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守るべきものがあるからこそ

*この小説はフィクションです。

 力弥が出ていってしまった後、変えたい者(チェンジャー)を含めた四人の間にはぎこちない空気が流れていた。勇輝はその空気に気まずさを感じている。

 司と流はこそこそと話をしている。少し聞き取れても勇輝は記憶を無くしているため、内容が分からない。


 保護といって、拘束させている変えたい者(チェンジャー)がいること。変えたい者(チェンジャー)は黙っていた。

 拘束されたのなら、何かしらの抵抗はあるはずだろう。だが、変えたい者(チェンジャー)は何も抗おうとしない。


 それも司がなんらかの力で変えたい者(チェンジャー)の口を閉ざしていると勇輝には思えていた。なんのためか、勇輝には理解できない。

「勇輝くん」

 声を掛けられていることに勇輝ははっと我に返る。振り返ると、二人とも勇輝に視線を向けていた。

「力弥さんに連れてこられてからで悪いんだけど、勇輝はここにいちゃいけない気がするって話。俺たちよりはね、」

 司が説明するように伝えるが、勇輝はぽかんと口を開けている。


 今でも自分が狙われるかもしれないという自覚がないのだ。

 それでも、何か答えようと言葉を絞り出す。

「あ、はい」

 結局、返事だけの言葉になってしまう。

 勇輝の返事に司はぽりぽりと頭を掻く。申し訳なさそうに勇輝を見やった。

「あ、そうだった。記憶を無くしてるんだっけか。忘れてた」



 今の勇輝にとっては記憶を無くしていることは一大事だ。一能力者だ、協力してほしいだ、自分が狙われるかもしれない、などと言われてきて未だに混乱する時がある。

 呑気な司に勇輝は不安になった。

「悪い。司はそういうやつだから、気にしないでやってくれ」

 司のことを一番分かっている流が口にするが、勇輝は戸惑う。たとえ、関わりがあるとしてもまだ不信感は多少あったからだ。


 そんな勇輝を他所に司は指をぱちんと鳴らす。再び、変えたい者(チェンジャー)の口が開いた。

 彼は何も喋ろうとしない。拘束されている以上、下手なことを喋れば、何をされるか分からないと思ったのだろう。

「あなたは奥さんと子どもが亡くなって会いたくなったといってましたけど、亡くなったのはいつですか?」

 司はお構いなしに質問する。

「五年前です。突然であの時は思ってなかったんです。まだ頭の中で整理が出来ないまま、」

 変えたい者(チェンジャー)の男が答えると、そのまま言葉を続けようとした途端に司がぱちんと指を鳴らす。僅かでさえ、話をさせまいとするのは勇輝には理解できなかった。

「五年前。それだけ分かれば十分。万が一、俺たち以外に聞かれてたら、殺されかねない」

 司は真剣な表情で話す。


 直後、流が何かを感じたのか、出口のほうへと視線を向ける。

 司も何かに気付いた。 

「司、誰か来る。力弥さんじゃない、」

「だな」

 二人はそれぞれ口にする。勇輝も力弥じゃないことを知ると、異変を感じ取った。二人の顔から気まずい雰囲気が漂う。

「司、ここは俺に任せてくれ」

 流が小声で言葉を発すると、司は心配そうに顔を向けた。

「大丈夫か? 俺が、」

 司が問い掛けるが、流に強い視線を向けられ、口を噤んでしまった。こうなると、司でも流の意志を曲げられない。

 仕方なく能力を使おうとした直後、見慣れない女が入ってきた。


「無駄よ。作戦失敗ね。こんなところに阻止する者(ブロッカー)がいるなんてね。あなたたちはここで終わりよ」

 目の前に現れたのは麗だった。


 この場にいる全員が麗のことは知らない。それなのに、ただならぬ気配を誰もが感じ取ることが出来た。

 それほど麗には力があることを示していた。

 それにも関わらず、司は余裕の表情を見せている。動揺を見せる麗は司の目を睨みつける。


 同時に司は能力を発動した。流と麗を除く三人の姿が消えたのだ。

 司の能力の一つ(••)である。

 自分を含め、対象者の姿を一時的に透明化出来る能力。

 司が念じれば、複数人の姿を透明化する。一度に透明化出来る人数は限られているが、相手の視界から消えるのだ。

 透明化しただけであって、司も勇輝も変えたい者(チェンジャー)も存在している。透明化された者同士なら、会話が出来る。

 


 麗は流にだけ目を向けた。

「さっきの奴はどこにいるの? まあ、いいわ」

 麗は言葉を口にして、流をきっと睨みつけた。一瞬、流は体が動かなくなる。

 直ぐに硬化が解けると、はっと我に返った。僅か、三秒のことだった。


 流の変化に麗が身構えた。鉄拳を繰り出す流の攻撃をいとも簡単に躱していく。

 表情に余裕が見え始めた。

「私の能力が通用しないのは初めてかも。でもね、甘くみないほうがいいわ」

 それでも、流は言葉を無視し、攻撃を続ける。あの僅かな瞬間、体に異変を感じたのは流にとっては最悪な状態を引き起こす可能性がある。

 それは、能力を使っても同じことだ。

 能力を使われた時、仕方なく流も迷わず能力を使い、対応していた。


 流の能力。それは、あらゆる流れを作り出す。体が硬直した時、体に流れを生み出した。

 当然、体に負担が掛かっているが、まだ(••)耐えている。このままだといずれ限界がくるだろう。

 それを知ってて、流は呪文のような言葉を呟く。直ぐに(ゲート)が現れた。

 姿を消していた司が能力で自分の姿だけ露わにする。

「それだけはやめろ。お前の体が持たなくなるだろ! おい、」

 (ゲート)は流と麗を飲み込んで、直ぐに閉じてしまった。閉じられる前、流は司に託すような目を向けていた。


 司は知っている。流の体調の悪さを。過去に戻ることが流の体に大きな影響を受けることも。

 それなのに、わざわざ流は過去に戻ることを選んだ。戻る必要はないはずが、勇輝が狙われてしまうことを恐れてか、過去に戻って麗との決着をつけに行ってしまった。


 司は心配するように表情を歪める。それを無言で見ていることしか出来ない勇輝。

 そこへ癒維が隼人と探を連れてやってきた。それでも、司の表情は変わらない。

「司、勇輝くんと流は?」

 癒維の問い掛けに司は念じる。勇輝と変えたい者(チェンジャー)の姿が現れた。

 当然、流はここにはいない。流の姿が見当たらないのが分かると、隼人と探は察する。

変える者(ブラックチェンジャー)ですか? 状況は?」

 隼人の問い掛けに司は表情を曇らせるだけ。ただ、流の心配ばかりしている。

 その様子に癒維もつられて不安になる。

「司さん」

 隼人は大きな声で呼び掛ける。司は首を横に振る。

「流が、変える者(ブラックチェンジャー)を連れて過去に戻った。このままじゃ、」

 途中で言葉が途切れてしまう。不意に癒維の不安な表情をじっと見る。


 我に返り、ふっと笑みを零した。何かを閃いたようだ。

 流の体調を心配していたが、こんなことで挫けないところが司だ。

「隼人と探は俺についてきてくれ。覚悟は出来てる?」

 気を取り戻すと、二人に言葉を掛ける。

 二人は言うまでもなく、準備が整ってる様子だ。真剣な眼差しを司に向けている。

 司は二人の顔を見ると、笑みを浮かべて瘉維に視線を移した。

「勇輝と変えたい者(チェンジャー)を見といてくれ。流を無事に連れ戻してくる」

 言葉を残すと、司と隼人と探の姿が消えた。


 数分後、ゲートが出現したかと思えば、すぐに消滅した。三人が過去に戻った。


 瘉維は無事を祈った。


流、無理しないで(>_<)

司、頼りになる。ファイト!


先週はメンテナンスで更新出来ませんでした。

そういう時もありますよね(・_・;

次話更新日は3月28日(木)の予定です。

良ければ感想、評価、コメントしてくださると嬉しいです。

誤字脱字もお待ちしてますm(._.)m


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