開戦!
次の日。日本軍VSギリシャ軍の戦いは始まった。
ギリシャ半島のイオニア海上空に立って睨み合う両軍。
ギリシャ軍は自律兵器を含めて一〇万の兵を横隊にして海上を封鎖。
対する日本軍、第二方面隊第二師団と第四師団が縦隊で突撃体勢に入る。
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■■■敵
■■■軍 ←←□□□□□□第四師団一万
■■■十 ←←□□□□□□第二師団一万
■■■万
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『第二第四師団! 突撃ぃいいい!』
『おおおおおおおおおおおおおおお‼‼』
『者ども、ギリシャ軍の魂を見せろ!』
『オオオオオオオオオオオオオオオ‼‼』
戦争のありかたは二千年前から変わらない。
攻撃側の日本軍が、防御側のギリシャ軍へ突撃。
互いに射撃武装による激しい撃ちあいを始める。運のいい兵はプラズマ・バリア―を張る兵のおかげで助かるが、運の悪い者は盾兵の隙間から入ってきた弾丸に撃ち殺される。
互いにタングステン弾とプラズマ弾、荷電粒子が飛び交う戦場の中、次々仲間を撃墜しあい、恐ろしい勢いで人の命が散って行く。
ちなみに、縦隊は横隊に対して高い貫通力を誇るが、現代ではその威力が弱い。
密集陣形は陽電子砲のまとになるため、現代では散兵が基本だ。図も、おおまかに言えばこの辺にいて動いているというだけで、綺麗に整列しているわけではない。
だからこそ陽電子砲の反応があれはすぐに散って逃げられるが、隊列の密度が低いので、貫通力も下がる。
それでも、散兵達二万が同じ方区を撃ち続ければ効果はあった。
師団長達が叫ぶ。
『よし! 道を作るぞぉおおおお!』
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□□□□↑第四師団
←←□□□□□□第三師団一万(セツラの中隊が所属する)
□□□□↓第二師団
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第二師団と第四師団が作りだした道へ、一気にセツラ達を含む第三師団の一〇個大隊が突入。陸地の軍港へと飛んだ。
軍港は四万の兵で固められている。対する第三師団は一万。貫通力の高い楔型陣形とはいえ、これは苦しい戦いになるだろう。
第一師団がギリシャ軍基地を背後から奇襲予定だが、失敗すれば、第三師団は壊滅だ。
楔型陣形は、後ろから順に第一第二第三大隊と続き、その先はセツラ達第四大隊を、第五第六大隊が左右から挟み込む形で護衛。さらにその先は第七~大一〇大隊が並んでいる。
←⑩⑨⑧⑦ ⑥⑥⑥ ③②①
←⑩⑨⑧⑦ ④セ④ ③②①
←⑩⑨⑧⑦ ⑤⑤⑤ ③②①
この時、セツラ中隊の巨神甲冑は、仲間達の軍事甲冑の力で持ち上げていた。
反粒子節約の為、可能な限り巨神甲冑は動かさない。
一見するとなんともマヌケな図だが、巨神甲冑の下には重量挙げでもするような姿勢で、横や上には、装甲をつかんだ軍事甲冑達が引っ越し作業でもするような姿勢で空を飛んでいる。
軍事甲冑一〇〇機分の推進力で、一五〇トンの重量を誇る巨神甲冑は、他の部隊に遅れることなく、空を高速飛行する。
「みんな悪いわね、本当はセツラを運ぶはずだったのに」
巨神甲冑の中からの通信は、セツラではなく浅野ノノだった。
中隊の新人女兵が、不安そうな言葉を口にする。
「でもノノさん。本当に隊長は大丈夫なんですか?」
「あんな急に、フィリディーナが出るまでは自分も軍事甲冑で戦線に参加するなんて」
本来の予定では、セツラは最初から巨神甲冑に搭乗して、フィリディーナと戦うまでは一戦もせず、精神的消耗もゼロにする予定だった。
けれど、急きょセツラは自身も最初から戦い、フィリディーナが出るとノノと交代する、と言いだしたのだ。
しかしノノは余裕の声を返す。
「そういえばあんたらは知らないのよね。あらかじめ言っておくけど、今日のセツラを見たら……もう他の男じゃ満足できなくなるわよ」
艶っぽい声で言って、ノノは自嘲気味に笑う。
「濡れるわよ……雌度の高いオンナ程ね」




