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仲間を見捨てるな

*この小説はフィクションです。


 流と司以外が緊急会議室に呼び出され、数名を除いて中級者以上のほぼ全員が揃った。力弥が美鶴に視線を送ると、美鶴は辺りを見渡し始める。

「取り敢えず、みんな無事に戻ってきて良かった。それで、報告があるんだけど、」

 一旦、言葉を切って、視線を力弥に向ける。言葉が途切れたせいか、緊迫した空気が流れ出す。

 不意に力弥が立ち上がった。

「お前ら、無理しすぎだ! 代償があるんだぞ! 分かってるのか!」

 怒鳴り散らす力弥の声に場が白ける。余りの静けさに力弥はとうとう痺れを切らし、再び声を上げようとした。直後、顔を歪める。


 力弥の変化を見逃さない人物。寧々がはっと我に返って、力弥を見やる。

「力さんだって、無理してる。今、この時だって。呼吸が少し荒い」

 寧々が真剣な表情を浮かべて言い放つ。力弥は黙っている。胸の痛みを耐えるように、ぐっと胸を押さえる。

 美鶴は目を瞑る。すぐに目を見開くと、辺りをしっかりと見渡した。

「瞬が変える者(ブラックチェンジー)になったわ。一人で行動していたこの人が攻撃を受けたけど、逃げられたらしいの。ということでいいのよね?」

 美鶴は確認するように、力弥に問いかける。力弥は相槌を打つだけ。

 瞬が阻止する者(ブロッカー)から外れ、衝撃を受ける者、恐れる者、それぞれが反応を見せる。


 そんな中、瞬がいた時の会議中に反発していた馨が力弥たちをきつく睨みつける。

「作戦を変える。瞬を取り戻すことも考えながら、敵に対抗する」

 直後、机を叩いて、椅子から腰をあげる馨。

 彼は瞬を嫌っている。瞬が敵になっても、彼にとってはどうでもいいこと。取り戻すなど考えていない。

 力弥が言葉を口にしただけで、不機嫌になった。

 周囲は今まで見たことのない馨の反応に驚いて、目を丸くする者が多い。その中でも、力弥と美鶴は冷静で動じない。


 長年、馨を含めた能力者である少年少女たちを保護してきた。

 何を考え、どう思うか、大体の予想がつく。

 馨が瞬を嫌っていることくらい明白だった。

彼奴アイツはもう仲間なんかじゃない! 黙ってないで、なんとか言ったらどうなんだよ!」

 無言の二人に馨は大きな声で怒鳴るばかりだ。


 依然として、二人の反応は変わらない。

 大きな声を出されて、一番影響を受ける寧々が机に突っ伏してしまう。

 寧々の様子に気付いた美鶴が彼女に近付いて、背中をさする。

 その後、力弥に目で合図を送る。これ以上は黙っていられないと辺りを見渡して思ったのだ。

 美鶴の合図に力弥は動き出す。それぞれのところへ歩き回ると、最後に馨のところで止まった。

「いいか。どんなことがあろうと、仲間を見捨てるな。たとえ、変える側(ブラック)に行ってしまってもだ。それは、昔から言ってるはずだ」

 言葉を言い切って、馨の頭をぽんと叩く。馨は不機嫌な表情を見せるが、落ち着きを取り戻し席についた。

 力弥の教え、それには逆らえない。逆らいたくないのだ。命の大切さを一番に教えてくれたのだから。


 馨と寧々以外は力弥に真剣な表情を向ける。彼らが一番、力弥が仲間思いなのを知っている。

 知っているからこそ、力弥を信頼している。それは、馨も同じだ。

「本当、昔からそういうところだけは、」

 馨はぶつくさと呟いた。

 漸く、落ち着いた。誰もがそう思った矢先だった。


 突然、勇輝が頭を抱えて、苦しみ出した。勇輝の脳内に記憶が流れる。それも幾つもの記憶が一斉に流れてきたのだ。

 勇輝の変化にいち早く気付いた力弥が勇輝のところに駆け寄る。

「勇輝、大丈夫か?」

 声を掛けるが、簡単に振り払われてしまう。勇輝にとって、それどころではなかった。

 記憶が一気に流れ込んだせいで、混乱状態に陥っている。そんな時に声を掛けられ、冷静でいられるわけがない。

 記憶を無くしている今、力弥は赤の他人。話し掛けてほしくなかった。

 力弥は黙って勇輝を見守るしかない。他の能力者も勇輝を心配しつつ、様子を窺っている。


 そんな状況の中、それは起こった。突如、緊急会議室内に鳴り響く警報。災害が起こる前兆だった。

 激しく鳴り響く。

 未だに混乱状態の勇輝、机に突っ伏したままの寧々を除いた能力者ははっと我に返る。

「おい、机の下に隠れろ。身を守れ!」

 不意に力弥が大きな声で呼び掛ける。他の者は咄嗟に机の下に移動するが、力弥は頭を抱えて混乱している勇輝を覆うように身をかばう。

 一方、美鶴は机に突っ伏したままの寧々の背中を支えながら、一緒に机の下に移動する。



 警報が止まり、数分ほど経った。それなのに、何かが起ころうとしない。

 机の下に隠れろと呼び掛けたのには意味があった。災害の一つ、地震が起こる可能性があったからだ。それでも、起こらなかった。

 誤報なら、隊員から放送があり、違和感を持たない。だが、放送がない。


 異変を感じ始めた力弥と美鶴。二人は警報が止まると、机の下から出るように指示をする。

 力弥が美鶴に何かを伝える。

 美鶴はポケットから飲み薬が入ったとても小さなボトルを取り出し、力弥に渡す。何かがあった時に使うようにと声を掛けて。

 その後、力弥は会議室を出ていった。


 組織内で何か(••)が起こっている。不安感を募らせながら、力弥は原因を探りに行った。


馨、瞬を嫌ってたもんね。でも、仲間であることに変わりはない。

力弥さんの教えが泣けるよ(>_<)

寧々ちゃん大丈夫かな?

色々と起こりすぎる世界…みんな無理しないで!


次回は原因を探りに行った力弥さんとあの二人が動く!


次話更新日は5月30日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m

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