呼び止めようとする。先を急ぐ武蔵は行ってしまった。

 しゃがみ込む司の背中を摩ることしかできない瘉維は美鶴のいない状況をどうするか考える。

「俺は大丈夫だ。武蔵を、」

 司は必ず大丈夫だと口にする。それは決まって大丈夫じゃない時のほうが多い。それが今だ。

 隠れ住処アジトに戻る前、一度透明化した。大丈夫だとは言えない状態なのは確かだ。

 それでも、司の体力回復は早い。体力は問題ない。心配なのは精神面だ。司の場合、透明化した理由は精神面が問題のことが多い。

 過去に起きたことが関係している。

「今はゆっくり休んで。私は隼人くんたちのところに行ってくるから。また抜け出したりしないで」

 言葉を残して瘉維は出ていった。


 残った司と流。

 流は眠っている。相当な損傷ダメージを受けている。いつ目が覚めるのか分からない状況。

 司はベッドの横の椅子に座り、流を見守る。

「俺のせいで、悪いことしたな。早く目を覚ましてくれ」

 誰に言うまでもなく言葉を漏らすと、ベッドの脇に顔を埋め、司は眠ってしまった。

 疲れがどっと出たのだろう。長い間、眠ったのだった。


 瘉維は隼人がいる場所へと戻ると、小さくため息をつく。

「瘉維さん!」

 大きな声で呼ぶ寧々。寧々は隼人を心配しつつも馨と勇輝とともに瘉維を待っていた。

 癒維ははっとして我に返ると、今頼れるのは医療班を除いて自分しかいない。

 体に違和感を覚えつつ、寧々の元に駆け寄った。

次話更新は4月3日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。


もしかしたら、司の過去編を考えています。

よろしくお願いします。

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