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私のガラスの靴を忘れないで  作者: 雨上がり
8/10

La personne qu'elle a blessée

「姫様はかなり君を期待していたのに、残念だな。」

「残念ですが、これが主の願いですから。」

「やる前に、ひとつ聞いておく。」

「...?」

剣は戸惑った。

集中させないための言葉だと思えない。

こんなタイミングで、クリは一体何を?

「君は本当に末の姫のために命を捧げたいのか?それとも、ただ死を望んでるだけ?」


一方。

姉に追われてる末の姫は、大好きな塔に逃げ込んだ。

「何故今の制度を変わりたいのですか?父上は完璧にこの国を管理しています。」

「今がどうとかとは関係ありません。間違ったのはシステムです!民たちには元々、自分の生活を決める権利があります!」

一番上の姫は階段で走りながら、より高いところにいる少女を見つめる。

これが、理想の差か?

「貴族はどうする?」

「全部私が叩き潰して、新しい制度を立て直します!」

「君の理想甘すぎる!現実的じゃない!」

「姉上の理想こそ、民たちに自由を与えると言うつもりですか?」

塔に慣れたゆえか、末の姫は徐々に距離を開けた。


「なんだと...!」

二番目の王子の叫びを聞いて、反乱軍と戦ってる一番上の王子は振り向いた。

「どうした?」

「妹くんが反乱を行って、そして姉上が彼女を追っています。」

「妹くんが...!」

「兄上!」

弟に注意されたが、王子は敵の攻撃から逃れきれず、肩に大きなダメージを。

「...!」

「手加減すると思いですか...?」

「伊吹さん...」

肩の傷を押して、王子は改めて剣を振る。


「まさか...ミルシャルテ伯爵も君の願いを知ってるのか?」

「だったら何ですか?」

「それが君が望む世界か?王族のない世界。」

「...姉上は町中に歩いたことがないから、わかりませんよ。」

明るく見える太陽ですら、暗くて寒い影がある。

平和に見えるこの国も、和平だけでいるはずがない。

末の姫は彼女の目で、色んな悲劇を見届けた。

「伯爵、あなたは兄上たちと、姉上の理想を誉めたが、私の理想にだけは、何も言ってくれませんでした。」

彼女も反省した、疑った、自分の方が間違ってるのではないかと。

それでも、この理想は隠されたまま。叶えないし、わからない。

おしまいの、物語のように。

だが、あの日の出会いで、すべてが動き始まった。

「できれば、私も人を傷付きたくありません。しかし、誰でも傷付かない選択肢はありません。」

だから彼女は誰かを傷付いた。

だから彼女も誰かを傷付いた。

心が共鳴した瞬間、少女はようやく、伯爵が言えなかった言葉に気付いた。

自分がやるべきこともはっきりわかった。

「私は、自分が決めたことに後悔しない。だからあなたもどうか、私を応援してください。」


「少年、僕は君の目から姫様への忠誠が見えない。」

「その言葉を、姫様への侮辱に捉えてもいいですか?」

「今さら、姫様を死ぬ理由にしようとしているのか?」

「死ぬつもりはありません。主の願いを叶います。」

「僕に勝てるとでも?」

「...難しいでしょう。」

「なのに君の目から恐怖が見えない。それが問題だ、少年。」

クリは剣に最後の言葉をつく。

「主の願いを叶えない恐怖がないんだ。」


剣術の決闘のときみたいに、剣は先に駆け出した。

彼の剣はクリの腰に切る、そしてクリの剣はそれをしっかり防いだ。

それどころか、クリはそのまま剣を振って、剣の左肩に切る。

その攻撃を真っ正面から受けた剣は、必死にクリの剣を抑えようとしている。

その時、鐘が鳴った。

「...!」

「姫...」

高い塔の上に立つ少女、その凛々しい姿は人々の目線を集める。

決闘中の二人でさえ、後ろの足音と雑音に気付けなかった。

「姫様、あばたは一体...?」


振り向けば、目の前にある鐘の針は、12時方向に止まった。

先程の鐘声も、誰かが針をリセットしたことによるものだ。

手の上にある懐中時計を見て、そして少女は再び振り向き、目を閉じて叫ぶ。

「私、末の姫は、ここで民に告げます。

「六花王政は雨羽八年で、正式に終わりをつけます。

「王族による管理、そして貴族の体制は全部壊し、民による新しいシステムが築かます。」


「ごめんなさい、クリさん。」

「...?」

「零時になりました。シンデレラも、彼女の居場所に帰らなくちゃいけません。」

主のためか、自分のためか、剣は未だに答えが見えていない。

だが、彼は知ってる。

自分の居場所が、その塔の上にいること。

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