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優先順位

*この小説はフィクションです。

 変える者(ブラックチェンジー)が動き始めている今、美鶴は風粏が出歩いているであろう状況に焦っていた。

 現在、力弥を連れて医務室へ。美鶴の様子を窺っている力弥は雰囲気で何かに気付く。

「どうした。何かあったのか?」

 力弥の問い掛けに美鶴はちらっと見るだけで、すぐに目を逸らした。その態度に力弥は舌打ちを漏らす。


 何も話さない美鶴に力弥は怒りを感じ始める。

「おい、何があったんだ!」

 美鶴は再び力弥をちらっと見やる。一度、溜め息を吐くと、歩を止めた。

「うるさいわね。安静にすると約束してくれたら教えてあげるわ」

 美鶴の言葉に力弥は難しい顔をするも、分かったと返事をする。

 美鶴は風粏がいなくなったことを伝えた。


 直後、力弥が背を向けてどこかに行こうとする。それを阻止しようと、美鶴が力弥の腕を掴んだ。

「安静にすると約束してくれたわよね。それとも、ここで今、眠ってくれてもいいわよ?」

 美鶴は言葉を口にすると、掴んでいる手とは反対の手でポケットから注射を取り出す。

 美鶴の行動に力弥は動揺する。一度、唾をごくりと飲み込んだ。

 力弥が抵抗しないのを確認すると、力弥の服の袖をまくった。そのまま、持っていた注射を力弥の腕に刺した。


 力弥は美鶴から離れる。

「何よ。薬を打ったのよ。眠くならないから安心して、と言いたいところだけど、そうも言ってられないのよね。強い薬だから副作用があるかもしれないわ」

 言葉を耳にした力弥は安堵の溜め息を零した。眠気ならまだしも、それ以上の副作用のある薬や悪い薬を刺されたのかと思ったからだ。


 美鶴は本部内で酒場を営んでいる。本部に入る前は医療従事者をしていた。

 医療知識も豊富なのもあって、躊躇うことなく力弥の腕に注射を刺せたのだ。

 本部に戻る前、美鶴は力弥に注射を打っている。その効果が切れそうなのを分かっていた。再び、打った理由の一つでもあった。


 そんな美鶴に力弥は感謝の言葉を小さく呟く。

 美鶴にとっては医療従事者だったこともあり、当たり前のことだった。感謝の言葉を受け流すだけで、無言で力弥を医務室へと連れていった。



 医務室に着くと、医療隊員が忙しなく、怪我人の処置をしていた。

 変える者(ブラックチェンジャー)によって引き起こされた大きな地震が発生したことにより、本部内で負傷者が出た。小さな怪我から大きな怪我まで。

 怪我人が思ったよりも多く、今も隊員たちはその対応にあたっている。


 不意に美鶴は隊員の一人に声を掛けた。小声で話しているせいか、話の内容までは分からないだろう。

 だが、力弥は予想がつく。

 瞬に攻撃され、損傷を負っている体を考えれば、想像がついた。それなのに、それよりも深刻な表情をしている美鶴に力弥は不思議に思った。



 一通り話した後、隊員は力弥をじっと見やる。隊員の心配する視線がどうも気に食わず、力弥は視線を逸らして舌打ちを鳴らす。

「あと、よろしく頼むわ。私、行かなきゃいけないところがあるから。戻ったら、状態を教えてちょうだい」

 美鶴は返事を聞くまでもなく、医務室を去っていった。去り際に力弥に声をかけられるが、美鶴にとっては優先すべきことがあるため、気に留めなかった。


 力弥のことは医療隊員に任せてある。力弥の身に何かあれば、連絡をすると話をしていた。

 正直、力弥のことも優先すべきことではある。単独行動する前に発作を何度か起こしている。それに加え、瞬から受けた損傷が相当大きいことを予想している。

 いつ、何があってもおかしくない。


 風粏を早めに見つけなければならない。

 美鶴はすぐに外へ飛び出した。


  *



 隊員とともに医務室に残された力弥はある一室に連れてこられた。病院の個室のような部屋だ。

 そこには心拍を管理する機械を含む、あらゆる機械などが置いてあった。

 隊員は力弥にベッドに座るように指示すると、すぐに力弥の体を診察し始めた。


 打撃を受けた胸に聴診器を当て、音を確認する。異常は無いが、美鶴から発作を起こしていたことを聞いている。

 それに、力弥の能力の代償で体は弱っていることを隊員でさえ知っている。急変してもおかしくはない状態にはあった。

 ベッドに仰向けになるように力弥に指示する。力弥は抵抗することもなく、仰向けになった。


 心拍を確認するための機械を力弥の胸に付ける。

「暫くは仰向け状態のままでお願いします。何かあれば、呼んでください。安静にと美鶴さんから聞いてますので、絶対安静です」

 隊員の言葉に力弥は舌打ちを漏らす。

 自分の体のことくらい力弥が一番知っている。それなのに、今の状況からして、何もできないのは性に合わないと感じていた。休むわけにはいかない、と。

「監視カメラが付いているので逃げたり出来ませんし、機械が鳴り響きますからね。絶対安静にお願いしますよ」

 忠告するように隊員は力弥に伝えて、すぐに医務室を出ていった。


 力弥が呼び止めるが、隊員は聞く耳を持たない。

 他に対応があるため、たとえ美鶴の頼みとしても付き添ってはいられないのだ。

 だが、本部を指揮している力弥の心配をしていないわけではない。医療に携わる者として、本部の一員としては心配だった。


 そんな隊員を他所に力弥は不機嫌になっていた。連れてこられた矢先、こんな退屈な部屋に閉じこめられ、更には胸に機械を取り付けられてしまった。

 当然、いい気がしない。

 力弥は真っ白な天井を見つめる。こんなにも弱るのかと自分を笑う。

 だんだんと眠気に誘われ、目を閉じていた。



力弥さん、安静にしてくださいよ!

逃げれませんから!

美鶴さん、力弥さんを気に掛けてくれて優しいし頼りになるよ…ありがとう(T-T)


次回は風粏のところにある人物が!


次話更新日は5月2日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m

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