表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/64

実は生霊だった

 ツトムくんの話を聞いて、私の考えは大きく変わった。

 今まではレイちゃんを幽霊だと思っていた。あんな姿をしているし、私にしか見えない。以前の生田のこともあったから、思い込んでしまっていたのだ。

 しかし――。


「まだ生きてるなら話は違う」


 私はツトムくんからさらに色々なことを聞き出した。

 そしてもう一度お礼を言い、そっとマンションの一室から出る。向かうはレイちゃんのところだ。


 そしてレイちゃんは、マンションの入り口付近で所在なさげにしていた。


「レイちゃん」


「おねえちゃん!」


 レイちゃんの顔がパッと明るくなる。

 ダメだ、私は今までずっと一人っ子だったけど小さい子は好きな方だから、思わず愛でたくなってしまう。

 ダメダメ、それは全部後にしなくちゃ。私は唇を噛み締めた。


「レイちゃん。私、ツトムくんから色々と聞いてきたの。辛いかも知れないけど、説明していい?」


「うん。いいよ」


「なら言うわ。――あなたとあなたのお母さんは、事故に遭ったのよ」


 私はレイちゃんに、聞いた話を全て明かした。

 彼女たちが買い出しの途中で事故に遭ったこと。

 母親を失ったこと、その時にレイちゃんの魂が体から抜け出して、今彷徨っていること。


 レイちゃんはなんだか納得したような顔をした。


「そっか。そうだった、おもいだした。うしろからくるまがビューンってきて、おかあさんがはねられて……わたしも」


「実は私ね、幽霊さんとかお化けとかが見えるの。みんなが見えてるわけじゃないんだけど、私は特別。だから私にはレイちゃんの姿が見えるのよ」


「じゃあ、わたしゆうれいさんなんだね。おかあさんがいってたよ、ゆうれいさんはまだいきてるかぞくをみまもるんだって。でもわたしにはかぞくはもういない。おかあさん、しんじゃったから」


 今にも泣き出しそうなレイちゃんに、私は大きく首を振る。

 そして、言った。


「あなたの体はまだ生きてるわ。今も、病院にいる」


「え?」


「事故の時、体から魂が抜けちゃって、レイちゃんは生霊ってやつなの。このまま放っておいたら明日には体のほうが死んじゃって、レイちゃんは幽霊になってしまう。だけど、」


 私は力強く笑って見せた。


「今なら間に合うわ。急ぎましょう」



△▼△▼△



 ツトム少年の情報を頼りに病院に辿り着くと、確かに彼女はそこにいた。

 血まみれではないけれど、体に包帯をぐるぐる巻かれて人工呼吸器に繋がれた女の子。顔を見るだけでわかる、彼女がレイちゃんなのだと。


 生霊の方のレイちゃんは驚いていた。


「ほんとだ、かがみでみるわたしとそっくり……!」


「そう、これがあなたの体なのよ。……心の準備ができたら、体に触るの。いいわね?」


 幼い少女はこくりと頷いて、まじまじと自分の寝顔を眺める。

 まるで魂の抜けたような寝顔。

 ……もっとも、『ような』ではないのだけれど。


「わたし、もしいきかえっちゃったらどうしよう。おかあさんはさきにてんごくにいっちゃったし、おとうさんも。わたし、ひとりはやだよ……」


「大丈夫、私がついていてあげるわ。だから心配しないで。あなたのお母さんもお父さんも、あなたに生きてほしいって、そう思ってるわ」


 生憎、もう昇天してしまったのかして、レイちゃんの両親の幽霊とは会えなかったが、誰しも親というものはそうだろう。

 虐待しているなら話は別だが、レイちゃんは愛されていたようだし。だから、きっと。


「わかった。……おねえちゃん、ありがと。わたしおねえちゃんにたすけられちゃった」


「いいのよ。私も人助けができて嬉しいわ」


 人ならざるものたちに、私は今まで関わってこようとしなかった。

 が、生田の件でその心情は大きく変わっている。ああ、救えてよかった。本当に心からそう思うのだ。


「おねえちゃん、だいすき」


 キラキラした笑みを浮かべながら、半透明の体のレイちゃんが、本体にそっと触れる。

 眩い光が漏れ出して、瞬きの後には霊のレイちゃんが消えていた。そして――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 生き返った後、レイちゃんはどうなるんだろう。 親戚が居たら、彼らが引き取るのだろうか。それとも孤児院とかに……それとも……?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ