プロローグ 妖魅
昔から、周りに気味悪がられることが多くあった。
私が道端を行く小さな黒い影たちを指差すと、皆が変な顔をする。
「何もないよー?」
「誰もいないけど?」
「やだ、なんか怖いもの見えてんじゃないの?」
そう言われることがしょっちゅうだった。
でも確かに私の目にははっきり見えていて、だからこそ不思議で仕方なかった。
ある時、灰色の大きな壁にぶち当たった。自転車に乗っていた時の話だ。
その瞬間、私はなんだかピンと来てしまった。ああこいつは絵本で見た妖怪だって。
それはヌリカベだったのだけれど、その時は名前までは知らなかった。
妖怪図鑑を借りて調べてみると、今まで私が目にしてきた奴らがたくさん載っていた。
猿のような化け物、黒いモゾモゾしたもの、火車に人間の頭がくっついたもの……。
私はどうやら人ならざるもの、妖怪たちが見える体質だと気づいた。が、どうしていいのかはさっぱりわからない。
両親や友達に言ってもやはり変な顔をされ、しまいには頭の病気を疑われて精神科にまで行かされた。けれども異常は見つからなくて、やはり体質なんだと私は思った。
もののけが見える私。当然、苦労は絶えなかった。
街中を歩くだけでたくさんの人ならざるものたちと出くわす。
元々はただの物に魂が宿っている妖怪をはじめ、色々なものたちに。
私はそれらになるべく関わらないようにした。きっとどこかおかしな場所へ連れ去られてしまう気がするから。
そうして私は高校二年生までを過ごしてきた。




