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相談事

*この小説はフィクションです。


 美鶴は一人、別室で司の勝手な言動に思い悩んでいた。美鶴は過去を思い出し、頭の中である言葉が耳にこびりつく。

『何かあれば、勇輝含めてあいつらの面倒を見てやってくれないか』

 生前の力弥との会話の中の言葉だ。まるで遺言を残すかのような言葉を聞いた頃は冗談だと思って気に留めなかった。

 それが現実となった今、彼らの行動に悩まされることになっている。それ以前から悩まされていたのかもしれない。

 亡くなった力弥が勝手な行動を何度も繰り返していたからだ。


 然し、司までとは思っていなかった。

 司だけは賢明な判断ができると、美鶴は思っていたはず。

 先ほどの予想外の言動に怒りを覚え、つい平手打ちをしてしまったのだ。

「流石に手を出しちゃだめね。あの人と同じじゃない……」

 ふと、こぼれた言葉にひとり反省すると、切り替えるように自分の両頬を叩く。

 座っていた椅子から立ち上がった直後、勇輝が現れた。

 勇輝は真剣な眼差しで美鶴を見ている。思わず美鶴は呆気に取られてしまう。

「みっちゃん、ちょっと話があるんだけど聞いてくれる?」

 突然の問いかけにしんと静かになる。勇輝を黙って見つめる美鶴だが、勇輝のほうは平然としている。

 寧ろ、真剣な眼差しのまま見つめ続けている。


 不意に勇輝はペンダントを取り出した。

 あの事を言うつもりだ。

「父さんが持ってたコレ知ってるよね? 僕、父さんが亡くなる前に貰ったんだけど、譲り受けたのが正しいのかな。そんなことよりも、手にした時から不思議な力が表れたんだ。握ったら、人の気持ちを読み取れるみたい。これってどういうことかなって思ってさ」

 美鶴の頭の中である記憶が浮かんでくる。

 それは、勇輝が御角を連れていこうと言った時だ。勇輝だけ御角に恐れを持っていないような接し方だった。過去を知ってしまったからと言って平然としていられるのだろうか。


 美鶴は考える。

 昔からの勇輝には人の記憶を見れても、人の気持ちを読み取る力は持ち合わせていない。

 力弥からも見たことがない。あったとしても、戦いに勝つためには伝えてくるはず。

 だとすれば、可能性はただ一人。然し、その人物はすでに亡くなっている。

 なぜ、ペンダントを通して能力が表れたのかは不明。もしかしたら、有効的に使えるかもしれないと考え始める美鶴。

 美鶴の視線がペンダントに向いていることに気づいた勇輝はペンダントを開く。中には勇輝の母、透子の写真が入っていた。

「この人が透子さん? あの人の……」

 美鶴は言葉にするも、言葉が途切れてしまう。

 生前の力弥と話しをしていた時、よく『透子』という名を耳にしていた。

 実際に会ったこともなければ、顔も見たことがない。どんな能力さえも聞いたことがなかった。

 ただ、力弥からは気持ちを読み取られたこと、恐らくそれが透子の能力なんだと言っていたのを思い出す。

「ペンダントを握ってみてくれないかな? もし、何も感じなかったら、僕だけに、」

 勇輝が言葉を言い切ろうとした、その時だった。


 勢いよく誰かが入ってきた。

 癒維だ。癒維の表情から焦りの色が見える。荒い息を整えようと大きく深呼吸する。

「どうしたの? 何かあった?」

 美鶴が訊ねると、やっと息がつけるようになる。

「司が能力を使って流とあの子を連れ出しました。このままでは、」

 言葉を耳にし、血相を変える美鶴。またか、と心の中で思いながらも冷静になって考える。

 癒維にここを任せるように頼むと、勇輝に目をそっと向けた。

「落ち着いたら、またペンダントのことを聞かせてちょうだい。新たな力になるかもしれないわ」

 言葉を残して、その場を離れた。


 *


 美鶴がいなくなった後、勇輝と癒維が残された場所で言葉を交わすことなくじっとしている。

 不意に癒維の視線がペンダントに向けられる。

「それは、もしかして」

 ぽつりと言葉を漏らす癒維にペンダントを見せた勇輝。ペンダントは明かりの光に反射して輝いている。


 突然、勇輝は何を思ったのか、癒維に視線を向ける。

「そうだ。本当はみっちゃんに試してみようと思ったんだけど、癒維さんがペンダント握ってみてくれないかな?」

 勇輝の問いかけに癒維は分かったと返事をした後、ペンダントをそっと握った。然し、何も起こらない。

 その様子を勇輝はじっと見守っていたが、何事もなかったような雰囲気を感じると、ふうっと息を吐いた。

「私には何も感じなかったよ。このペンダントは力弥さんの形見なのかな? だとしたら、恐らく特別なんだと思うよ。あとで美鶴さんにちゃんと聞いたほうがいいと思う」

 癒維の言葉に残念そうな顔をする勇輝。すぐに表情をやわらげ、そうだよねと納得する。あとでちゃんと聞いてみると言葉を付け加えた。


 二人がそんなやり取りをしていると、不意に寧々がそっと様子をうかがいつつも、ゆっくり入ってきた。

「癒維さん、ここにいたんだ。あの、すぐに来てほしいの。隼人が落ち着いたんだけど、ちょっと様子がおかしいの。何度も物にぶつかって、たぶん、」

 咄嗟に癒維は隼人がいる場所へと向かおうとする。

 然し、勇輝が唖然として立ち尽くしていることに見兼ねて勇輝の背を押す。

「勇輝くん、行こう。美鶴さんが戻ったときに話はちゃんと聞くから。今は、」

 直後、勇輝の頭の中に負の感情が流れた。ちょうど、ペンダントを握り締めた瞬間だ。

 おそらく、癒維の不安な感情だろうとすぐに察する。


 不思議な力が表れてから時間が経っている。勇輝にとっては慣れたはずの感覚が未だに混乱させる。

 それは、不安も含まれる負の感情だ。

 勇輝は感情に流されやすい。それでもなんとか気を取り戻そうとする。

「勇輝、行くよ!」

 寧々の大きな声で我に返った。勇輝はペンダントを手に取って首にぶら下げると、寧々と癒維とともに隼人たちがいる場所へと向かった。

 

今回からあとがきは次回の更新日のお知らせのみとします。

楽しみにしていた方がいましたら、コメント下さればと思います。それを踏まえてあとがき続行か検討します。

次話更新日は2月20日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

よろしくお願いしますm(._.)m

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