犯人の告白、そして――。
少女――渡部は前々から生田に好意を持っていたのだとか。
「とっても好きだった」と彼女は言う。「それに、アタシのことをよく見ていてくれた。だから、運命の人だって思ってたのに」
ある日、意を決して屋上へ彼を呼び出し、告白をした。
しかし答えはあっさりNOだったらしい。生田が渡部の方を見ていたとかいうのはただの勘違いでしかなく、女としては見られていなかったそうで。
「だから……だからアタシは、生田さんを殺したのっ。あ、あっちからアタシを裏切ったんだから、何も構うことない! 気づいたら突き落としてて、それで……」
そこを、森原に見られたのだという。
そしてそれから毎日のように賄賂を渡し、口止めをしていたのだ。殺人を犯しておいて平気で生きていたとは、おぞましい話である。
「あっ」と言って、生田も全てを思い出したようだった。
「そうだ、俺、告られたのを断って、突き落とされて……、最後に森原の顔が見えた」
そこで意識が途切れ、以降は覚えていないとのことだった。
途端に渡部が泣き出す。「バラさないでぇ、バラさないでぇ」と。
別に私は、森原はともかくとして渡部を許すつもりは毛頭ない。殺人をしたのだ、相当に償うべきである。
しかしそれは一旦後回しにしよう。大切なことは他にあるのだから。
△▼△▼△
「生田くん、これで無念の意味がわかったわね」
「ああ……。俺はきっと『死んだ記憶』が思い出せてなかったから、成仏できてなかったんだろうな。……ほら」
見ると、生田の半透明の体が、さらに薄くなっていた。
私は慌てて彼に縋り付く。しかし伸ばした手が触れることはなく、するりと抜けていった。
成仏してしまう。
本当なら嬉しいことのはずなのに、私の胸はキツく締めつけられていた。
「ありがとう。これで俺、やっと天国に行けるよ」
対する生田の笑顔はとても柔らかだ。
未練が失われて安堵しているのだろうか。本当にこの世界に思い残すことは、ないのだろう。
わかってはいる。この気持ちが、片思いだってことくらい。
ずっと黙っておくつもりだった。けれど私は、堪え切れずに叫んでしまっていた。
「行かないで、行かないで! 待って、私、生田くんと離れたくない!」
――人ならざるものを愛している。
それがどんなに愚かなことと知っていても、この感情は本物で。
「ずっといて。私の傍に、いてちょうだい。触れられなくてもいい、言葉を交わせるだけで充分よ。だから……」
涙が溢れる。声が震えた。
きっと背後で縮こまる渡部や森原たちには、私が狂人にしか見えないだろう。それでも構わない、私は呼び続ける。
「行かないで」
緩んでいた生田の表情が、一瞬戸惑いの色を見せた。
きっと突然すぎて、何を言っているのかわからないのだろう。
私がどこまでも勝手なのはわかっている、でも最後にこの思いを伝えなくては。
「好きなの。私、生田くんのことが好きなの。だからお願い」
薄れゆく彼をじっと見つめる。
彼も私に視線を向けていた。しばらくの沈黙が流れたが。
「……無念がまた、できちまうじゃないか。仕方ないやつだな、あんたは」
最後の瞬間、生田はふふっと笑った。
「俺も、妖魅のことが……」




