丘子、メリーさんに呼び出される
晩御飯を食べてすぐ、勉強を済ませようかと思っていたその時でした。
なんと、こんな時間に電話がかかってきたのです。
自慢じゃないですけど、あたし、友達は妖魅ちゃんしかいないのです。それに妖魅ちゃんはあんまり電話をかけてくる人じゃないっぽいので多分違いますね。
誰だろうなって思って電話をとったら、聞きなれない女の子の声が流れてきました。
「ワタシ、メリーさん。今妖魅さんの家を出たところなのぉ」
うひょひょひょひょ!?
あたしはそりゃあもうびっくらこきましたよ。
「なんですと! 今、メリーさんって言いましたよね!?」
「あぁ、そうねぇ。言ったけどぉ……」
こりゃ超ビッグニュースですよ!
この大のオカルト好き丘子ちゃん、もう今最高に興奮しております!
かの有名な都市伝説『メリーさんの電話』。しかしあたし、まだ会ったことがないのです。
でもちょっと待ってください? メリーさんってば、妖魅ちゃんの名前言ってませんでした?
そんなまさか、気のせいですよね〜。
一旦電話が切れました。
あたしはばっちり罠を貼って待機です。メリーさんが現れた瞬間捕まえるって寸法ですよ。
そしてまた電話ですっ!
「はい、丘子でーす!」
「……さすがは噂の丘子さんねぇ。ワタシ、メリーさん。今小学校の近くにいるわぁ」
呆れたような声で伝えられた事実に、あたしの胸はときめきます。
小学校ってすぐそこの小学校ですね! 都市伝説の通り、確かに近づいてきてますよ。
切られたと思ったら、着信音再び!
「はいはーい」
「ワタシ、メリーさん。今あなたの家の前にいるのぉ。お邪魔しまぁす」
どうぞどうぞ、入ってきてくださいメリーさん。
あなたが次どこに現れるか、あたしは知ってるんですからね。
「ワタシ、メリーさん。今、あなたの後に……きゃぁっ」
電話と同時に実際に後ろから声がしました。そして、悲鳴。
あたしはニタニタ顔で振り返ります。
「むふふ。そーれ引っかかりましたね!」
メリーさんは、可愛らしいお人形さんでした。
赤毛を三つ編みにして、目は晴れ空みたいな青色です。ちょっとボロいですけど、なかなか高価そうです。外国製かな?
あたしの罠――接着剤でベトベトにしたロープに絡まって、あたふたしてます。それは簡単には抜けられませんよー?
「ようこそ! ご用は何ですか、メリーちゃん!」
「離してぇ、離してぇ。……えっ、今、ワタシのことメリーちゃんとか言ったかしらぁ!?」
「言いましたよ、その方が親しみやすいじゃないですか」
そんな問答を繰り返しつつ、あたしはメリーさん改めメリーちゃんに笑いかけます。
そうだ、何しに来たのか聞かないと。
「メリーちゃんは迷子ですか? あたしはあなたを捨てた覚えはないんですけど」
「別にぃ、ワタシは今日そんな用で来たんじゃないわぁ。いいから離しなさいよぉ!」
「用件を言うまではちょっと無理ですねー。第一、そっちが何してくるかわかったもんじゃありませんよ。でもでも、こっちにはお札もあるんですからね?」
お札を見せつけると、メリーちゃんはブルブル震え出しちゃいました。
「わ、ワタシは悪い妖怪じゃないわぁ! だから殺さないでぇ!」
「じゃあ何しに来たんです?」
「あなたぁ、妖魅さんのお友達でしょぉ! 実は妖魅さんが」
妖魅ちゃん!? やっぱ妖魅ちゃんのお知り合いでしたか。
いやでも、あたし妖魅ちゃんからそんな話聞いてないんですけど!? もしかして妖魅ちゃんってば秘密にしてました!?
とりあえずメリーちゃんを罠から出してあげました。
妖魅ちゃんのお友達でしたら、捕まえておくわけにもいきませんしねー。
それから詳しい話をお聞かせ願おうと思ったんですけど、メリーちゃんは全然取り合ってくれなくて。
「ひとまずは妖魅さんの家に行きましょぉ? 話はそれからよぉ。急いでるのぉ」
と言って聞きません。
まあ、いちいちお札で脅すのもめんどいですし、一応聞いてやるとしますか。
時間は遅いので、お母さんは怒るでしょうねー。
でも呼び出しを受けた以上は仕方ない!
見つからないようにこっそり部屋を抜け出して、足音忍ばせ外へ出ます。
さあて、何が起こるかは知りませんけど、すっごくワクワクな予感です! 勉強なんかほっぽり出してレッツゴーですよ!




