学校の七不思議
「……七不思議?」
「そう七不思議です。面白そうだと思いませんかっ!?」
翌日、朝。
いつもなら公園にでも散歩に行くだろう土曜日だというのに、私の家に丘子が押しかけてきて、こんなことを言い出し始めていた。
レイちゃんはお母さんの手伝いで今いない。部屋には私と丘子二人きりだ。
ああ、やっぱりこんな人と関係を作るんじゃなかった。そんな後悔を抱きつつ、だが私はどうすることもできない。
「あたしも三日前くらいに初めて知ったんですけどね、あたしたちの学校にはたくさんの怪異があるんですって! いわゆる都市伝説の一種ですよね? こりゃ見に行かなきゃですよ!」
「ちょ、ちょっと待って。そもそも、どうして見に行かなくちゃいけないのよ?」
私には、オカルトに積極的に関わろうとする丘子の気持ちがわからないのだ。
生田の時にしろレイちゃんの時にしろメリーさんの時にしろ、私の場合は向こうから接触してきたので仕方なく、だ。決して私から近づいているのではないというのに。
「そりゃ、あたしが最恐の都市伝説を求めてるからですよ!」
「最恐の都市伝説?」
「そうそう! 実はあたしですね……」
そこから彼女が始めた長話の内容をまとめるとこうだ。
丘子が小学三年生くらいの時の話。
最初に出会ったのは、横断歩道の女の人だった。
信号の向かい側にいるのは知っていたが、怖くて声をかけられなかったんだそう。なにしろその女の人は血まみれだったのだから。
そしてその後、すれ違いざまに「見えてるくせに」と言われた時、恐怖に震えたらしく。
後で調べると、それは都市伝説の一種のようで、それからどんどん都市伝説マニアになっていった。
「またあの時のゾワワを味わいたいんです! 学校の七不思議は定番ネタ、怖いこと間違いなしですよっ。ねえ行きましょう?」
「私はオカルトとか得意な方じゃないのよ」
「えっ? 妖魅ちゃんも霊視少女なんですよね?」
「まあね。でも、オカルトに関わりすぎたら私が私でなくなってしまうような気がして」
――その時、タイミング悪くドアが開いた。
「おねえちゃん! おてつだいおわったよ」
「あらレイちゃん、お疲れ様」
でも内心、レイちゃんが入ってきた瞬間私は嫌な予感がしていた。そして予感は的中する。
「おきゃくさんのおねえちゃん、なにのおはなししてたの?」
「いいのよレイちゃん。これはお姉ちゃんたちのお話だから……」
もう遅かった。
「それがですね、実はあたしたち、ちょっとお化けに会いに行かないかって言ってたんですよ。お化けって面白いんですよ? 今まで百匹以上の妖怪と会ってきましたけど、みんな個性的ですよ〜。半分くらいあたしがやっつけちゃいましたけど!」
妖怪をやっつけるというのは、どういうことだろうか……。幽霊じゃあるまいし。それでも成仏するのか?
そんな疑問よりも、
「丘子さん、ちょっとやめなさい! レイちゃんは普通の女の子なのよ?」
「わかってますってば。うっすら霊気は感じますけど、おそらくはいっとき幽霊離脱したくらいなものでしょうし」
当たっている。さすがオカルト大好き女子高生、観察眼だけあるが、正直迷惑だ。
「七不思議の話はもういいわ。お引き取り願いましょうか」
「おきゃくさんのおねえちゃん! わたし、ようかいさんにあいたい!」
ほら、案の定レイちゃんはすっかり興味を示してしまった。
恨むぞ丘子。
「でしょでしょ〜。そうだ、あなたのお名前は?」
「レイ! レイだよ!」
「レイたん、じゃああたしたちと一緒に七不思議探しに行きますか!」
ちょっと待て。
色々とおかしな部分がありすぎる。
第一に、レイちゃんを勝手にレイたんと呼んでいること。なぜそんなに距離が近い?
第二に、どうして『あたしたち』なのか。まだ私は行くとは言っていない。むしろ断っていたのに。
第三に、どうしてレイちゃんを誘う!?
しかし、レイちゃんは「いくいく!」と行く気満々である。
前にも言ったが、私はレイちゃんに強く出れない。結局、丘子とレイちゃんの二人がかりでお願いされ、押し負かされてしまった。
「日程は明日の夜七時以降。高校の校門前に集合でいいですね?」
「いいよ! わたし、おしゃれしていくね!」
「……はぁ。もしレイちゃんに何かあったら、ぶつわよ」
こうして私たちは、明日の夜に七不思議探検に行くことになってしまった。
不安しかない……。




