La personne qu'elle a blessée
「姫様はかなり君を期待していたのに、残念だな。」
「残念ですが、これが主の願いですから。」
「やる前に、ひとつ聞いておく。」
「...?」
剣は戸惑った。
集中させないための言葉だと思えない。
こんなタイミングで、クリは一体何を?
「君は本当に末の姫のために命を捧げたいのか?それとも、ただ死を望んでるだけ?」
一方。
姉に追われてる末の姫は、大好きな塔に逃げ込んだ。
「何故今の制度を変わりたいのですか?父上は完璧にこの国を管理しています。」
「今がどうとかとは関係ありません。間違ったのはシステムです!民たちには元々、自分の生活を決める権利があります!」
一番上の姫は階段で走りながら、より高いところにいる少女を見つめる。
これが、理想の差か?
「貴族はどうする?」
「全部私が叩き潰して、新しい制度を立て直します!」
「君の理想甘すぎる!現実的じゃない!」
「姉上の理想こそ、民たちに自由を与えると言うつもりですか?」
塔に慣れたゆえか、末の姫は徐々に距離を開けた。
「なんだと...!」
二番目の王子の叫びを聞いて、反乱軍と戦ってる一番上の王子は振り向いた。
「どうした?」
「妹くんが反乱を行って、そして姉上が彼女を追っています。」
「妹くんが...!」
「兄上!」
弟に注意されたが、王子は敵の攻撃から逃れきれず、肩に大きなダメージを。
「...!」
「手加減すると思いですか...?」
「伊吹さん...」
肩の傷を押して、王子は改めて剣を振る。
「まさか...ミルシャルテ伯爵も君の願いを知ってるのか?」
「だったら何ですか?」
「それが君が望む世界か?王族のない世界。」
「...姉上は町中に歩いたことがないから、わかりませんよ。」
明るく見える太陽ですら、暗くて寒い影がある。
平和に見えるこの国も、和平だけでいるはずがない。
末の姫は彼女の目で、色んな悲劇を見届けた。
「伯爵、あなたは兄上たちと、姉上の理想を誉めたが、私の理想にだけは、何も言ってくれませんでした。」
彼女も反省した、疑った、自分の方が間違ってるのではないかと。
それでも、この理想は隠されたまま。叶えないし、わからない。
おしまいの、物語のように。
だが、あの日の出会いで、すべてが動き始まった。
「できれば、私も人を傷付きたくありません。しかし、誰でも傷付かない選択肢はありません。」
だから彼女は誰かを傷付いた。
だから彼女も誰かを傷付いた。
心が共鳴した瞬間、少女はようやく、伯爵が言えなかった言葉に気付いた。
自分がやるべきこともはっきりわかった。
「私は、自分が決めたことに後悔しない。だからあなたもどうか、私を応援してください。」
「少年、僕は君の目から姫様への忠誠が見えない。」
「その言葉を、姫様への侮辱に捉えてもいいですか?」
「今さら、姫様を死ぬ理由にしようとしているのか?」
「死ぬつもりはありません。主の願いを叶います。」
「僕に勝てるとでも?」
「...難しいでしょう。」
「なのに君の目から恐怖が見えない。それが問題だ、少年。」
クリは剣に最後の言葉をつく。
「主の願いを叶えない恐怖がないんだ。」
剣術の決闘のときみたいに、剣は先に駆け出した。
彼の剣はクリの腰に切る、そしてクリの剣はそれをしっかり防いだ。
それどころか、クリはそのまま剣を振って、剣の左肩に切る。
その攻撃を真っ正面から受けた剣は、必死にクリの剣を抑えようとしている。
その時、鐘が鳴った。
「...!」
「姫...」
高い塔の上に立つ少女、その凛々しい姿は人々の目線を集める。
決闘中の二人でさえ、後ろの足音と雑音に気付けなかった。
「姫様、あばたは一体...?」
振り向けば、目の前にある鐘の針は、12時方向に止まった。
先程の鐘声も、誰かが針をリセットしたことによるものだ。
手の上にある懐中時計を見て、そして少女は再び振り向き、目を閉じて叫ぶ。
「私、末の姫は、ここで民に告げます。
「六花王政は雨羽八年で、正式に終わりをつけます。
「王族による管理、そして貴族の体制は全部壊し、民による新しいシステムが築かます。」
「ごめんなさい、クリさん。」
「...?」
「零時になりました。シンデレラも、彼女の居場所に帰らなくちゃいけません。」
主のためか、自分のためか、剣は未だに答えが見えていない。
だが、彼は知ってる。
自分の居場所が、その塔の上にいること。