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形勢逆転

この小説はフィクションです。

 斉と剣十と戦うことになった武蔵と司。二人は真剣な表情で彼らから目を離さずどう攻めるか考える。

 まず動き出したのが、司だ。司は自分の姿を消して斉に攻撃を仕掛けようと素早く動いた。

「右、左、右、斜め左」

 然し、攻撃の方向を読み上げるように剣十が斉に知らせる。そのおかげで斉は見事に攻撃を躱わし続けることが出来ている。

 それでも、司は攻撃をやめない。

「一度、戦った。攻撃をしても無駄だ」

 寡黙な剣十が言葉を続けるが、司の動きは止まらない。

 次の瞬間、司の姿が武蔵に変わった。

 剣十は目を大きく見開き、驚きを見せる。

「隙を見せてはやられますよ」

 武蔵は笑みを浮かべながら、言葉を漏らす。

「どこを見てるんだ? 俺はここだぞ」

 姿を消していた司の姿が剣十の隣に現れたかと思えば、剣十に攻撃を与えた。

 不意打ちに剣十は反応できず、攻撃を受けてしまう。

「やはり思った通りです。あなたは能力を使えば、剣十さんの能力も無効になる。どちらにせよ、どちらかが能力が使えない状況で私たちには勝てません」

 武蔵は状況を説明すると、斉に攻撃を与える。

 形勢逆転だ。

 然し、斉たちは諦めなかった。

 彼らの攻防戦が数時間続いた。


 今まで危機的な状況に陥っていた司たち。然し、武蔵が加わったことにより、状況が一変している。阻止する者(ブロッカー)のほうが優勢だ。

 変える者(ブラックチェンジャー)は追い込まれている。その証拠に斉の額から汗が流れていた。

「剣十、ひとまず引こうか。このままでは俺たちがやられてしまう」

 斉の言葉に剣十は首を縦に振る。

 一旦、休戦。その選択は阻止する者(ブロッカー)にも好都合だと言っていいだろう。

 現に、武蔵が来る前に流が負傷してしまっている。長期戦になれば、命が危うい。

 治療する者がいないため、今は御角の能力で空間に匿っているだけ。それもいつまで持つか分からない状況。


 そのことを分かっているからこそ、武蔵は斉たちの言葉を聞かないふりをした。

「おい、逃げるな。最後まで戦え」

 司は違った。去ろうとする二人を止めようと言葉を発したのだ。

 斉と剣十は司のほうを振り向く。司から目を逸らし、気にすることなくその場を去っていた。

 武蔵がぐいっと司の腕を掴んでいたのだ。

 司は振り解こうとするが、力の強さに顔を歪める。

「分からないのですか? 能力を使いすぎて、体が消えかかっている。それに流さんの体も限界を迎えてしまいます。美鶴さんのところへ行きましょう」

 咄嗟に司は自分の手のひらを見つめる。

 武蔵の言う通り、司の体が薄らと透けている。まるで今から成仏してしまうかのような姿だ。


 司の能力は自分を含めて対象者の存在を消す。所謂、透明化。

 一度に使い続ければ、司の体に負担が掛かるのは当然のこと。自身でも気づかないうちに代償を受けていた。

「司坊ちゃん、しっかりしてください!」

 司は武蔵の声に我に返って、顔を上げた。


 今まで何度か戦ったことがあるが、司の体が消え掛かることはなかった。故に動揺しているのだ。

 本当ならば、もう一つの能力でその効果は無効化されていた。司の知らないところで。

 然し、消す能力を使い続けた挙句、代償をかなり受けていた。

「立てますか?」

 それでも立とうとしない司に武蔵が動き出す。

 司の体を支えながら、立ち上がらせようとした。その瞬間、僅かに司の手が震えていることに気付いた。

 司を立ち上がらせると、肩に手をのせる。

「大丈夫です。司坊ちゃんは消えません。何があっても。流さんのところに行きましょう」

 漸く、司は立ち上がる。武蔵と一緒に流のいるところへと向かった。


 徐々に司の姿がはっきりとした頃、流のところへと着く。御角は能力を解いている。

「流、大丈夫か! 無理をさせて悪い。俺が連れてきたせいで、」

「違う。ついて、きたのは、俺の、意思だ」

 さっきまで意識を失っていた流は目を覚ましている。

 だが、依然として状態は変わっていない。寧ろ、悪化しているように見える。

 表情を見れば、額から汗が滴り落ちている。息も苦しそうに荒げていた。

「いや、俺が、」

 司が言葉を続けようとした直後、流が起きあがろうとした。

「駄目です! 今は動かないで。それに今すぐ能力を解いて。じゃないと、体力が限界にきてしまう」

 その言葉に司ははっとする。気付いていなかった。流が能力を使っていることを。


 流の能力は流れを作り出す。上手く使えば、流れを一時的に止めることもできる。

 意識を取り戻し、目を覚ますと記憶を思い返す前に腹部に痛みを発してしまった。

 御角を見かけると、状況を聞いた。

 流が倒れた後、司と武蔵が協力して戦っていることを知った流は動こうとするも御角に無理だと言われてしまう。

 御角の能力で空間から出れないこと、更には死んじゃうよと脅されもした。

 仕方なくじっといたが、腹部からの流血により痛みが激しくなり、能力で血を止めて耐えていた。

 次第に能力の代償で体に様々な症状が起きた。それでも、能力を使い続けた。今に至るというわけだ。


 今の流は無理をしている。それを察した武蔵が言葉を掛けるが流は言うことを聞かない。

 一瞬でも気を抜けば、また気を失ってしまうという恐怖を感じていた。

「もう敵はいないんだ。お願いだ、流。能力を使わないでくれ……」

 流の姿を見て司は必死に訴えるように言葉にする。それでも聞く耳を持たず、息を荒げ続ける。

 仕方なく武蔵が流の腹部の傷の様子を見ようと屈み込む。

「分かり、ました、から。俺に、触らない、で、くだ、」

 能力を解くと、流は気を失ってしまった。すでに出血は止まっていたが、服に染み込むほどの出血量。

 深刻な事態となった。


 その様子を黙って見ていた御角。彼女の口から発する言葉が二人の表情を変える。

「もうさ、手遅れなんじゃないの? そいつ死ぬよ」

 その瞬間、司は御角の胸倉を掴んだ。

「もう一度言ってみろ。俺はお前を殺せるんだからな」

 御角を鋭い目つきで睨みつけながら口にする。すさまじい殺気を感じた御角は怯んだ。

 司が手を離すと、御角は舌打ちをし目を背けた。

 その間に武蔵が簡単な処置をし、流を背負う。

「司坊ちゃん、今は隠れ住処アジトですよね? 行きましょう」

 司は正気に戻り、そうだと答えた。彼らはその場を後にし、隠れ住処アジトへと急いだ。

次話更新は3月20日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

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