閉じ込められた空間の中で
*この小説はフィクションです。
司と探が敵と遭遇し、苦戦を強いられていた頃、同じく敵に遭遇していた美鶴たち。
二人のような不利な状況ではなく、余裕を見せている。
遭遇したのは四隅御角。
だが、御角の表情が曇っている。その様子から御角が追い込まれているようだ。
彼女は嫌な感じを覚える。それは、武蔵をこっそりと後を追った時のこと。
阻止する者の住処に侵入した時に感じた雰囲気。それを今も感じたのだ。
雰囲気は美鶴から放っていたのだ。危険を察知した御角はその場から逃げ去ろうとする。
足が竦んで体が硬直してしまう。
「あら、あなたは私が放っている雰囲気が見えるのね。滅多にないのに」
御角が動かないことに美鶴は笑みを浮かべる。御角にとって美鶴の笑みが不気味に見えている。
「あなた、変える者よね? 死にたくなかったら、あなたたちの住処の場所を教えてくれるかしら? 特定しても消えてしまうのよね。なぜかしら?」
美鶴の質問に御角は恐怖を募らせる。何も答えられない。
本当は言われたところで分かりきっている。教えなければ目の前にいる美鶴に、教えるならば味方である狂にやられてしまうと思ったのだ。
どちらにしても、やられてしまう。御角には選択肢がない。そんな御角はあることを思いつく。
突然、にやりと笑いかける御角に美鶴は眉間に皺を寄せる。
「何を企んでるの? 何をしても私に敵うはずないわ」
きっぱりと言い切ったのにも関わらず、御角の表情が変わらない。寧ろ、余裕を見せる。
次の瞬間、御角は能力を発動する。すぐに美鶴は反応し、瞬時に移動する。
容赦なく強い一撃を加えようと拳を前に突き出す。
「美鶴さん、上!」
隼人の声を耳にし、咄嗟に上を向く。頭上には何もない。それでも、異変を感じ取った美鶴は避ける。
「もう少しだったのに! あんたが一番うざいんだよね」
御角の攻撃は簡単に避けられてしまい、御角は怒りを露わにする。
御角の能力は空間を作り上げる。空間の中に相手を閉じ込める。だが、美鶴が一枚上手だ。御角は空間に閉じ込めることに失敗してしまう。
「あなたが私を捉えようしても無駄よ」
美鶴の言葉に御角は顔をしかめる。御角にとって相手が悪かった。
然しここで諦めたら折角の機会を逃してしまう。
ある考えが浮かぶ。御角は再び能力を発動する。
不敵な笑みを浮かべた御角に美鶴は大きく目を見開く。
突如、彼らの周りに何かが出現する。
「何よ、これ……」
あまりの大きさに美鶴は思わず声に出してしまう。
何かが彼らと敵である御角を囲ってしまったのだ。
美鶴と隼人は驚愕している。
空間に閉じ込められてしまった。
実は勇輝もここにいるのだが、今まで押し黙っていた。そんな勇輝は動揺することなく、呆然としてその場に立ち尽くしている。
咄嗟に美鶴は勇輝を見やる。勇輝の無事を確認すると、ほっと胸を撫で下ろす。
その様子に気付いた御角。
「そういえば、そっちの最強の男? いなくなったんだよね? 僕たち好運じゃん。あ、でも、」
言葉を切ると、鋭い眼光を勇輝に浴びせかける。その視線に気付いた美鶴は咄嗟に勇輝を守る。
「そっか、そいつが最強の男の息子ってことだ。じゃあ、話が早いじゃん」
御角は指をぱちんと鳴らした。
次の瞬間、美鶴と勇輝の間に透明な壁ができる。
美鶴は見えているかのように壁をばんと叩くと、苦虫を噛み潰したような顔つきになる。
一方で勇輝は落ち着いている。
なぜ、こんなにも落ち着いているのか。それは、勇輝しか知らない能力にある。
不意に勇輝は首元に掛けてあるペンダントを取り出して握る。すると、握り拳の中で淡く光る。
勇輝の頭の中に記憶が流れる。誰かの記憶なのかは間違いない。
記憶が途切れると、勇輝は御角をじっと見つめる。
御角は勇輝に目もくれない。今は美鶴にしか目に入らない。
隙を与えれば、何をされるか分からないからだ。
美鶴は考える。ちらっと隼人を見やる。隼人は目で合図を送っている。いつでもやれますと言っているように。
然し、なるべく隼人に負担を掛けたくなかった。必死で最善の策を考える。
その時だった。
「美鶴さん、右!」
我に返った美鶴は右からの攻撃を食い止める。
「上!」
隼人の声が響き渡る。今度は攻撃を回避する。
咄嗟に美鶴は隠していたあるモノを取り出し、瞬時に御角の腕に注射する。
「は? 何それ? まさか、」
腕に刺さった注射を見ながら、思わず言葉にする。御角の腕に刺さったのは注射だ。
美鶴はふっと笑う。
美鶴は元医療関係者だけあって、薬の知識も持っている。
次第に御角は足取りがおぼつかなくなる。然し、美鶴の腕を掴んだ。
「僕の、負け、だよ。だから、一つ、願いを、聞いて、くれない? お前たちの、仲間に、なる」
そこで言葉が途切れ、御角はばたっと倒れてしまった。
薬の効果で寝てしまったのだろう。御角が倒れ、見えない壁が消える。
壁が消失したことよりも美鶴と隼人は予想外の言葉に驚いていた。
ただ一人、勇輝は倒れている御角をじっと眺めている。
彼は見てしまったのだ。彼女の記憶を。
「ねぇ、一旦戻ってこの子を連れていこう。その方がいい気がする」
勇輝の提案に二人は更に驚いていた。
え?御角?
美鶴さんと隼人が驚くのも当たり前だと思うのに…勇輝は何を見たのかな?(°_°)
ひとまず、三人とも無事でよかった
今回の話の展開は予想外だったかもしれません。
突然の御角の発言。
実は、話を考える時は開き直って仲間になると考えていました。
美鶴の強さを証明したくて少し変えました。御角が倒れてしまう状態に。
勇輝の力も忘れてはいけないなとも…
少しだけですが、御角の過去も関係してくるかもしれません。
次話更新日は12月12日(木)の予定です。
*時間帯は未定です。
よろしくお願いしますm(._.)m




