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先走る気持ち

*この小説はフィクションです。

今回は若干の吐血表現があります。苦手な方はブラウザバックでお願いします。


 戦いが中断になり、阻止する者(ブロッカー)たちは隠れ住処アジトに帰還している。

 落ち着いて体勢を立て直そうとしていた時だった。体調を取り戻した流の体に異常が生じようとしていた。

 突如、流は吐き気に襲われ、耐えようと手で口を覆った。然し、耐えきれず、吐き出してしまう。

 そっと手の中を見やる。手には血が付いていた。

「流さん、それって……」

 探の声で流は手を隠す。探に顔を向けて、笑って誤魔化す。探は浮かない表情をしている。

 探だけ流の不自然な笑いに気づく。それに勘づいてしまったのだ。

「大丈夫、だから。ただの、」

「待って。癒維さんか美鶴さん呼んでくるから。待ってて!」

 探は飛び出すように出ていってしまった。

 探の能力でこっそり呼んだほうがいいんじゃないかとも流は思ったが、司の『能力は使うな』という言い付けを守ってるんじゃないかと考えが浮かんだ。


 ここ、隠れ住処アジトに来てから探は司と一段と打ち解けている。

 二人は一緒に戦ったものの敵の強さに圧倒され、どうにか逃げ出して戻ってきた。恐らく、そのときに何かあったのだろうと流は想像して微笑む。

 直後、吐き気に襲われる。

 次第に息を荒らげて机に顔をうずめた。彼の体にはすでに異常が生じていた。

 その理由は流にしか分からない。

 流は思った。またどこかで変える者(ブラックチェンジャー)が過去を変えようとしているのではと。

 なんとかしたいと思っても、流の体調は不安定なままの状態だ。


 不意に司が現れる。

 司は体調の具合を聞こうとしたが、流を見て状況を把握し、驚きを見せる。

「おい、大丈夫か!」

 司の声に静かに顔をあげた流。笑って誤魔化すも、とても大丈夫といえる状態に見えない。

 顔が青ざめ、口元には吐血した後の血が残っていた。

 戸惑いを見せる司はすぐに誰かを呼びに行こうと飛び出そうとする。流が司の腕をぐいと掴んだ。

「探が、呼びに行った、から、大丈夫、」

 言葉を伝えると、顔を伏せてしまう。

 司は心配そうに見つめた。


 暫くして、探は癒維を連れてきた。彼は司がいることに驚いた。

「司さん!」

 大きな声を出した探に反応する癒維と司。流は顔を伏せたまま動かない。

 司は鼻の前で人差し指を立てて『静かに』という身ぶりをする。

 体調を崩している流にとっては大声は体に響くだろう。それを考えての司の行動。部屋はしんと静かになる。

「流、大丈夫? ちょっと、ごめん。診察してもいい?」

 流は癒維の言葉に静かに顔をあげる。それを合図に癒維は診察を始める。

 体温、脈拍、呼吸、血圧などを測って体調を確認する。それから、薬を投与するために流の腕に注射を打った。

「薬が効くまで時間が掛かると思うから楽な姿勢でいたほうがいいかも。暫くは安静にしてて」

 癒維は診察を済ませると、心配そうに流を見つめる。流は癒維にありがとうと伝えると、机にさっと顔を伏せて落ち着くのを待った。

 司と探も癒維と同じように心配そうにする。

 ふと、司は探にひそひそと耳打ちする。探は頷く。

 ぽんと探の肩を叩いて司が部屋を出ていってしまった。

 癒維も暫くして、その場を去っていく。


 部屋に残ったのは探と流だけだ。

 居然、机に突っ伏す流をじっと見つめる探はベッドに戻りつつも、そっと様子をうかがっていた。

「流さん、もし何かあったら言ってください。俺、なんでもやりますから」

 ぼそっと呟くように口にするが、次の言葉が見つからない。

 無理に話しかけ、流の体に響いたら悪いと司に言われたのだ。見守っててほしいと頼まれた以上は様子見をするしかない。黙って起き上がるのを待った。


 どのくらい時間が経っただろう。実際にそんなに経っていないが、不意に流が顔をあげる。

 ベッドに背を預けて仰向けになった。

 二人の間にぎこちない空気が流れ始めた。

「流さん……」

 探は躊躇いながらも恐る恐る声をかける。

「心配かけて悪かった。もう、大丈夫だから。少し休んだら、癒維か美鶴さん呼ぶから大丈夫だ」

 それでも、探の表情は元気がない。探にとっては流が吐血するのを初めて見たのだ。

 心配せずにはいられなかった。

 吐血していた流は何事もなかったように平然としている。

 その様子をしばらく見ている探の視線に気付いた。振り向くと、探は気まずく視線を逸らしてしまった。


 *

 司は美鶴のところへと向かった。

 司と一緒にいた癒維もいる。司は流の体調の変化を報告しに来たのだが、それは癒維も同じだ。

 然し、司はもう一つ言いたいことがあった。

「美鶴さん。流の体調が不安定です。一応、薬を投与しましたが、いつ深刻な事態が起こっても、」

 癒維の声に美鶴は難しい顔をしている。美鶴も癒維と同じことを考えていた。

「美鶴さん。流も戦いに参加させます。何かあった時のための薬を流に、」

 司が言い切る前に司は頬に痛みを感じた。彼は咄嗟に頬を押さえる。

 司には何が起こったのか分からなかった。

 美鶴の顔を見れば、すぐに理解した。平手打ちされたのだ。

 美鶴が鋭い目つきで司を睨みつけている。

「今度、それ言ったら許さないわ。あの人がどういう行動して亡くなったか忘れないでちょうだい。もう誰も、死なせたくないのよ」

 美鶴は言葉を言い放つと、部屋を後にした。

 残された司と癒維はお互い目線を合わせる。すぐに目を逸らした司は部屋を立ち去るが、癒維が後を追いかける。



 二人が着いた場所は流がいる場所ではなく、変える者(ブラックチェンジャー)の御角がいる場所だった。

 御角はすでに目を覚ましてぽつんと座っているが、念のためか手足を拘束されていた。恐らく、美鶴だろう。

 未だに警戒している美鶴からしたら危険人物だ。拘束せずにはいられない。

 御角は司たちに気付くと、不機嫌な表情を向ける。

「僕に何か用? どうせ、僕らの目的はなんだ、とかだろ。教えないよ。話したら、僕殺されちゃうもん」

 不服そうに頬を膨らませ、淡々と口ぶりの御角に癒維は眉を下げる。

 一方、司はそんなことも気にせず御角をまっすぐ見据える。司にとってはそんなことは今はどうでもよかった。

「違う。俺が聞きたいのはこの前話していたことだ。武蔵は今どこにいる?」

 司の言葉に癒維が目を丸くして驚いている。

 彼女も武蔵のことを知っているが、以前の司と同様に武蔵が生きているとは思っていなかった。

 武蔵は災害に遭い、行方不明に。生存している確率が低いだろうと誰もが思っていたのだから。


 司の問い掛けに不機嫌にそっぽを向いて、答えようとしない御角。

「知ってるんだろ? 教えてくれ。武蔵は俺の、二丈家の使用人なんだ。どこにいる?」

 言葉を耳にした御角は司をきつく睨んだ。

「そっか。お前は二丈財閥の坊ちゃん……。そんな人間が能力者ブロッカーなのかよ」

 ぼそっと呟くように言葉を吐き捨てると、二人に背を向けてしまった。


流の体調が良くならないの心配(ノД`)

美鶴さん⁉︎ 司に平手打ち…気持ちは分かるけども手を出しちゃ…

まさかの司の新情報!


今回の話は流の体の状態と司の行動を書きました。

良くなったと思ったはずの流は体調が不安定です。その理由は前回の話で斉がチェンジャーを連れて過去を変えたかもしれないラストにあります。武蔵は阻止できませんでした。

流の能力はあらゆる流れを作り出します。体調を崩したことにより、現実の流れを感じ取ったことになります。

そして、司の新しい情報。

武蔵は二丈家の使用人だったのは司が二丈だと考えたときからそういう設定にしようと考えていました。

この後の話がどうなっていくのか色々明かしていこうと思います。


次話更新日は2月6日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

よろしくお願いしますm(._.)m


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