表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のガラスの靴を忘れないで  作者: 雨上がり
5/10

Répondre aux attentes

「お父様、ひとつ質問してもよろしいでしょうか。」

「何でしょう。」

「どうして私の名前は刃...人を傷付く名前なのでしょう。」

「君が優しい子だから。」

男は微笑んで、手に持ってる懐中時計を見る。

「時間と同じ。」

「時間...?」

「時間は、唯一平等なもの。最も優しいが、残酷。」

「ですが、私は時間ではありません。」

女の子の答えを聞いて、男は笑った。

「時間は君を導くだろう。」


「刃にも形見あげないと、噂されます。」

「ですが...何をあげても贅沢に見えます。」

「お姉様、私はあの懐中時計が欲しいです!」

勇気を出した少女は言った。

「懐中時計?ボロボロだけど、構いませんの?」

「はい!それで充分です!」

亡くなったお父様の代わりに、この懐中時計は彼女の道を導くと、刃はそう信じていた。


「姫様、あなたの騎士と名乗る平民が会見を求めていますが。」

「...!すぐ会わさせて!」

懐中時計をポケットに、末の姫は、会見室に駆けつける。

隣のメイドは止めようとしたが、末の姫を止められなかった。

彼女が、彼女の元に戻ったから。

「剣...」

「ただいま戻りました、我が姫君。」

「ええ、戻ってくれました。」

一瞬な笑顔だったが、刃は見逃さなかった。

「剣、君の出身の故に、父上はひとつ条件を出しました。その条件を満たしたことで、私の騎士になれます。」

「必ず身を持って成功させて頂きます。」

「ありがとう。条件は、決闘で姉上の騎士クリに勝つことです。」


剣が王宮に住んだことで、彼とクリの決闘も明日に決まった。

そしてその夜、末の姫は剣を呼んで、一緒に彼女の大好きなタワーに行った。

そのタワーの頂点には、王族がすべてを支配すると示す、止めることがない鐘がある。

王族の時間を過ごす。王族の命令を従う。

「このタワーが気に入っているが、本当は高いところが苦手なんだ。」

「...それでも、窓際に行くのですか?」

「空が恋しいから。」

夜風は姫の髪を吹いて、彼女の後ろに立ってる刃は、懐かしい匂いを嗅いだ。

「剣、明日の決闘、君の剣術が抜群じゃないと、勝てませんの。」

「姫様の騎士ですから、相応な実力があるのでしょう。」

「クリはとても素晴らしい騎士です。」


刃は微笑んで、姫に近寄った。

「ひとつストーリーを語ってあげてもよろしいでしょうか。」

「...ええ。」

「僕の母は私を生んだあとで亡くなり、僕と三人の姉は、父に育てられました。」

「いい父親でしたか?」

「はい。とても優しく、僕たちを愛してる父親でした。」

「それはよかったです。」

「はい。僕がまだ若くて幼い頃、彼も亡くなって、こも懐中時計を残してくれました。」

末の姫は、隣に立ってる刃の横顔を見つめる。

だが刃はただ、遠い景色を見ているだけ。

彼には、優しい父親を思い出したのかもしれない。

「私元の名前は、剣と同じように、とても鋭い名前でした。」

「...!そうですか。」

「そして一度だけ、私はお父様に、この名前の由来を尋ねました。」

「君の父親はなんと答えましたの?」

「正面で答えてくれませんでしたが、時間と同じだと言いました。」

「時間...?」

「時間は、唯一平等なもの。最も優しいが、残酷。」


「とても悲しいお言葉ですね。」

「...どうしてですか?」

「時間の優しさを知ってるのは、時間以外の差がどれだけ無力させるのかを知ってるから。」

「...」

「時間の残酷さを知ってるのは、時間に奪われたあと、何も残らない寂しさを知ってるから。」

「...それを理解できるあなたも、とても悲しい人でした。」

末の姫は微笑んだ。

「君の父親は、とても優しい人です。」

「はい。」

「もうおしまいですか?」

「そのはずですが、僕とあなたが出会ったあの瞬間から、物語が続きました。」

「ほう...?」

「そして、あなたから新たな名前をもらった時点で、ようやくわかりました。」


刃は、剣の上にある、鋭い部分。

末の姫の騎士が剣、彼女のためにいばらを切り裂き、不安や恐怖を立ち切る剣だとしたら。

それはきっと、姫が剣を持って、彼女の意のままに、切りたい方向へ切るのだろう。

そして刃は、剣の最前線にある。

身を捧ぐ、命をかけて。

「残酷な剣は人を殺す、そして優しい剣は大事な人を守る。」

僕が時間。すべてを残酷に奪えるが、すべてを優しく守れる。

この瞬間から僕は、刃ではなくなった。

すべての過去と縛りを捨て。

「明日の決闘で勝利するのがあなたの望みであれば、僕は必ずあなたのために剣を振り、勝利をあなたに捧げます。」

「...剣、私には叶いたい願いがあるの。そのために、君が私の騎士になる必要がある。」

「はい。」

「明日の決闘で、勝ちなさい!」

「イエス・ユア・ハイネス。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ