人ならざるものに恋するなんて
それから数日経ったが、進展はゼロだ。
あれ以来森原と出会えていない。昼休みに行っても、全然いないのだ。
逃げたんだろう。でも私も生田も、彼がいつも休み時間にどこへ行っているのか知る由がなかった。
――どうして私はこんなにも苦労しなければいけないのだろう。
私は毎日そう思い悩んでいた。
元はと言えば全く関係のない少年の幽霊を成仏させるためだ。いつ投げ捨てたって構わない、そんなことのはずなのに。
けれど、日を重ねるうちに、生田と私の距離がぐんぐん近くなっていくのを感じていた。
さすがに初日以外は私の家に泊めることはしなかったけれど、朝起きたらいつの間にか生田は目の前にいて、そして夕方に別れるまでの間、ずっと一緒にいる。
幽霊だとしても相手は男だ。
私はいつも彼を意識してしまっていた。そして暇さえあれば、言葉を交わしてしまう。
彼がどんな人生を歩んできたのか。
好きな人はいるか。部活は何をしているのか。
まるで仲のいい友達みたいに、何でも話せた。何でも話していた。
いいや、『友達のように』という表現は正しくない。
私はすでに気がついていた。自分が、生田に恋心を抱いてしまったのだと……。
△▼△▼△
人ならざるものに愛を寄せるなんて、馬鹿みたいな話だ。
惚れる動機が薄すぎる。日数だってまだまだ浅い、ほとんど他人なのに。
いつまでも一緒にいられるわけがない。いつか、彼は悪しきものに侵されていき、悪霊と化す運命にある。
その前に成仏させることが必須であり、だからこそ私は行動しているはず。
なのに一方で、それを阻止したい気持ちが芽生えていた。
もっと話したい。もっと傍でいたい。だから、離したくなんてない。
こんな気持ちは初めてだった。
人間に恋したこともなかった私が、もののけに心奪われるなんて。
馬鹿だ、馬鹿だ、大馬鹿だ。
でも抑えられなくて、鼓動がうるさいくらいに高鳴っている。
どうしたら、と心が叫んでいた。どうしたらこの沼から抜け出せるだろう? しかし答えが出ぬまま、時があっという間に過ぎていく。
そして彼と出会って十日が経ったこの日、事態は大きく動く。




