女の子を探してる
私たちは近くのコンビニに寄り、オレンジジュースを買って飲んだ。
全力疾走で疲れ切った体が生き返るようだ。レイちゃんもすっかり調子を取り戻したようで、「おにんぎょうさん、おにんぎょうさんだ!」なんて言ってはしゃいでいる。
一方私は、オレンジジュースを羨ましそうに見つめるメリーさんから話を聞いた。
……簡単に教えてもらったところによると、メリーさんはその『丘子』とかいう少女に依頼に来たのだという。
『丘子』はオカルトマニアらしく、霊視少女として妖怪界隈では密かに都市伝説になっているのだとか。
そんなことより妖怪界隈などあるのかと驚きなのだが。
「彼女に会ってひどい目に遭ったっていう妖怪はたくさんいるわぁ。でもそれってぇ、妖怪より強いってことでしょぉ? それ系に詳しいはずだしぃ、だから頼ろうと思ったのぉ」
とのこと。
『丘子』については非常に気になってしまうが、それは横に置いておくとして。
「私は丘子さんじゃないけど、ちょっと特別でね。あなたの力になれるかも知れないわ」
人ならざるものたちと関わりを持ちたくない。その考えは大きく変わっていない。
しかし、一度この世界に足を踏み込んでしまった以上は戻れないのだ。きっと生田を成仏させようと決心したあの日に、運命は決まってしまったのだから。
それに、どこか悲しそうな顔のメリーさんを放ってはおけないではないか。
ということで私は今回も、メリーさんに協力してあげることにしたのだった。
△▼△▼△
「ワタシ、女の子を探してるのぉ」
一旦私の家へ戻り、話している。
メリーさんが言うには、彼女は元々その女の子の所有物だったんだとか。
その子の名前はみっちゃん。当時十歳だったらしい。
「ワタシ、みっちゃんの居場所を知りたいのぉ。妖魅さんの霊能力で何かわかったりするかしらぁ?」
「生憎、私は霊能力者じゃないのよ。ただ『見える』だけ」
「うーん。困ったわねぇ」
ため息混じりのメリーさん。
そこへ、今までメリーさんの赤毛を弄りまくっていたレイちゃんが会話に割って入ってきた。
「メリーさんってヘンテコリンだね。なんでおにんぎょうさんなのにおしゃべりできるの?」
「それはぁ、わからないわぁ。みっちゃんに捨てられた時にぃ、気づいたら喋られるようになってたのよぉ」
「つまりおばけってこと? でもわたし、ようみおねえちゃんとちがってふだんおばけはみえないよ?」
「ワタシはあくまでも人形だからねぇ。誰でも姿は見えるし、声も聞こえるらしいわぁ」
「ふーん」
気になったので私は、メリーさんがどうやって電話してきたかを聞いてみた。見たところ、彼女は連絡ツールを持っていなかったからだ。
返ってきた答えは、念話をするとスマホやら電話に繋がってしまうという能力があるせいのようだ。
「自分でも不思議なんだけどねぇ」とメリーさんは小さく笑う。
「話を戻しましょぉ? とりあえずぅ、みっちゃんを探してほしい。これがワタシの依頼よぉ。引き受けてくれるかしらぁ?」
「……探偵でもない私に人探しを頼む、か。でももののけ案件じゃ他の人に頼めないし。わかった、みっちゃんを探しましょう」
いつの間に私はここまでのお人好しになったんだろう?
そんなことを思いつつ、私はメリーさんの言う『みっちゃん』を探すべく、計画を練り始める。
今回も厄介なことになりそうだ。