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悲惨な光景を目の当たりにして

*この小説はフィクションです。


 緊急会議室を飛び出し、流たちを捜しに行った馨。探はその後を追い駆ける。またその後ろに黙ってついていく風粏。

 不意に探が馨を見つけた。

 馨は気難しい顔で歩いている。

「馨、どうしちゃったんだよ。何かあった?」

 探が声を掛けると、馨はぎろりと睨んだ。探は怯むことなく、馨を気にかける。


 瞬を嫌っているとしても、馨の性格からここまでの情緒の変化は初めてだった。

「あ、逸樹って奴のこと? 美鶴さんでも、あれはないよな」

 何も話そうとしない馨に、探が言葉を切り出す。

 馨の気に障ったのか、彼は足早に先に行こうとする。

「おい、馨。悪かったってば。先に行くなよ!」

 呼び掛けられても、走って逃げてしまい、スピードをゆるめない。ついには、追走劇のような状況になってしまう。


 やっとの思いで、探は馨の肩に手を触れた。

「探に何が分かるんだよ! 逸樹は俺の悩みを理解してくれた唯一の友だちだったんだ。それに、瞬を連れ戻したいなら俺と関わらないほうがいい。流さんと司さんは一人で捜すから」

 馨の気持ちは変わらない。馨にきっぱりと言い切られてしまった探は諦め、馨を放っておくことにした。

 今の馨に何を言っても無駄だと判断したのだ。気さくな性格の探でさえ、今の馨に対してどう接すれば分からなかった。

 仕方なく、後ろについてきたであろう風粏のほうを振り向く。だが、風粏はいない。

 確かに後ろについてきていたことだけは分かっている。

 風粏はいったいどこにいったのだろうか。


 気が付けば、探たちは知らない場所にいた。正確にいえば、本部外の場所だ。

 本来なら、流と司の二人の捜索をしていたはずだ。それなのに、二人は捜索を忘れていた。

「あ、やばっ」

 不意に探が声を漏らす。やっと、事の重大さを認識した。

 彼はすぐに馨の元に駆け寄る。馨も我に返り、同様に事の重大さを理解したのだ。

 お互いに目が合うと、二人は頷く。


 馨は来た道を戻ろうとするが、探は逆の方向へと進もうとする。二人は急ブレーキのように一時停止をする。

「ここは危険だろ。範囲は狭くなるけど、戻って流さんたちを捜すべきだろ」

 馨は言葉を口にする。

 どうやら、風粏が居ないことに気づいていないようだ。そもそも、後を追ってこられたのは探のほうだ。馨が気付かないのは無理もない。

 それに目の前のことしか見ていないことが多々ある馨。

 火事で救出した時もそうだった。その時は助けることに必死で自分のことなど、どうでもよかった。


 今の状況は逆だ。

 自分のことで感情的になり、仲間の命を危険にさらしているかもしれない。

「俺の後ろにいた風粏がいないんだよ。もし、この近くにいたら、奴らに見つかってしまう可能性がある。まずは風粏を捜そう」

 探の言葉に馨は息をのむ。

 次の瞬間、衝撃音が近くで聞こえてきた。

 馨と探ははっとして、お互い目を合わせる。

 咄嗟に馨の体が動く。そのまま、音のした方へと向かっていった。その後を探が追いかける。



 数分も経たないうちに、ある場所に着く。咄嗟に馨と探は物陰に隠れた。

 目に映ったのは悲惨な光景だった。

 そこには、血を流して横たわっている風粏と知らない男が二人。男の一人は腰に剣を携えている。

 馨は何も考えず、駆け出そうとする。探が馨の腕を掴んで止めた。

 馨の腕を掴む探の手は震えている。

 剣を携えていない男が二人の方向へと目を向ける。

 二人は物陰の後ろで息を殺した。

 探は馨の衝動を抑え込むように腕を強く掴んだまま離さない。こういう状況の時こそ、馨は動こうとするからだ。

 探の手が震えていることに気付いた馨は大人しくその場でじっと息を潜めることにした。

『どうした?』

 男が言葉を発する。何でもないともう一人の男は答える。

 男たちは倒れている風粏を置いて、その場から立ち去っていった。



 馨と探は物陰に隠れたまま、依然として息を潜めている。男たちが居なくなったからといって、戻ってこないとは言い切れないと思ったのだ。

 無言でどのくらい過ごしただろう。二人は突然、力が抜けてその場にへたり込んでしまった。

 目を合わせると、お互い深刻な表情を浮かべる。

「風粏が、」

 探がたった一言、ぽつりと呟く。馨は悔しそうな顔をする。

 仲間である風粏が倒れているのに、何も出来なかったのだ。

 変える者(ブラックチェンジー)と思われる男が二人いたからなのもあるが、男たちから異様な雰囲気(オーラ)を感じてしまったのだ。一般人には感じない殺気を。

 能力者だから立ち向かえるわけではない。彼らはまだ十代だ。


 そんな二人に一人の人物が近寄ってくる。

「あなたたち、怪我はない? 風粏くんが倒れているけど、何があったの?」

 美鶴が心配そうな顔で二人を見つめている。

 二人の目からどっと涙があふれた。


風粏ああああ。゜(゜´ω`゜)゜。

馨と探、揉めてる場合じゃなかったよ…


風粏を攻撃した二人の男はいったい誰だよおお

(アジトを離れたあの二人)

次話更新日は7月4日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m

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