第四話:「パブリックモラリスト・マコト」
「風紀を乱すなっ!」
《歩く法律》と名高い風紀委員長、東条真人は張りのある声で黒江に言った。この東条真人、顔立ちは整っているのに、その梃子でも動かない頭の硬さから敬遠されている残念な男だ。
「まったく、廊下を走るなと何度言ったら……っておまっ!」
話の途中で走り去ろうとした黒江を、真人は全力で追いかけた。
「ちょっと! 風紀委員が何で廊下走ってるのよ!」
「うるさい! 毒を持って毒を制すだ! だからとまれっ!」
「止まったら私の貞操が危ないのよっ!」
どういうことだ? という真人の声は、背後からの地響きによってかき消された。先ほどの真人の声を聞きつけ、クラスメイトたちが飛んできたのだ。
「なっ! なにごとだ!」
「とにかくっ! あと7分弱逃げないと私の貞操が危ないのよっ! って何食ってんのよ!」
黒江が怒鳴るのも無理はない。この緊張感あふれるシーンに、真人はどこから出したのかバナナを食べていたのだ。
「ちょっと小腹が減ったのでな」
モリモリとバナナをほおばりつつ、真人はにやりと笑う。
「風紀アイテム“バナナ”だっ!」
食べたバナナの皮をそっと廊下において、どや顔で真人は黒江を見る。
「ごめん、あんたのボケが音速過ぎて私のツッコミ追いつかない」
「褒めてもなにも出ないぞ」
「出しなさいよ、慰謝料的なものを」
ため息をつきながら走っていると、背後でクラスメイトのひとりがバナナの皮で滑って転び、それに巻き込まれてクラスメイトたちは全員将棋倒しになった。
「計画通り」
真人は風紀委員にあるまじき邪悪な笑みを浮かべた。
「どうだ、腹を満たし、かつ敵を足止めする。これが風紀アイテムの威力だ!」
高笑いをしながら前を走る真人を見て、黒江は今更ながら真人がアホなのではないかと気がついた。
前作ではブクマ、評価いただき誠にありがとうございました!ものすごく元気と勇気をもらえました。これからも精進するので応援を宜しくお願いします!具体的に言うと評価とブクマとか。評価とブクマとか。あとコメントとか……宜しくお願いします!(ゴリ押し