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独断専行

 第三師団が軍港へ到達して一時間後。四万のギリシャ兵VS一万の日本軍第三師団ではやはり、第三師団が苦戦を強いられた。


 軍港に着地して制地権を確保。そのまま上空からの攻撃を防ぎつつ軍港に配備された敵軍事甲冑と自律兵器を倒していく。

先衛の第十大隊、次衛の第九大隊は味方の四割が戦闘不能になり戦線を離脱。


 続く第八大隊も被害は増える一方だ。戦闘継続が難しくなった機体から、退路へ向かう。


 今はまだ、第二第四師団が退路を確保しているからこんなことができるが、それもいつまで持つか。


 そんなことを考える兵は少なくない。


 やがて第八大隊、第七大隊も撤退。撤退した兵の中で、負傷兵を運び終わり、戻って来た兵で前衛を再編成。


←⑩⑥ ⑥⑥ ③②①

←⑨⑦ ④セ④ ③②①

←⑧⑤ ⑤⑤ ③②①


 多くの死傷兵を出す、過激な消耗戦を繰り広げた。


 だがその甲斐あって、最後尾の第一大隊も上陸。


 一万人師団が軍港占拠に乗り出した。


 しかし互いに数を減らしたとはいえ、元より四万対一万。陽動、フィリディーナを出陣させるのが目的とはいえ、下手すれば壊滅だ。


 海のすぐ近く。退路をすぐ後ろに背負った第一大隊はともかくとして、他の隊には文字通り、死線である。


 最前衛では、セツラ以外の隊が所有する巨神甲冑が破壊の限りを尽くし、フィリディーナをおびき寄せようとする。


 しかし敵ギリシャ軍も巨神甲冑を動員。前方に、三〇機もの巨神甲冑の影が見える。


 現状、第三師団は味方の二割を失っている。


 軍事甲冑に乗るセツラは、全身の血管に闘志を流しこみ、循環させ始めた。


「一個師団が乗り込んできているし、後は目立つことすればフィリディーナも黙っていられないだろ。みんな」


 通信を開いて、仲間達に告げる。


「じゃあ俺、ちょっち行って来るわ」


 桐生セツラ、二一歳は今、武の極地に身を投げ出した。


 自分と調和して、心身共にベストコンディションに、


 相手と調和して、向かい合う敵全ての次の行動を先読み可能に、


 空間と調和して、目や耳、五感に頼らず周囲全ての状況を流れ弾に至るまで知覚、


 というのはセツラが二十四時間常にある状態。


 彼にとって、歴史上の傑物達が至った境地は、呼吸のようなものだ。


 本気を出した彼は戦場と……そして、世界と調和する。


「独断専行ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼」


 地上に軍神が覚醒した。


 クイックブーストで、隊列からセツラが消失。


 一閃の光が、戦場を駆け抜けた。


 駆け抜けた後の敵軍事甲冑全ての首が落ち、顔面を撃ち抜かれていた。



 日本軍も、ギリシャ軍も、何が起こったのか理解できた兵はいない。


 第三師団が進軍していた、軍港の大きな道路の軍事甲冑が一掃。


 セツラは制空権を取るべく天に昇る。


「殺るぜ」


 クリアモードを起動させて顔と胴体装甲を透過。素顔を晒したセツラが、全身に殺意を循環させる。


 空を支配していたギリシャ軍、五〇〇〇機中、生身の兵士二〇〇〇人の心臓が止まりかける。


 生まれたての小鹿がお腹をすかせた雄ライオンを前にした以上の、生物的敗北感と本能的な理解……『勝てない』。


 その間に、セツラは自律兵器達を一掃していた。


 なんのことはない。


 戦場を俯瞰するように見る以上、戦場そのものを知覚するセツラは、五〇〇〇機の敵全ての動きと攻撃、その今と未来は常に把握している。


 どこに身を置けば攻撃が当たらないか、かわせない場合はどの機体をどう攻撃すれば安全地帯が生まれるか、考えるまでもなく脊髄反射で行える。


 後はその最中、左手の刀が届く範囲の敵は全て斬り伏せ、右手のライフルで撃てる敵は全て撃ち殺すだけだ。


 セツラは嵐となって空を蹂躙する。


 セツラに反応できる敵はなく、セツラと捉えられる敵はなく、セツラにあらがえる敵はいなかった。


 いかにカスタム高機動型軍事甲冑センゴクといえど、何故ここまでの事ができるのか。


 それはひとえに、セツラだからこそとしか言えない。

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