怪しい森原くん
翌日、私と生田は横並びで歩き、二年三組の教室へ向かっていた。
「ここだ」
案内された教室には、昼休みが始まって図書室へ行こうとしたり、体育館裏で告白しようと走る、様々な生徒たちの姿があった。
生田が彼らへ、「おーい」と声をかける。しかし誰一人として答えなかった。
「やっぱり俺、本物の幽霊なのか……」
「うん。そしてこのクラスには『見える子』がいないみたい。まあ私のは恐らく特殊例だけど」
そもそも幽霊を見たという話はごく少数、そして基本的に『見える人』はそんなことは言いふらさないので、目撃情報を出しているのは『たまたま見えた』人たちなのだろう。
実際に『見える人』たちがこの世界にどれほどいるかなど私は知らない。知る必要もない。
それはともかく、私は生田曰く仲が良かったという男子生徒、森原を捕まえた。
「あの、ちょっといいかしら」
「な、なんですか……?」
気の弱そうな顔がこちらを向く。
私は単刀直入に言った。
「生田くんのことなんだけど、教えてくれない?」
びく、と森原が肩を震わせた。
「き、君は生田の知り合い……?」
「うん、まあね」
ごまかすしかなかった。彼が死んでから知り合ったと言っても信じてくれないだろうし。
森原は相変わらず震えている。恐怖に染まった表情で、私を見上げてきた。
「生田は……死んだよ」
「知ってる。でもどうして死んだのか、教えてほしいの」
けれども森原は激しく首を振った。
「し、知らないっ。僕は何も知らないよ。じ、自殺だって警察が。学校の屋上から八メートルも落ちてバラバラになって、死んでたって」
「――?」
彼の言葉にはとても違和感を覚えた。
森原の話が正しければ、つまり生田は飛び降り自殺したことになる。
でもどうして? 死ぬ瞬間以外の生前の記憶がある生田なら、悩みを抱えて自殺したわけではないだろう。
衝動的にとも考えられたが、怯えているような森原の様子を見てその筋も違うのではと思えた。
森原は、何かを隠している。
「森原、おい森原。バラバラってどういうことだよ、教えろよ!」
しかしその声は私以外には届かない。
そして直後、学校のチャイムが鳴った。
「あっ、行かなくちゃ」
私は慌てて森原の前を離れる。
悔しいが、今は撤退する他にない。
森原はホッとした顔をしていた。
「でも、またいつか問い詰めてやるんだから」
名残惜しそうにする幽霊の少年を引き連れて、私は自分の教室へ走り戻った。




