Oui, Votre Altesse
「鐘声で人に注目させ、そして演説をするのか?」
「それだけではありません。三つの目的があります。」
末の姫は振り向き、姉を見る。
「一つ目は、姉上の言う通り、宣言するためです。」
「うん。」
「二つ目は、王政の終わりを告げるのです。」
「なるほど。三つ目は?」
「シンデレラに、帰りなさいと伝います。」
「...君に相応しいね。天真爛漫で、現実的じゃない。」
「ペガサスは天空へ飛び、そして流れ星になれます。」
「生きていれば...でしょ?」
一番上の姫は剣を刺す、そして末の姫はかわしたあと、隣に何歩下げた。
「武器がない君には勝算もない。」
「武器などいらない、我が騎士がいる限り。」
「彼も生きていれば。」
「彼はクリに勝てないかもしれないが、私のためなら生きてくれる。」
末の姫の消えない希望が嫌になって、一番上の姫は一歩詰めだ。
そして末の姫は姉の攻撃を避けながら、一歩ずつ下げている。
「いつまで足掻くつもり!」
「シンデレラを見つけるまで。」
微笑んだあと、末の姫は後ろの階段に駆け降りた。
「...!待ちなさい!」
末の姫を囲んだと思ったが、追撃のせいで逃げる隙を与えてしまった。
一番上の姫は自責しながら、容赦なく追いかける。
「離れさせると思うか!」
「死にかけても、あの人の元に帰ります!」
「何故目を覚まさない!君は本当に末の姫様に忠誠を誓ってるわけじゃない!」
「僕は...!」
クリの攻撃を凌いだ剣は動揺しているが、攻撃の姿勢は乱れていない。
「今の僕には彼女しかいないのなら、彼女を守るしかないんじゃありませんか!」
「伊吹さん!お嬢様な感じでしたが、まさかこんなにも戦えますね。」
「とんでもないんです。ボレット婦人。」
伊吹さんは少し頷く。
「妹のお二人はどこに?」
「捕虜を見張っています。」
「二人の王子ですか?」
「はい。国王と皇后は?」
「国王は私に負けました。皇后はそれを知ったあと、すぐ降参しました。」
「あとは、二人の姫だけですね。」
ボレットは伊吹を見て、躊躇う。
「どうかしましたか?」
「先程、末の姫の宣言は、どういう意図でしょう?」
「わかりませんが、ひとつわかることがあります。」
「...?」
「あの二人は、その塔の上にいることです。」
伊吹は微笑んで、ウォーキートーキーを使う。
「そこの爆弾を爆発させなさい。」
伊吹が話したあと、五秒立って、そして塔の上から爆発の音がいくつ響いた。
「...!姫!」
二人の騎士は叫び出す。
二人とも塔に駆けつけたいが、クリは剣を意識してる、そして剣は自分のことを考えず、ただ塔に行きたがってるだけ。
クリはそれに気付いて、剣に攻撃をかける。
「...!」
急に、彼の腹から痛みが伝わる。
彼の腹を刺さった剣は速やかに戻し、剣に染まってる血も大地の上に落とした。
「これで、一番上の姫を気にせず殺せます。」
「賢明です、伊吹さん。」
「ただ、その少年...」
伊吹はその背中を見つめて、不安な顔をしていた。
「あ...!」
爆発の熱い風に巻き込んで、末の姫は階段から落ちた。
目を開けたとしても、炎しか何も見えない。
「...!姉上!姉上!」
返事が、ない。
「どうしよう..こんなに炎が大きいじゃ、一階まで降りることができない。」
末の姫は窓の外を覗いたが、小さな景色が彼女の足をすくませた。
それでも彼女が、その姿を見逃せなかった。
彼女は立ち上げて、窓を開ける
「剣...!」
「...姫様!」
「...!」
小さいが、末の姫は気付いた。
剣の目にある、迷い。
「剣、君はそう言った。君は人を傷付きたくないが、誰でも傷付かない選択肢はないと。」
「はい!」
「なら、君は誰を傷付いた?」
「...!」
剣は立ち止まった。
初めて向き合う質問だ。
「剣、私と君は同じ、誰にも傷付かないが、ある人を傷付いた道を選んだ。」
「自分を傷付いた...?」
暖かい涙は流れ出す。
父が亡くなった以来、剣初めて泣いた。
「私は怖かった、自分が正しいかどうかを。」
彼女は怖かった、父上の期待を裏切ったかどうかを。
「しかし、君のお陰で、私に自分の選択と向き合い、迷いを晴らした。」
彼女はあの人のお陰で、自分には何もないから、何かを夢中に求めることと向き合えた。
偽りの感情でもいい、偽りの絆でもいい。
「私のためにいばらを切り裂き、不安や恐怖を立ち切ってくれませんか?」
末の姫はドレスの裾を上げて、窓に右足で踏んだ。
「...!」
このタワーが気に入っているが、本当は高いところが苦手なんだ。
...それでも、窓際に行くのですか?
空が恋しいから。
「イエス・ユア・ハイネス!」
飛び降り。