最高の殺し合いだぁあああああ!
『終わらせてもらうぞ!』
騎士ではなく、軍人の瞳でフィリディーナはハルバードで神速の突きを放つ。
正確に俺の操縦席を狙う刺突。俺はあえてこの一撃を受けた。巨神甲冑の装甲を突き破られて、ハルバードの先端に軍事甲冑の装甲を抉られながら、逆にその勢いを利用して回転、体を半身にしながらスリ足で前に出る。
操縦席が剥き出しのままスリ足で、巨神甲冑の重量一五〇トンを十分に乗せた刀の刺突が、オデュッセウスの右わき腹に触れた。
電離分子高周波刀がまとう超高温のプラズマと、オデュッセウスの表面を覆う防御用の常温プラズマが削り合って、相殺。
カーボンメタルでできた高周波刃が、同じくカーボンメタルの装甲に食らいつく。
鉄の包丁で鉄板を切れないように、素材が同じなら刃が負ける。
けれどこちらは高周波により高速振動という特殊能力持ちだ。
高周波の微細な振動が、オデュッセウスの堅牢な装甲に火花を散らし、刃が沈み込む。
刀のプラズマの余波、余熱でカーボンメタルが熱せられたことも関係あるだろう。
刀の先端に、巨神甲冑の超重量と超パワーが加わり、刃の切っ先はオデュッセウスを貫通。電離分子高周波刃が、オデュッセウスを内部から破壊する。
『操縦席を犠牲にしただとぉ!?』
フィリディーナがクイックバックブーストで距離を取るのに合わせて、俺もクイックフロントブーストで加速しながら、刀の反粒子一〇〇ミリグラムを覚醒させた。
サクが勝ちとった電離分子高周波刀が、サクがもぎとった反粒子を核反応させたエネルギーで溢れて、下段に構えた刀身に纏うプラズマが巨大化。
「喰らえよフィリディーナ! これが俺の、うちの交渉人の想いだぁあああああああああああああああああああああああ!」
プラズマの大刀を、一気に真上に斬りあげる。
「男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄‼‼‼‼‼‼」
『ッッッ!?』
フィリディーナは最後まであきらめず、ハルバードで防ぎながら身を逸らす。
俺の最後の一撃は、オデュッセウスの左足と腕、ブーストを切断。
空ぶった一撃は背後の巨大な壁に当たって、刀身から放たれたプラズマの巨大な奔流が龍の天上へと駆け上がった。
けたたましい轟音を上げながら、天に昇った龍が、この施設を吹き抜け構造へと生まれ変えさせる。
『フッ、ハハハハハ。惜しかったなセツラ。貴公の交渉人の想いは私に届かなかったようだな。とはいえ、私の反応が一瞬遅れていたら私の負けだった。とはいえ私もこの様だ。君にももう反粒子はあまり残っていない。だが、引き分けにはさせんぞ!』
建物全体が激震して、フィリディーナの視線が上を向いた。
『何だ?』
その隙を見逃さず、俺の刀がオデュッセウスの、右ブースターを刺し貫いた。
これでもう、オデュッセウスは飛べない。片足では、巨重の巨神甲冑は満足な移動は望めない。
『貴公! もしや!』
「サクの、未来の弟の気持ちを無駄にするかよ……最初からこれが狙いだ。最初から俺は、こうするつもりでここに来たんだ!」
施設が崩落する。
巨大な瓦礫がいくつも降り注いでオデュッセウスを下敷きにした。
ブースターと足が無事な俺はクイックバックブーストで緊急離脱。建物から脱出した。
『私が……このフィリディーナ・フィリアージがぁああああああああああ‼‼』
フィリアージの悲鳴が施設崩壊の轟音にかき消される。
装甲ハッチを失った俺は、フィリディーナが瓦礫に埋もれる様を、肉眼でハッキリと目に焼き付けた。




