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何もできない無力さ

*この小説はフィクションです。

 駆けつけた癒維が隼人と探を連れてきたこといいことに、司が流のところへと向かった直後のこと。

 勇輝は変えたい者(チェンジャー)と癒維とその場に残った。


 彼は思った。自分も能力者なのに、何も出来ずにいてもいいのか、と。変えたい者(チェンジャー)と同じ、狙われている身なのは分かっている。それでも、何か行動しなきゃと気持ちが焦り始めていた。


 司たちによって、手足が縛られ身柄を拘束されている変えたい者(チェンジャー)を解放しようとしている癒維を見やる。

「彼らがこんなやり方で御免なさい。それだけ、あなたのことを守りたいんです」

 癒維は謝っていた。力弥、司、流の三人に優しさがあるのは癒維も知っている。だからこそ、身柄を拘束してでも守りたいのだろう、と。

 一方でやりすぎなんじゃないかと改めて思った。

 それにも関わらず、変えたい者(チェンジャー)は優しく微笑んでいる。妻子を亡くして過去に戻りたいと思うのは誰だってあるだろう。それだけ、家族を愛し、大切にしていたのだ。


 突然、彼の前に現れた能力者。それじゃいけないと察して、前に向こうとしている。身を守ってくれる彼らに気付かされた。

「彼らの優しさですよね。大丈夫です。ありがとうございます」

 彼の表情を見て、癒維はほっと安心した。


 勇輝はそんなやり取りをじっと見ていた。勇輝自身、記憶を無くしていて、誰かを亡くして過去に戻りたいと思ったことがない。

 そのため、彼らの気持ちが分からない。けれど、彼らを守ろうとする阻止する者(ブロッカー)の優しさは知っている。

 記憶を無くして途方もなく歩いていたところ、勇輝も保護されたのだ。少しずつ彼らと接していくうちに信じてもいいと思った。


「勇輝くん」

 不意に癒維に声を掛けられ、勇輝は我に返る。癒維はすでに変えたい者(チェンジャー)を解放していた。

「勇輝くん、どこも怪我してない?」

 勇輝が癒維に気付くと、癒維は声を掛ける。途中から駆けつけた癒維には勇輝が怪我をしているか分からない。

 先ほどまで変える者(ブラックチェンジャー)がいたのだ。心配するのは仕方のないことだ。

 勇輝が大丈夫だということを伝えると、癒維はほっと胸を撫で下ろした。

 それから、癒維がなにやら無線で誰かと連絡をしたのち、変えたい者(チェンジャー)を連れて、本部へと帰還した。


  *


 本部に着くと、癒維は変えたい者(チェンジャー)を隊員に任せ、勇輝を医務室に連れていった。

 医務室には力弥と美鶴がいた。

 勇輝は力弥に声を掛けたいと思っていたが、美鶴と話していて声を掛けれない。

「暫く動いちゃ駄目よ。言っとくけど、注射は一時的に痛みをおさえるだけだから」

 美鶴の言葉に力弥は舌打ちをする。注射を打たれて体は回復している。

 それでも、今の力弥の体には大きな負担が掛かっている。油断をすれば、いつか動けなくなってしまう。それを恐れないのが力弥だ。

「うるせぇな。それくらい、分かってる。野郎どもは、動き始めてる。じっと、してられ、るか」

 美鶴は呆れて溜め息を零す。美鶴はやってきた癒維に目を向けた。

「美鶴さん、ありがとうございます」

 癒維が御礼を口にすると、美鶴が答える前に力弥が癒維に近づいた。いや、勇輝にだ。

「悪いな。俺が出ていったせいだな。それで、あいつらはどうした?」

 勇輝の肩をぽんと叩き、癒維に問い掛ける。癒維は力弥と美鶴に目を向ける。

「流は変える者(ブラックチェンジャー)を連れて過去に。流を連れ戻すために、司が隼人くんと探くんを連れていきました」

 それを聞いた力弥は顔色を変えた。二人のところへ行こうと、その場を離れようとするが、止まってしまう。痛みが押し寄せてきたのだ。苦しそうに胸を押さえている。

「馬鹿ね。一時的に痛みをおさえるだけって言ったでしょ。今のあなたには何も出来ないわ。この人、瞬くんにやられたらしいの。癒維ちゃん、痛みだけ止めてあげて。痛み(••)だけよ」

 癒維は返事をして、力弥の胸の前で手をかざす。力弥は胸を押さえていた手を離した。直後、勇輝を回復させた時のように癒維の手に光の球体が出現した。

 徐々に力弥の表情が和らいでいく。痛みがなくなると、力弥はその場から去ろうとした。


 癒維に腕を掴まれてしまう。

「駄目です。また痛み出したら、動けなくなります」

「うるせぇ。あいつらを放って置けないだろうが」

 その瞬間、美鶴が力弥に近づき、力弥の頬を平手打ちする。力弥は頬をさすった。

「何度も言うけど、透子さんを悲しませるだけよ。本当、自分の体のことがよく分かってないのね! ここは私が取り仕切るわ!」

 美鶴は言葉を吐き捨てるように大声を出すと、医務室を出ていってしまった。

 一同が唖然としている。一番驚いているのは頬を叩かれた力弥だ。口をぽかんと開けていたが、突然なにを思ったのか、ふっと笑った。

「笑ってる場合ですか! 美鶴の言う通り、自分の体を労わってください。力弥さんはここで待機です! 勇輝くんも」

 笑い出す力弥に癒維は美鶴に釣られるように語気を強めて大声を出すと、去っていった。

 その場に居ることしか出来なくなった力弥は落ち着きを取り戻す。


 黙って見ていた勇輝はよく分からないまま、その場に佇んでいた。



やっぱり美鶴さん頼りになるよ(つД`)

力弥さん、仲間のために動こうとするのは分かるけど、今は休めなきゃダメだってば!

勇輝くんも大丈夫かな(・_・;


次話更新日は4月18日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m

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