『見える人』
私は授業が終わるとすぐに帰ろうとした。
これ以上丘子と関わると、大変なことになる予感がした。それを避けたくて、とっとと荷物をまとめて校門を出たというのに。
――丘子は、校門の前で待ち伏せていた。
「妖魅ちゃん、一緒に帰りません?」
負けた、と私は思った。
ニコニコ笑顔で迎え入れられて、背筋がゾワッとする。これはある意味人ならざるものたちより怖いのではないだろうか。
「ご、ごめんなさい。私、小学校の妹を迎えに行かなくちゃいけなくて。だから……」
「じゃあついていきますよ。ちょうどあたし、小学校の向かいの家なんですよ。いいでしょ?」
結局私は丘子に押し負けて、レイちゃんの小学校までの間の道を彼女と並んで歩く羽目になってしまった。
従って、もちろん追求を免れなかったわけで。
「もう一度質問しますけど、妖魅ちゃんって霊視少女だったりします?」
このどうしようもない問いかけに、私は顔を歪めた。
それをどういう反応に受け取ったのだろうか、丘子は嬉々とした表情を見せる。
「あっ、やっぱり。あたしこれでも手馴れですからわかるんですよ。幽霊とかそういう単語聞いて、普通みんな逃げ出すんです。あたし都市伝説マニアですけど、同じマニアの人でもドン引きするくらいのマニアなんですっ。だから、わかりますよ」
「何がよ?」
「――妖魅ちゃんが、『見える人』だってこと、ですよ」
私は愕然とした。
立ち止まってしまった。こんなにもあっさりと、今までひた隠しにしていた事実がバラされてしまうなんて。
「『見える人』ってどういう意味かしら? 私、オカルトには詳しくなくて」
「嘘だぁ~。さっき、『二年生の男の子は成仏した』って言いましたよね。もしかしてですけど、妖魅ちゃんってば成仏させてあげたんじゃないですか?」
さらに図星を突いてくる。
私はもはや、何も抵抗する術を持っていなかった。
「……大声では言えませんけど、実はあたしも『見える』んです」
そうだとは思っていた。
彼女と出会った瞬間から、彼女も人ならざるものたちが見えているのではないかと。
だから、丘子は私のことも簡単に暴いたのだ。同類だからこそ。
「……堪忍するわ、私も『見える』。それで生田を助けたのは私。でも間違えないでほしいのだけど、オカルト好きじゃないわ。断じて」
生田を成仏させ、レイちゃんを人間に戻し、メリーさんの手助けをしておきながらと信じられないだろうが、私はオカルトは嫌いだ。
丘子は「ふーん」とか言いつつも、まるで聞いていない。
「あたし、ずっと『見える』のは自分だけなんじゃないかって思ってました。だってそういう話を調べても全然出てきませんし。だから妖魅ちゃんに出会えてよかった! 正直ホッとしてますっ。同志がいるってこんなに嬉しいことなんですね、あたし知りませんでしたよ!」
私は別に、同志になったつもりはないのだが。
そう言う暇もなく、丘子は何やらまくし立て続けていた。付き合いづらいことこの上ない。
結局、小学校前に着くまで丘子は一人ではしゃいでいた。
やっと別れることができた後、私はすごく憂鬱な気持ちになる。
せっかく私と同じ『見える人』を見つけたのにこの気持ちは何だろう……。
丘子との出会いがこの後の様々な事件や面倒ごとに繋がっていくのだが、私はそのことをまだ知らない。




