お札をもらって安全安心?
玃猿花嫁騒動――丘子が勝手にそう名づけた――は、幕を閉じたわけだが。
私はあの後すぐ、とことん裸を晒していたことに気づき、赤っ恥をかかされた。この恨みはきっと、一生消えないことだろう。
丘子に服をもらえたのが幸いだった。おかげで、無事にタクシーで戻ることができたのだ。
帰った頃には夜中の十一時を軽く超えていた。
「じゃあ遅いですし、あたしはこれで」
「ありがとう。あなたがいてくれなかったら、私は色々な意味で死んでたわ」
生命的に、女的に、そして社会的にも。
「いいですってば。霊視少女同士助け合いましょ! ……あっ、そうだそうだ」
丘子は思い出したようにそう言って、何かを取り出した。
「今回みたいに悪い妖怪に襲われることも、多分少なくないと思うんですよね。だから、これあげますよ」
彼女が私に手渡したのは、十枚のお札だった。
それぞれ黒い筆字で『除霊』『霊炎』などと書かれている。お札をこれほどまでに持っているとは、さすがオカルト少女。
「これを護身用に持っておいてください。入手方法が限られてますし、使い過ぎには御用心ですよっ!」
「ありがとう……」
丘子の勢いに気圧されつつ、私はお札を手にし、思う。
確かに、人ならざるものたちと触れ合うようになってから、というか丘子と出会ってさらにもののけたちと近くなってから、普段よりも怪異をよく見るようになった気がする。
霊気? が以前より強まっているのかも知れず、従って接触機会はさらに増えるだろう。お札があれば百人力だ。
「まぁ大丈夫よぉ。いざとなったらワタシが助けてあげるしぃ」
メリーさんは自信たっぷりに胸を張り、レイちゃんも「わたしも! わたしも!」と必死だ。
そういえば今まで忘れていたのだが、どうして丘子とメリーさんが一緒にいるのだろう?
元々、丘子に何かされないか心配で、メリーさんのことは隠していたのだ。なのにいつの間にか親しくなっている。
「ああっ、それはですね」と、そのことを訊いた私に丘子は言った。
「まあ色々とあったんですよ。勝手に隠してる妖魅ちゃんが悪いんですよっ! こんな特大都市伝説を内緒にしてるだなんて!」
「で、でも。メリーさんはお母さんの大事な人形だから」
「もしかしてあたしが壊すとか思ってます!? そんなことしませんよ!」
思ってました。ごめんなさい。
でもどうやら仲良くやっているようだし、結果オーライだろうか。
「でもぉ、ワタシはメリーちゃんって呼ばれるのは嫌だわぁ」
「いいじゃないですかぁ、親しみを込めてですよ!」
「私もちょっと気持ち悪いと思うわ」
「わたしも、そうかも」
「えぇ〜」と丘子が不満げに頬を膨らませる。
その様子を見て、私は思わず噴き出した。
まるで先ほどまでのことなど忘れたかのように、みんなで笑い合ったのだった。




