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予期せぬ来訪

*この小説はフィクションです。

 緊急会議室にて。

 異変を察知した力弥が様子を見に行くために出ていって一時間後。

 美鶴は力弥が戻ってこないことに不安になっていた。

「力さん、来ないね。途中で倒れてなければいいけど、」

 どうやら、不安なのは美鶴だけではないらしい。それもそうだ。

 緊急会議中、力弥の体を心配をしていたのだ。能力者である限り、見逃せない変化を感じ取れる。

 たとえ、大丈夫だと口にした本人が平然としていても。

「探知したところ、本部にはいないみたい。倒れても感じ取ることは出来るんだけど、今は出来ない」

 不意に床に手を付いてしゃがみ込んでいる探がぽつりと言葉を漏らす。

 いつの間にか、隼人と寧々も開いている扉から顔を出し、廊下の遠くを眺めている。

「ちょっと、何してるの。危険かもしれないのよ。じっとしていなさい」

 勝手な行動に注意する美鶴の言葉に耳を貸さない。


 十代の彼らでさえも、この変化に気付いてしまう。

 何か役に立ちたいと思えば、じっとしていられないのが彼らの性格だ。いや、力弥に教えてもらったのだ。

 そのせいで、美鶴は手を焼くことが多い。今の状況も。

「廊下に人の気配がない。誰かいないのはおかしい。何かあったとしか、」

 遠くまで見渡せる隼人が言葉を口にする。


 彼は視力に秀でた目を持っている。代償で視力が低下しているが、未だに能力を発揮している。

 遠くまで見通して、人の姿がないことに違和感を覚えていた。

「だよね。廊下内に人の呼吸音が聞こえない。何があったんだろう」

 寧々も不思議に思い、誰に言うまでもなく言葉に出す。

 彼女は耳が良い。人の呼吸音が聞こえるまでに。彼女にとって、廊下にいても僅かに呼吸音がする。だが、今は全くしない。

 二人の不安が高まっていく。


 とうとう二人は部屋から出てしまう。それを見かねて、美鶴は駆け寄る。

「だから、危険だって言ってるわよね。今は会議室の中に入っていなさい!」

 二人の背中を押して、中に押し込むように連れ戻した。

 次の瞬間、美鶴は後ろから誰かにとんとんと背中を叩かれる。咄嗟に後ろを振り返ると、見知らぬ男の子が立っていた。


 本部には今までいなかった人物。というのも、美鶴は本部内にいる能力者の顔を把握している。

 その理由は、初期から力弥と被害を受けた能力者を救ってきたのだ。特に未成年は尚更。

 それなのに、目の前にいる男の子は見たことがない。本部は一般人では見つけられないはずの場所にある。


 あっち側(ブラック)の可能性もある。そんなことを頭の中で巡らせていた美鶴。

「あの、すみません。ここに犬飼いぬかい けいくんはいませんか? 僕の友達で、捜しているんです」

 美鶴は考える。馨に会わせたとして危害を加えられたら、本末転倒だ。

 然し、男の子からは悪い気はしない。変える者(ブラックチェンジー)のような殺気が漂っていないのだ。


 そんな時、美鶴が立ち止まっているのを不思議に思ったのか、中から馨が顔を出してきた。

 彼は誰がいるのか気付いてしまう。

「逸、樹? どうして、ここに、いるんだよ」

 名を口にすると、信じられない思いで見つめる。馨にとって、逸樹がここにいるとは思ってもいなかった。

 あの時、唯一の友達であった逸樹がいる場所を離れ、もう会うことはないと思っていたのだ。


 決して忘れられない辛い記憶を頭の片隅に寄せて、本部で過ごしてきた。それなのに、火事の時といい、馨の前に逸樹が現れたことによって、辛い記憶が蘇った。

 その度に、どうすればいいのか困惑してしまう。

「馨くん、元気だった? 僕、心配してたんだよ」

 その言葉に馨は不安な表情を浮かべる。

 久々に会った友人。嬉しいはずなのに、馨の中で何かが引っかかって、上手く言葉を返すことが出来なかった。

「馨くん?」

 再び、逸樹が声を掛けると、側にいた美鶴が睨みつけるように目を向けた。

「ごめんなさいね。今、あなたに構ってる暇はないの。分かったら早くここを離れてちょうだい」

 美鶴は言葉にして、素早く会議室の扉を閉めた。



 部屋の前に取り残された逸樹。彼はとぼとぼと来た道を歩いていく。

 逸樹の中では馨を今でも友だちだと思っている。行方不明になってから、必死で捜した。馨と同じ特殊な人間を見つけ、変える者(能力者)を知った。その目的も。

 だが、そこには馨はいなかった。

 他にも阻止する者(能力者)がいることを耳に入れ、役に立つ技術で協力したいと伝えた。

 一般人の逸樹でもなんとか仲間に入れてもらえたのだ。


 そのおかげもあり、やっと見つけることができた。

 それなのに、馨を困らせてしまった。

 あの時、逸樹の中で理解したはずの特殊《••》な人間にしか分からない悩みを今も持っているのだろうか。

 それとも、火事が原因なのだろうかと逸樹は考える。

 

 後悔しつつも、その場を去っていった。


まさかの逸樹くん!?しかもそっちのポジション!?

でも、隼人たちの能力を回避したの?いったい何者だ!

馨と再会出来たと思ったら美鶴さん…仕方ないよね

これから逸樹くんの行動が気になるところ


次話更新日は6月13日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m


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