Immuable et absolu
決闘当日の朝。
早めに会場についた剣は、果てのない空を見つめる。
「君が、妹くんが選んだ騎士か。」
剣は振り向いて、後ろに一人少年がいた。
スッキリで、華やかなデザインがある服を着てる少年は、凛々しい立ち方と顔をしている。
そして何より、剣が気になるのは、彼の顔と言い方。
「はい...。」
「緊張するな。僕の身分を知ってるか?」
「一番上の王子様とは、パーティーで会ったことがありますので、恐らく二番目の王子様でしょうか…?」
「残る選択肢が正解ってことか。無礼だが、正解だ。」
王子はクスッと笑った。
「君は妹くんと似てるよ。一番正しい、そして人を一番傷付く事実を言い出すところ。」
「多分...多分姫様は、人を傷付いたことに気付いていません。」
「君ならどうかな?ちゃんと正しさを認識してるのか?」
剣は少し俯き、そして改めて顔を上げた時、その目に迷いが消した。
「姫様の願いこそが、私の正義です。」
「いい答えだ。」
優しい微笑んだあと、王子は自分の剣を外した。
「持っていけ。君のその剣じゃ、決闘すらできないぞ。」
「ですが...!」
「案ずるな。これは元々、君のために持って来たんだから。僕の剣ではない。」
「...どうして私を助けるのかを、お尋ねしてもよろしいのでしょうか?」
「強いて言うなら、君が美しいから、かな。」
「美しい...?」
「紳士としての気品、淑女としての姿勢、両方持ち合わせてる君に、埋もれるのはもったいない。」
「...!」
今までの経験が自分を助けることに、剣は驚いた顔をしている。
「驚くにはまだ早いぞ、少年。本番はこれからだ。」
王族メンバーが揃い始め、そしてもうすぐ決闘の時間。
一度離れて、騎士を連れて再び会場についた二番目の王子は、末の姫の隣に座った。
「妹くん、君はいい騎士を選んだ。」
「...!ありがとうございます。」
「たまには兄の僕に手伝ってもらうよ。」
「...?」
王子は少し微笑んだあと、すぐ真面目な顔に戻る。
そして決闘もついに始まる。
「今日は僕、この一番上の王子様の騎士、ザリックが決闘の審判を務めます。」
剣はザリックに頷き、そしてクリも頷いた。
「では、背を向けて。」
「待ってください!」
ビックリしたザリックは振り向き、決闘を見てる人たちも、その少年を見つめる。
彼は国王の前に立って、そして膝まずいた。
「父上、この決闘を不公平だと思いますが。」
「ほう...?言ってみろ。」
「騎士というものは、正義の身代わりとなり、潔くて死を恐れず、主のために全てを捧ぐ存在です。」
「ええ。」
「しかし、姉上の騎士に勝ったとしても、彼の強さを示しただけで、正義でも、彼の主の願いでもありません。」
「だとしたら、どうやってこの少年の力を試す方がいいと思う?」
「騎士の七つ芸で勝負してもらいたいです。」
二番目の王子が言う騎士の七つ芸は五つの戦闘技術、剣術、ジャベリン、水泳、狩り、騎馬、そして二つの芸術才能、チェスと詩作。
この七つの力こそが、騎士の基礎。
「...クリと剣、異議はないよね?」
「ありません!」
「ザリック、王子の言う通りに変更しよう。」
「イエス!ユア・マジェスティ!」
二番目の王子の提案により、決闘は七回戦で、四つの勝利を取ることで優勝となる。
クリは一番上の姫の騎士として、見事に狩りと騎馬で勝った。
そして剣も負けず、ジャベリンと詩作で勝った。
次の試合は、剣術。
ザリックの声を合図に、背を向けて何歩歩いた二人は一気に振り向いて、相手に猛烈な攻撃を仕掛ける。
「兄上、剣が持ってるその剣はまさか...?」
「あら、妹くんは覚えているのか。」
「忘れるはずありません。あれは敬愛なミルシャルテ伯爵が兄上に授けた剣ですよね。」
「僕は戸惑った。優しい伯爵はどうして僕に剣をくれたのか。妹くんの騎士を見て、僕はわかったんだ。」
「剣を...?」
「優しい剣は迷いを立ち切ることができない。彼の剣は優しいが、刃がある。」
「...!はい。」
「まだまだ、足りないみたいけどね。」
二人は微笑んで、剣の三つ目の敗北を見届けた。
「次はチェスです。二人とも、席につきなさい。」
クリの向こうに座る剣は、改めて自分の弱さを感じた。
しかし、主のためでも、ここで引くわけにはいかない。
「...少年、君は面白いことをしている。」
一つの駒を置いて、クリは微笑んだ。
「なぜナイトを動かせない?」
「主の望みが未だに見えていませんから。」
「兵だけじゃ僕を倒せない。」
「はい、わかっています。」
一歩。ナイトは大きた一歩を踏み出す。
「見えたかい。君の主が求めてる結果を。」
「はい。」
「妹くんは心配してないの?」
「剣は私のために勝ちます。」
剣を見つめてる末の姫は一切な動揺もせず、まるで剣がすでに勝ったように。
「...!チェックメイト、剣の勝利です!」
驚いたザリックと違って、国王は少し微笑んだ。
「...生意気な子。」
「国王陛下...?」
皇后は戸惑う眼差しで隣を見る。
「見ろ。彼のクイーンは一歩も動いていなかった。」
「...!」
「それだけじゃない。対戦中、クイーンのそばには必ずナイトとルークがある。」
「対戦しながらこういうことをしていますか!」
「だから生意気と言った。だが、気になるな。なぜルークを?」
クイーンが末の姫で、ナイトが剣自身なら、ルークはどこだろう。
国王の疑問の答えを、末の姫はすでにわかっていた。