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魔王VS戦女神

 上空一〇〇メートル。

 武尊に乗った俺の前に、オデュッセウスに乗ったフィリディーナが空に佇んだ。

 通信を飛ばしてきたので受信すると、俺の視界に栗色のウエーブヘアーの美女が映った。


『戦う前に自己紹介をしておこう、私はギリシャ軍フィリディーナ・フィリアージ少将。貴公は日本軍桐生セツラ大尉だな?』


 騎士らしい凛とした、いや、猛将のように力強い声だった。


「あんたみたいな有名人に知ってもらえて光栄だね」


『謙遜するな。聞いているぞ、日本軍には軍事甲冑で巨神甲冑に勝てる逸材『軍神』がいると。『神殺し』『魔王マンモン』などと言われているらしいな。奇遇にも私も『軍神』だ。軍事甲冑で巨神甲冑を何度か倒した。『巨人殺し』『戦女神アテナ』などと呼ばれている』


「みんながオーバーなんだよ。俺は巨神甲冑を倒したけどさ、俺みたいにだらだら生きている奴よりも、仲間を守る為に死んでいった奴の方が、よっぽど軍神様だよ。頭が下がるぜ」


 画面の向こうで、アテナの目が笑った。

 瞳の奥に映るのは、俺と同じ光だ。


『魔王軍神よ、この女神軍神の話を聞いてくれるか?』

「あんたみたいな美女の話ならいくらでも」


 オデュッセウスが、大ぶりなハルバードを両手で俺に向けた構えた。


『その首貰い受ける‼』


 俺の心臓が歓喜する。俺の魂が狂喜する。笑顔が吹きこぼれて、もう止まらない。

 向き合っただけで解る。


 

 全力で殺し合ってもいい相手



 俺は量子化していた電離分子高周波刀を再構築。ハルバード対日本刀、騎士VS武士の空中戦が開幕。


 俺とフィリディーナの距離が、一瞬で零になった!


『ハァアアアアアアアアアアアアアアア‼』

「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄‼」


 身長二〇メートル、重量一五〇トンの大巨人同士が、空中で得物を猛らせる。


 音速の数一〇倍で、音速の壁を無視して互いに衝撃波の海に浸かりながら吠えた。


 毎秒何百という斬撃をぶつけ合い、互いに退かない。


 後退のネジはおろか、ブレーキという概念すら吹き飛んだように、俺らは互いの命に刃を突き立てる。


 ハルバードを持つフィリディーナの方が射程は長いが、射程が長いと言う事は、それだけ遠くから攻撃してくるということ。


 どこから攻撃してくるかたっぷり観察できる俺は刀で受け流して接近。


 俺の近距離からの斬撃に、フィリディーナはハルバードの柄で受け止めたり、素早く短く持ち直して迎撃する。


 フィリディーナは今まで戦った中でもトップクラスの技量を持つ達人だった。


 オデュッセウスの運動能力を抜きにしても、彼女のハルバードさばきはまさしく剣聖ならぬ、戟聖の域に達している。


 けれど、そのフィリディーナの顔から、徐々に笑みが消えて、


『戦闘出力どころか通常出力(クルーズ)だと? 貴公、どういうつもりで……なんだこの反粒子量は、貴公は』


 フィリディーナが始めて俺から距離を取って、攻撃の手を休めた。


「色々あってね、反粒子をあまりもらえなかったんだわ」


『ふざけるな! 日本軍は何を考えている!? この戦いに私が参加しているのは貴公らも承知のはず。それなのに、そんな反粒子量の機体をこんな奥地に出すとは……その剣にも、たった一〇〇ミリグラムしか反粒子が入っていないぞ!』


 おー、やっぱオデュッセウスのサーチ能力は優秀だな。


「そうなんだよ。この一〇〇ミリグラムが今回支給された全反粒子だ。だから機体駆動には前回の余りで動かさないといけないから、通常出力が限界かな?」


 俺の言葉で、フィリディーナは水に打たれたような顔になる。


『もしや貴公の任務は私の足止め……』

「違うね」


 フィリディーナは俺らの作戦に気付きそうになった。でも俺は誤魔化すためじゃなくて、ただ本心を言った。


「俺はさ、あんたを討ち取りに来たんだ」

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