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新たな出会い

 一体どうしたらいいのだろう。


 胸が不安で詰まりそうだ。

 せっかくここまで来たのに、と私は肩を落としていた。まさかあの霊能力者が、インチキだったとは夢にも思わなくて。


「観光に行く気分にもなれないし……」


 ホテルは今晩も泊まる予定にしてあり、今すぐ日本に帰るのもなんだか嫌だった。

 だからと言って何ができる? 何もできやしないではないか。


 行くあてもなく歩き回っているうちに、まるで自分が一人きりになったような孤独感が増していく。


 当然だ、ここは外国。見知らぬ土地や人ばかりだったし、目的は見失ってしまったし。


「何のためにここまで来たのかしら……」


 何度目になるかわからないため息が漏れた。

 あたりで小さなもののけたちがたくさん蠢いているのが見える。私の負の感情に寄ってきたのだろうかと思い、お札を見せびらかして追い払った。


「やっぱり、ホテルに戻ろうかしら……」


 そんなことを考えていた時だった。

 突然に、顔に何か冷たいものが降り注いだのである。


「……ぁ」


 見上げると頭上には、まるで今の私の気分を表しているかのような曇天が広がっていた。

 そして次々に、雨粒が落ちてきている。


 でも別に大丈夫だろう、などと思っていたが、すぐさま雨は強くなり出した。

 雷が鳴り、もうすっかり土砂降りだ。私は慌てて、近くの木立へ飛び込んだのだった。


「……ふぅ、ふぅ」


 スコール? そんな感じの雨。

 私はなんてついていないのだろう。とことん嫌になって、なんだか泣きたくなった。


 ――馬鹿みたい。

 私は歯を食いしばり、雨宿りするために、奥へ進んだ。



△▼△▼△



 どうやらここは、森ではなくひっそりとした小山であるらしい。


 日本ではなかなか見ることのないような木々が立ち並んでいる。私はふと、上の方へ目を向けた。


「せっかくだし、上まで行って写真でも撮っていこうかしら」


 別に理由があったわけではない。

 どうせ手ぶらで帰るのだ、せめてもの手土産に街の写真でも撮ろうと思ったのだ。

 雨の街の写真なんて面白いかどうかは知らないが、レイちゃんが喜んでくれるかも知れない。


 木々の隙間から落ちてくる水滴を避けるようにして、私は上を目指した。

 木々に囲まれていると、なんとも言葉に表せない安心感がある。そこら中を見回しながら歩き続けていると。


 ――――?


 なんだか、妙な音がした。

 降りしきる雨の叩きつけるような音に混じって、遠くから聞こえた気がしたのだ。


 でも人はおろか、動物一匹見かけていないのに?

 でも私はすぐに首を振る。きっと雷の音だろう、そうに違いない。

 ここは木が多いから音が通りづらいが、上空では雷が鳴っている。きっとその音が、ここまで届いたのだろう。


 そう考えて、気にせず登り続けようとし――。


「っ!?」


 直後、轟音と衝撃が私を襲った。



△▼△▼△



 ――私は草の上で寝かされていた。


 服は泥まみれだ。手を見ると、土やら何やらですっかり汚れてしまっている。


 なぜこんなところに、こんな状態で? と思い、私は思い出した。

 そうだ、あの時……。


「起きたのかい」


 突然、そんな声が聞こえた。

 私はわけもわからず声の方を見て、息を呑む。


 そこには一人の青年が立っていた。


「あなたは? どうして私を」


 もちろん、名乗ってもいないのに尋ねるのは失礼にあたるが、この時の私はそこまで気遣えるような余裕がなかった。

 だって私は彼を見たことがなかった……詰まり、初対面だったからである。


 青年は、ボサボサで長めの金髪を後ろでまとめており、美しく輝く緑の瞳をこちらに向けていた。

 どこか人間離れした佇まい。そして、見た目はどう見ても外国人だというのにペラペラの日本語を喋っていた。


「僕かい。僕はウルフィーというんだけど、そんなことはどうでもいい。体の具合はどうだい?」


 言われて、私は瞬時に身を起こした。まだ寝そべっていたのである。

 泥まみれの全身を軽く見回す。足に少しかすり傷程度のものがあったが、大丈夫だろう。


「……ええ。でもちょっと待って、私、何をしてたの? なぜこんなに泥だらけなの?」


 覚えているのは、スマホ片手に山頂を目指していたところまで。

 小山なのでそれほどかからないと思っていたが意外と高い。そう思って進んでいたはずなのに、そこから突然記憶がなくなっている。


 金髪の青年――ウルフィーは、私の傍までやってきた。


「ああ、それはね」


 ……彼が簡単に話してくれたところによると、私はあの山中、崖崩れに巻き込まれたのだという。

 ああそうだ、と私は思い出した。記憶が途切れる寸前、雷鳴を聴いたと思った。しかしあれは雷鳴ではなくて、実は斜面が崩れる音だったのだ。


 あんなに雨が降っていたとはいえ、あの短時間に土砂崩れになるだろうかと思ったが、どうやらこの山は地面が柔らかいらしかった。


「大雨が降ると、すぐに地滑りを起こすんだ。時には崖崩れもね。巻き込まれた時君があげた悲鳴のおかげで、僕が駆けつけられて幸いだったよ。まさかここに人が来るだなんて思わないから、僕は正直驚いた」


「ありがとう。私を助けてくれたのね。……でも、まだまだ疑問はあるわ」


 まず、ここがどこなのかもまだわかっていない。そして相手の素性も知れていないし、もしかして拉致されたのではないだろうかなんて考えまでよぎってしまった。

 命の恩人を疑うだなんて失礼にもほどがあるだろうが、まるっきり彼の話を信じるわけにもいかないし。


 他にもたくさん怪しい点がありすぎて列挙するのが嫌になるくらい。


 それらを一つ一つ問い詰めねばならないだろう。それと、もう一つ。


 どうして青年の体から、こんなにも大量な霊気が溢れ出しているのか、も。

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― 新着の感想 ―
[一言] おぉう……同類か、それとも怪異か……(゜Д゜;)
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