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*この小説はフィクションです。

 あれから数週間。

 阻止する者(ブロッカー)変える者(ブラックチェンジー)に見つからないようにしなければならない。

 そのため、葬式は簡単に済ませていた。

 風粏と力弥が亡くなって阻止する者(ブロッカー)の多くは気を落とし、口数が少なくなっている。

 その中で、隼人は必死に情報を手に入れようと、一人別室でノートパソコンと睨み合いっこをしていた。


 鷹野隼人たかのはやと。彼は視力に秀でた目を持っている。能力を発動すれば、死角を除いた範囲内なら状況を把握出来るほどに視力がいい。

 加えて、優れた頭脳を持っている。情報収集など容易たやすいはずなのだが、険しい表情をしている。どうやら切羽詰まっているようだ。

 その原因は、代償により視力が低下していたからだ。

 一度、彼は作業している手を止める。眼鏡をくいっと押し上げて頭をかきむしる。

 そんな彼を余所に、部屋の扉を叩く音がした。


 返事を待たずに部屋に入ってくる人物。美鶴だった。

 隼人は一度は気にしたもののノートパソコンに向き直る。

「忙しいところ悪いけど、休んでちょうだい。二人の葬式が終わってから、ずっと引き篭ってるでしょ」

 美鶴の言葉を無視し、手を止めようとしない。

 その姿に美鶴は隼人に歩み寄り、目の前まで歩いていく。

 目の前に来ると、ノートパソコンを音を立てるように閉じた。

 隼人はノートパソコンに挟まれた手を退かしたかと思えば、パソコンを開く。

 直後、美鶴は隼人の眼鏡を目から外し、わざと遠くへ投げた。

「人の話を聞きなさい! 休みなさいと言っているのが分からない?」

 怒鳴るように叫ぶ美鶴に隼人はびくっと肩を震わせる。それにも関わらず、隼人は再びノートパソコンに目を向ける。

 美鶴は深いため息をついて、遠くへと投げた隼人の眼鏡を取りにいった。隼人に眼鏡を渡すと、隼人をまっすぐ見つめる。

「左目、ほとんど見えてないでしょ。恐らく、他の五感能力者よりも影響を受けている。だから、休むべきと言ってるの。分かってくれるかしら?」

 それでも、隼人は聞く耳を持たず、ノートパソコンで作業しているばかり。

 再び美鶴がパソコンをぱたんと閉じる。漸く、隼人は美鶴に目を向ける。

「力弥さんが無理をして亡くなったから俺たちにも言ってるんですよね。それなら尚更です。俺たちがやらなければならない。だから、やれることをやってるだけです」

 隼人は淡々と述べるように話す。美鶴が何も言わなくなったことに気付き、視線を上げる。

 その瞬間、ぱちんという音とともに隼人は平手打ちを受けた。隼人の頬がひりひり痛む。

 咄嗟に頬をおさえる隼人だが、何が起こったのか分かっていない。


 美鶴の言う通り、隼人の左目はほとんど見えていない状態だったせいもある。然し、美鶴の予想外の行動に驚いたのだ。

「必死になるのは分かるわ。でもね、誰かが無理をしている姿を見たくないの。たとえ、今は大丈夫でもいつかは駄目になる時がくる。能力者であることを忘れないで」

 美鶴は言葉を吐き捨てると、部屋を出て行こうとする。然し、一度立ち止まる。振り返り、隼人をまっすぐ見つめる。

「ごめんなさい。痛かったでしょ。念のため、あとで私のところに来てくれる? それと、ちゃんと休んで。お願い」

 言い残して部屋を出ていってしまった。呼び止めようとする隼人だが、呆然としている。


 隼人は美鶴の姿を見て思った。平気な顔つきをしていても、仲間の死を惜しんでいるんだ、と。

 美鶴は口ではああいうが、目元が赤くなっていた。悔やんで泣いていたのが原因だろう。

「美鶴さんのためにも早く情報を手に入れないと……」

 ぽつりと言葉を漏らした隼人は作業を再開した。



 すぐにまた誰かがやってきたようだ。それでも、視線を変えない隼人。

「隼人、少し休んだら? 力弥さんと風粏を亡くしたから為になりたいのは分かるけど、体を壊してからじゃ遅い。力弥さんを見てたでしょ」

 探が隼人を心配して来た。探は隼人の様子に声を掛けるも隼人は耳を貸さない。


 気にせず近くの椅子に座る探。パソコン操作をしている隼人をじっと眺める。

「美鶴さんがさっき来てたみたいだね。なら、分かるよね? 美鶴さんも本当は悲しいんだよ。多分だけど、力弥さんのことが好きだったんだよ。あれは恋だね」

 次の瞬間、机を叩く音が大きく響いた。探の言葉に隼人が怒りを表に出したのだ。

「そんなことは分かってる! 本当にお前はいつも呑気だよな。そういうところに腹が立つんだ。出ていってくれ!」

 突然のことで探は呆気に取られている。探にとって隼人は冷静で物事を考える性格だと思っていたのだ。

 だが、真面目な分、抱え込む性格でもあった。


「早く出ていってくれ。俺はやることがあるんだ」

 探は仕方なく部屋から出ることにした。

 彼には悪気はない。いつだって場を明るくしようとしているだけ。

 今回は言い過ぎたと反省し、司がいる場所へ歩いていった。


前に進むために思うことはそれぞれ違うからこそぶつかっちゃうよね…

美鶴さんは休むこと

隼人は情報を入手すること

探は少しでも気持ちが晴れるように場を明るくする


今回から隼人と探を中心に書いていこうかなと思ってます。

そして、勇輝にも変化が⁉︎

頑張ります( ̄^ ̄)ゞ


次話更新日は10月10日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m


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