友達になろう
――学校屋上にて。
てけてけの騒動が治った後、ふと空を見上げるとそこには漆黒の空が広がっている。
どうやら、七不思議の七番目の悪戯も解けたようだった。
「……これで七不思議はおしまいですね。いや〜楽しかった!」
満足げに笑う丘子を眺め、私はため息を吐く。
「楽しかった、じゃないわよ。こんなのじゃ命がいくらあっても足りないわ」
「でも実際誰も犠牲になってないんだからいいじゃないですか〜。今回は結構迫力あってよかったですよ。久々に本格的なのに出会えました!」
まったくもう……。
レイちゃんも「やったぁ!」とか騒いでいるけど、何が起こっていたのかわかっているのだろうか?
ともかく、皆お気楽である。
△▼△▼△
無事に帰った私たちは、あの後すぐに寝た。
そして翌朝――案の定、寝坊。
「ああもう! レイちゃん早く!」
「ふわぁ。まってよ、おねえちゃん」
私たちは大慌てで家を飛び出し、まずはレイちゃんの小学校へ。
ギリギリ間に合い、送り届ける。
「行ってらっしゃい」
「いってきまーす」
そしてその後ろ姿を見送ると、今度は自分の学校へと私は走り出す。
と、その時、またもや声をかけられた。
「妖魅ちゃん、おはようございま〜す」
思わず「げ」と言いながら、そちらを振り向く。
そこにはやはり、彼女がいた。
「丘子さん」
「いやあ、昨日はお疲れ様でした〜。お寝坊しちゃいました? 実はあたしもなんですよ。まあ、寝坊くらい全然気にしませんけどねー」
朝からヘラヘラ笑いながら、丘子が私のすぐ傍へやって来る。どうやら一緒に登校するつもりらしい。
やかましいのは嫌だが仕方ないと、私は諦めた。
「妖魅ちゃん、それでですね、あたし一つ言い忘れてたことがあったんですよ」
しばらく歩いていると丘子がそう言い出した。
「言い忘れていたこと?」と首を傾げる私に、彼女はにっこり微笑む。
「――友達になりません?」
「はぁ? 友達?」
私は耳を疑った。
まさか、今このタイミングでこのワードが飛び出して来るとは思いもよらなかったからだ。
「そうです友達。妖魅ちゃん、友達少ないんじゃないですか? 実はあたしもそうなんですよねぇ。普段はまぁ普通みたいに過ごしてますよ? でもやっぱあたし、友達よりオカルト! でしたからね。クラスメイト以上の付き合いをしたことがなかったんです」
「でも、」と言葉を継ぎ、
「妖魅ちゃんとなら友達になれると思うんですよねっ! 同じ霊視仲間じゃないですか。霊視ができる身としての辛さとか、楽しさとか。共有できると思うんですよね。……だから、友達になりたいなーと思って」
突拍子もないことだったけれど、丘子の気持ちはなんだかわかるような気がした。
私は決して、彼女と馬が合うわけではない。が、やはり同じ境遇として安心感があるのだ。
今までずっと独りだと思っていた。自分がこんな変な能力のようなものを持っているのを、おかしいのかも知れないと。
でも仲間がいた。
もっと彼女と話してみたいと思う。価値観は多少合わなくてもいいから。
「私も。私も、あなたと友達になりたい……かも」
なんとなく言葉を濁し、そう言ってみた。
本当はもっと直球で言いたかったが、恥ずかしかったのである。
しかし私の曖昧な言葉に、丘子は飛び上がってくれた。
「ほんとですか!? ありがとうございます、一生ついていきますねっ!」
そして、私に抱きついて来る。
私は彼女の体重に押され、なすすべなく道路に倒れ込んだのだった。
――こうして丘子と私は親友への第一歩を踏み出す。
それからは毎日のようにオカルト案件に付き合わされることになるが、私はそれでも構わない。……いや、正直言って嫌は嫌なのだけれど。
そんなこんなで、私たちのオカルトな日常は続いていくのだ。




