ある日の思いつき
丘子には助けられることもあるが、大抵は面倒ごとに巻き込まれることが多い。
幽霊が出る穴場に連れて行かれたり、廃病院に行って死にかけたり……。
色々振り回される日々だが、私は嫌ではなかった。レイちゃんのこともあるし色々困ることはあるけれど、丘子に馴染んできたのかも知れないなと思う。
そしてその日も、丘子の突拍子もない提案から全てが始まった。
「ちょっと思ったんですけど、あたしたち二人でオカルト研究所とか作っちゃいましょうよ」
完全な思いつきだろう。私は半笑いで答えた。
「オカルト研究所ってあなた。同好会ならまだしも、ねえ」
そもそも一体何を研究するつもりなのだろうか、丘子は。
私はもはや人ならざるものと距離を持つというスタンスは諦めていたが、それでも研究しようだなんて思わない。そもそも費用がかかるだろうに……。
「そりゃ、妖怪の生態とか色々ですよっ! 楽しそうじゃないですか〜」
「私は別にそうは思わないわ。私が『見える』ってことは、多くの人に明かしたくないし」
「えー。妖魅ちゃんのケチ」
そこへ突然、メリーさんが介入してきた。
「ならぁ、もののけ相談所なんて、作ったらどうかしらぁ?」
私の部屋で二人きりで話していたものだから、かなり驚かされた。
メリーさんは「驚いたぁ?」と得意げだ。レイちゃんはまだ学校で、お父さんのいない時は家の中ではフリーに動くことが許されており、どうやらメリーさんは壁を通り抜ける等々の不思議なことができるらしい。
「わあ、メリーちゃん。今日もきゃわいいですね!」
「だからそのぉ、メリーちゃんって呼ぶのやめてよねぇ。ワタシ、メリーさんよぉ」
もはや通例となったそのやりとりを交わす二人を見つつ、私は先ほどのメリーさんの言葉を思い出した。
「もののけ相談所って、どういうこと?」
「あぁ、それねぇ。妖魅さんったら、今までたくさんの幽霊や妖怪たちを助けてきたでしょぉ? あなたの片想いの人もそうだしぃ、レイちゃんもぉ、そしてワタシもよぉ。あなたにはきっとぉ、人ならざるものを救う運命があるんだと、ワタシは思うわけぇ」
メリーさんまでそれを言うか。
彼女があげた例は、「仕方なく」やったことであるし、私はそれを運命などとは考えていない。
けれど、大のオカルト好きは一も二もなく飛びついた。
「いいですね、もののけ相談所! やりましょう!」
彼女の勢いに気圧される私。
まず、何をするかも全然決まっていないというのに、どうしてそこまで乗り気なのか?
「困っている妖怪の相談に乗ってあげるのよぉ。どこか、人目につかない場所に拠点を設けるといいわぁ。もののけたちの手伝いをできるのって素敵でしょぉ。ねぇ、妖魅さん?」
メリーさんがどういうつもりで言っているのかわからないが、私はとにかく頭を抱えたくなった。
こうして、ある日の思いつきにより『もののけ相談所』というわけのわからないものが設立される運びになってしまったのだった。




