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帰還

*この小説はフィクションです。


 美鶴が風粏を連れて、本部に戻ってきた。これで安心、美鶴はそう思った。

 本部内は慌ただしかった。その理由はすぐに分かる。

 隊員の一人が美鶴に駆け寄ってきたのだ。

 美鶴は隊員の言葉を耳にし、目を丸くして驚く。隣で聞いていた風粏も同様の反応を見せる。


 先ほど、司たちが戻ってきたらしい。だが、無事に戻ってきたわけではない。

 軽傷なら、まだましだ。そこまで慌ただしくないだろう。

 隊員によると、司は意識不明で腹部に大きな怪我。流たちは意識はあるが、流と探は能力などの影響をかなり受けている。動けるのがやっとなくらいだ。

 損傷ダメージが少ない隼人も多少は視力に影響がある。それだけ、変える者(ブラックチェンジー)である麗が強かったのだ。


 医療班の隊員が複数で対応しているが、回復には時間が掛かる。

 そんな状況は分かっていたはずだった。

 それなのに、美鶴は悔しそうに唇を噛み締める。

「取り敢えず、状況は分かったわ。ありがとう。ごめん、風粏くん。勇輝くんたちが休憩室にいるから行っててくれないかしら。あと三十分くらいで会議を始めるから、みんなで来てくれると、」

 隊員に御礼の言葉を告げると、風粏に声を掛ける。言葉が途切れ、少し考える。


 風粏は一度、本部から外に出た。言い聞かせているとはいえ、風粏の性格上また外に出る可能性がある。

 そんな考えが美鶴の脳裏に浮かんだ。

「やっぱり、私についてきて。あなたを一人にすることはできないわ」

 風粏は思う。

 どんなに怖い思いをしても、好きなものだけは諦めたくない、と。

 彼は瞬以外の変える者(ブラックチェンジー)に会ったことがない。まだ彼らの本当の強さを知らないのだ。

 彼の中で、自分は戦いに向いていないと退いてきた。それは、性格が臆病なことも一理ある。ほとんどが戦っては負けると言われてきたからだ。

 彼にだって、勇気を出せば勝てるかもしれない。訓練を積み重ね、戦い方を学んだ能力者なのだから。



 風粏は美鶴が前を歩くのをじっと見ていた。

 不意に美鶴は振り返る。

「ほら、何してるの。行くわよ」

 風粏は唾をごくりと飲み込んだ。

 美鶴を本気にさせたら、怒られることは分かっている。逆らえないと思った。

 どこに行くのかも分からない美鶴にただついていくことしかできない。

「逃げたら、お菓子は禁止よ」

 ぶるっと肩を震わせ、美鶴についていった。


  **



 着いた場所は医務室がある廊下。そこに設置されている長椅子に隼人と探が腰掛けていた。

 二人の顔や体に絆創膏やガーゼが貼ってある。特に探の顔には幾つもあって、目立っていた。

「美鶴さん」

 隼人が美鶴の存在に気付き、名前を口にする。探は下を向いていて、元気がないように見えた。

「二人とも大丈夫?」

 表情や姿で一目瞭然。二人とも大丈夫とはいえなかった。

 美鶴はそれを分かっていても、声を掛けたのは二人のことが心配だったからだ。

 それなのに、二人は一言も話そうとしない。察した美鶴は彼らをそっと抱きしめた。

「無事で良かった」

 たった一言を発する。あとでまた来ることを伝えて、美鶴はその場を後にした。



 美鶴が来た場所。そこは病室のような部屋の前。一度足を止めて、中に入る。中は機械の電子音がするだけ。それ以外は何も音がしない。


 部屋に入ると、流がベッドの上で上体を起こして休んでいた。流の腕には点滴が付いている。

 奥にもう一人、機械や管を繋がれた司が眠っている。


「流ちゃん、おかえり。具合はどう?」

 美鶴の声で流は振り向く。問い掛けには答えず、眠っている司を見る。

 暫く、美鶴と流の間に静寂な空気が漂う。


「俺の勝手な行動で司は、」

 空気を破ったのは後悔の言葉だった。流は握り拳を固め、険しい顔をしている。

 それだけ後悔していた。

「流ちゃんのせいじゃないわ。相手が強かっただけ。その分、代償も怪我も大きい。分かってたことだけど、ここまで大きいのは予想外だったわ」

 流を慰めるように言葉を口にする。美鶴の言う通り、相手が強かっただけ。それ以上のことはない。

 相手は能力の制限、代償がない。その分、使い放題。

 司たちは不利な状況で戦っていたのだ。


「このまま、司が目覚めなかったら、」

 言葉を詰まらせ、握り拳をゆっくりと開く。その手が震えていた。

 落ち着かせようと、震えている手に軽く手を添える美鶴。

「司ちゃんは強いわ。必ず目を覚ます。だから、自分を責めちゃ駄目よ」

 それでも、微かに震えている。

 美鶴は流にゆっくり深呼吸するように声を掛ける。

 やっと少し安心したのか、流の手の震えがおさまっていた。美鶴はほっと一息吐いた。

「あなたたちは損傷や代償が大きすぎるから暫く体を休めること。これから会議に行ちゃうから、司ちゃんのこと頼んだわよ。お願いね」

 美鶴は言葉を言い残し、部屋から出ようと背を向ける。

 流がはっと思い出す。

「力弥さんは、大丈夫ですか?」

 美鶴は背を向けたまま、あの人は大丈夫よと答える。それじゃあねと付け足し、部屋を去っていた。


 漸く、一段落ついた美鶴は安堵のため息をついた。


やっとみんな帰ってきたよε-(´∀`; )

おかえり

司はきっと大丈夫。流、ゆっくり休んで!


美鶴さん、お疲れさま

力弥さんの代わりになるの大変そうだけど、頼りにしたい!

次は会議にて、ある人物が怒りをあらわにする!?

そして、勇輝に異変が!


次話更新日は5月23日(木)の予定です。

良ければ感想、評価などしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m


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