負けられない戦い
本当に抗えるのか?
私は出発の準備をしながら、ふとそんなことを考えていた。
もちろん、あの妖怪根絶やし作戦についてのことだ。
組織がどんな規模か知らない。五人くらいの少人数ならいいが、かなりの大規模の可能性もある。
奥村少年の話には、「上」やら「お上」という言葉がよく出てきたので、上下関係があると伺えた。ということは、ある程度の人数はいるだろうと思う。
「はぁ……」
私は、ごく平凡な女子高生だ。
ちょっと背が低くて可愛いと言ってもいいくらいな容姿の、どこにでもいるような女子。ただ、人ならざるものが見えてしまうだけなのである。
そんな私に、何がなし得るというのだろう?
生田を救い、レイちゃんを助け、メリーさんを救い、他のたくさんのもののけたちの力になり……。
だからと言って、いい気になってしまっているような気がした。一つの怪異や幽霊と向き合うならともかく、相手は同じ霊視のできる人間たち。
勝てるような気はしなかった。
「丘子さんも高校一年生なんだもの。超人に見えても、やっぱり普通の女の子なんだわ……」
彼女を残していって大丈夫だろうか、と私は本気で悩んでいた。
実は最近、『監視者』がいる気がするのだ。
ぼんやりと、本当のぼんやりと感じる気配。それが常に私のそばにいて見張っている。
妄想だと笑いたかったけれど、恐らくそれは組織とやらの者に違いない。私たちは、ずっと監視されている。
私がひとたび外国へ行ってしまえば、丘子が襲われる、なんてことはないだろうか。
もしくはレイちゃんが危険な目に遭うことはないのか? 私たちを仲間に引きずり込もうとして、先方は卑怯な手を使ってもおかしくない。
メリーさんのことも心配だ。もう二日も帰ってきていないが、まさか捕まってはいまいか。捕まっていたらそれは、彼女の死を意味する。
頭の中で、不吉な考えがぐるぐると渦巻き出す。
首を振って私は、それをなんとか振り払った。
「大丈夫。きっと大丈夫よ……。私は勝つために、行くんだもの」
まだ全容も、相手も、わかってはいないが、これは確実に戦いになるのだ。
一般人たちの中で人知れず、人ならざるものたちを殺す者たちと守る者たちの、負けられない戦い。
私はごくりと唾を呑んで、覚悟を決める。
スーツケースに服やらタオルやらを全て詰め終わった。私は大きく息を吐き、立ち上がる。
今日旅立ち、帰ってくるのは三日後の予定だ。
その間は何もありませんように、と、心から祈ることしかできないのだった。




