メリーさんの涙
あれから、捜索はほとんど進んでいない。
メリーさんはすっかりレイちゃんのおもちゃになり、部屋で遊び回される始末。私は何の策も思いつかないままで学校やら何やらに追い立てられる日々を過ごしている。
そして数日が経った、ある日のこと。
「おねえちゃん、メリーさんがないてるよ」
私が高校から帰ってくるなり、レイちゃんがバタバタと足音を立てて駆けてきた。
「どうしたの?」と言うと、後手に持っていたメリーさんを見せつける。
メリーさんは泣き声を上げていた。
宝石のような青い瞳からは涙は流れていない。けれど彼女が泣いていることは、私にもわかった。
「何かあったの、メリーさん」
「妖魅さん……。ワタシ、もうみっちゃんとは会えないのかしらぁ」
震える声で言い、こちらを見上げるメリーさん。
私は少し戸惑ってしまった。
「どうして急にそんなことを?」
「ワタシ、みっちゃんに嫌われてるのぉ。だから会えないんだわぁ、もうずっと会えないんだわぁ!」
こんな玄関先で声を出されては気づかれてしまう。そう思ったけれど、メリーさんの勢いは止まらない。
「ワタシ、そんなつもりじゃなかったのぉ。みっちゃんに嫌われたいなんて思ってなかったのよぉ。ちょっとだけ懲らしめたかっただけだったのにぃ……」
メリーさんは泣きながらこんなことを語り出した。
メリーさんと『みっちゃん』は元々仲良しだったこと。
彼女の家族が引っ越しする時に、「古いから」と捨てられてしまったこと。
ゴミ捨て場から立ち上がり、『みっちゃん』の元へ行ったこと。
念話で電話をかけながら、どんどん近づいていく。そして最後に――。
「ワタシ、メリーさん。今あなたの後にいるのぉ」
女の子は悲鳴を上げた。そして気を失ったのだという。
それから何日も、『みっちゃん』は悪夢にうなされるようになった。
メリーさんは気づいたら窓から投げ捨てられ、別の誰かに拾われて連れ去られてしまったのだとか。
すぐに逃げ出したものの、それから『みっちゃん』の消息はわかっていない。
「だからまたぁ、みっちゃんに会いたい。会って、会って、ごめんねぇって言いたいのぉ」
私は、なんだかこの人形の少女を可哀想に思ってしまった。
数十年前の話だ、すぐに見つかるはずはないと諦めていた。でもそれではいけないのだと、一度引き受けたなら責任があるのだと。
「メリーさんは、みっちゃんと仲直りしたいのね。……わかった、私、頑張るから」
「わたしも。よくわかんないけど、わたしもがんばる!」
私とレイちゃんがそう言うと、メリーさんの表情が少し明るくなったように見えた。
見えただけで実際そんなことはないのだろうけど、でも、力強く、
「お願ぁい!」と言ったのである。




