レイちゃん
「どうしたの? 私に手伝えることなら協力するわ」
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私は、またもや幽霊騒ぎに巻き込まれたようだった。
道端で出会った血まみれの女の子。
いや、正しくは女の子の幽霊と言った方がいいだろう。顔色は悪く姿は半透明で、明らかに生きてはいなかったから。
安心したのか何なのか、話しかけてすぐに泣き出してしまった彼女を、私は急いで家へ連れ帰った。
しばらく宥めているとやっと泣き止んでくれたので、ひとまず話を聞くことにした。
「私は妖魅っていうの。ねえ、あなたの名前を教えて?」
「わたし……? わたしのなまえは、レイ。レイだよ」
幽霊の女の子――レイちゃんが、少し怯えた様子でそう答えた。
きっとレイちゃん自身も、今何が起こっているかわからないのだろう。
「レイちゃん、迷子になったって言ってたわよね? いつから?」
「えっと、きょうのあさから? ううん、きのうのよるかも。きづいたらどうろでねころんでて、おかあさんがいなかったんだ」
レイちゃんは辿々しく事情を話し始めた。
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簡単に要約するとこうだ。
レイちゃんは今六歳。小学校に入ったばかりなんだそう。
家族はお母さんだけで、お父さんはレイちゃんが三歳の時に死んだらしい。
昨日の夕方、レイちゃんはお母さんと一緒に買い物に出たらしい。
野菜をたくさん買い込んで、帰るところまではいつもと変わらなかった。けれどいつの間にか意識を失っていて、そして目覚めたら路上で寝転がっていたのだという。
「だから、なんでこんなちまみれなのかもわかんない。おかあさんどこ?」
また泣き出しそうになるレイちゃんの頭を撫でようとし、手がすり抜ける。
うん、これで確定した。この子はすでに何らかの原因で死んでいる。幽霊だ。
「この子も、早く成仏させてあげないと」
数日前まで幽霊の生田と一緒にいた私だからこそわかる。
幽霊は、この世界には長くいてはいけないのだ。本当は私は、生田といつまでもいたかったけれど、それでも我慢して成仏させたくらい。
私にはこの子を成仏させてあげる義務がある、強くそう思った。
「大丈夫。私、あなたに協力するわ。お母さんを見つけてあげる」
「え……? おねえちゃん、おかあさんのことしらないのに?」
確かに、六歳くらいの女の子の発言だけを辿って母親を特定することは難しいかも知れない。
でも、きっとそれがレイちゃんがこの世界に残っている原因、つまり無念なのだ。それを解消すればいいだけ。
「できるわ。私に任せて」
この自信は一体どこから湧いてきたのか、私は強気の笑みでそう言った。
「ありがと!」嬉しそうなレイちゃんを見て、なんだかとても安堵する。
この時すでに、私はレイちゃんを愛し始めてしまっていた。




