表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/68

父と子のぶつかり合い

*この小説はフィクションです。



 立ち上がれなくなった瞬に最後の攻撃を与えようとした勇輝の前に力弥が現れた。

 狂も現れ、勇輝の記憶に変化が起こる。

 勇輝は感情的になり、力弥を睨みながら、思わぬ言葉を発した。

「そういえば、親父は母さんを殺したんだよな。もう我慢するの嫌だから、消えてくれる?」

 言葉を耳にした力弥は驚愕する。狂に息子に何をしたのか問いたかったが、姿を消してしまっている。

 小さく舌打ちをして、仕方なく勇輝に向き直る。

 勇輝はすぐに力弥に襲いかかったが、避けられてしまう。

 それでも、攻撃を繰り返す。まだ力弥のほうが力が強いため、簡単に躱わされる。


 それを何度か繰り返して五分経った頃、力弥が攻撃を食い止め、勇輝と目を合わせる。

「勇輝、今すぐやめろ。お前の母親を殺したのは俺じゃ、」

 言い切る前に勇輝の攻撃が力弥の胸に当たってしまう。鈍い音を立てたものの力弥の表情は平然としている。

 勇輝の一撃一撃が鋭い。平然としていても、いつ体が思うように動かなくなってもおかしくない状態だ。


 それから、力弥は勇輝の攻撃を回避しながら、何度も呼び掛けた。

 然し、勇輝は聞く耳を持たない。我を忘れているからだ。

 勇輝が我を忘れるほど感情的になっているのは二度目だ。あの時とは明らかに違う。

 あの時は力弥が無理矢理に勇輝の潜在力を引き出した。

 今の勇輝は狂によってある記憶(•••)がよみがえり、そのせいで感情が暴発してしまっている。

 危険を察知した力弥からは焦りの色が見えていた。

「あの野郎……」

 呟きつつも攻撃を防いでいる。

 力弥にとっては勇輝との勝負ではなく、いつまで持つかの勝負だ。少しでも早く勇輝を止めたかったが、とてつもない力に苦戦を強いられている。


 次第に力弥は息を荒らげる。それに対して、勇輝は衰えを見せない。

 よく考えれば、力弥のほうが遥かに歳上だ。それだけではない。代償の影響により負担が掛かっている力弥の体には限界がある。

 息が上がるのも当然だった。

 そんな力弥は不意に深いため息をつく。直後、力を解放する。

 力弥の動き方が変わる。攻撃してくる勇輝の背後に一瞬で移動し、勇輝を吹っ飛ばす。

 それでも勇輝は立ち上がる。攻撃の態勢をとり、力弥のほうへ向かっていく。

「野郎、嘘の記憶を作りやがって。勇輝をここまで追い込むとはな。クソが、」

 力弥が言葉を吐き捨てると、勇輝は腕を振り上げたり、蹴りを入れる。力弥は攻撃を受け流す。

 悔しさからなのか、勇輝は唸る。かと思えば、急加速し力弥をぶん殴った。

 力弥は勇輝の拳を掌で受け止めるも強力な力に顔が歪む。


 その時だった。力弥の胸に痛みが走る。

 油断していた隙に勇輝の蹴りを受けてしまったのだ。

「勇輝、よく、聞け。俺は、殺して、ない」

 力弥の声は届かない。

 勇輝は攻撃を繰り返すばかりだ。

 力弥はなんとか攻撃を避け、一定の距離を置くためにその場から離れた。


 勇輝の目は未だに赤い。それほどまでに力弥に対して怒りを感じている。

 実際には、信頼していた父親の力弥が『母親である透子を殺した』事実に怒りが渦巻いていたのだ。

 感情は高ぶっている。

 一方、力弥は苦しそうに胸をおさえて息を切らしている。

 力弥の体にはかなりの負担が掛かっていた。力を解放してまで勇輝の気を取り戻そうとしたのだ。それに加え、何度か攻撃を受けている。

 体は限界に達していた。それでも、なんとか耐えている。


 そんな状況の中、それは起こった。

 力弥の胸に激痛が走る。乱れていた呼吸が更に乱れる。

 そのまま、その場にばたっと倒れてしまった。

 勇輝は倒れている力弥の姿を視界に捉えると、頭を抱え込んだ。

 勇輝の頭の中に記憶が流れる。それは、幼い時の記憶。力弥の優しい笑顔が勇輝の心に突き刺さる。


 母親の透子の死について事実を知った後、勇輝の中で全てが崩れた。力弥を信頼していた気持ちも親子の絆も。そしてなにより勇輝の感情が乱れた。

 そのせいで力弥に対して反抗的になり、憎むようになってしまう。

 今、勇輝の近くで倒れている力弥の姿を見て、ある記憶が呼び起こされている。勇輝の目から赤色が消えていった。

 正気を取り戻すと、不意に勇輝の目から涙があふれ出す。

「父さん。父さん!」

 大声で呼びながら駆け寄る。

 力弥は勇輝の声でなんとか目を開け、優しく微笑んだが、すぐに目を閉じてしまった。

 それでも、勇輝は何度も呼び続けた。


  **


 どのくらい経っただろう。

 倒れている力弥と泣き叫ぶ勇輝のところへと一人の人物がやってくる。

 二人を見ると、急いで駆け寄っていった。

「勇輝くん、怪我はない?」

 やってきたのは美鶴だった。

 美鶴の声に勇輝ははっとする。涙を手の甲で拭うが、止まってはくれない。その姿と横たわっている力弥の姿を見て美鶴は察する。

 持ってきている鞄の中から医療器具を取り出し、力弥の呼吸音と心音を聞く。

 異常に気がつくと、すぐに処置を開始した。

「みっちゃん、父さん死なないよね? 死なせないで!」

 叫びながら勇輝は口にするも美鶴は必死になって治療するばかり。話を聞いてあげられる状況じゃなかった。

「みっちゃん!」

 再び勇輝は声を掛ける。美鶴はちらっと見やった。

「必ず助ける」

 たった一言、言葉にして涙を流す勇輝を余所に処置を続ける。


 勇輝は力弥の無事を願うしかなかった。

勇輝強いの⁉︎

力弥さん止めようとするのはいいけど、無理した結果が…(>_<)

どうなるの⁉︎(作者)

美鶴さんお願い助けて!


次話更新日は9月5日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ