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本気出すか

 別室で、サエコちゃんはすぐにセツラ隊長と通信を開いて、結果を報告した。

 隣の僕は自分が情けなくて、涙が止まらなかった。


「そっか……反粒子一〇〇ミリグラムか」

「すいませんセツラ隊長、僕、僕がナミカちゃんをかばったせいで」

「ナミカちゃんをかばう?」


 聞き返すセツラ隊長に、サエコちゃんが答える。


「ナミカは第一中隊の中隊長と自身の友人が不倫しているのを知っていて、それにアドバイスまでしていました。我々はその証拠をつかんでいます。ですがサク様はナミカ様まで巻き込んでしまうと、最後までその証拠を提出しませんでした」


 もしも最初から不倫の証拠を出していれば、ナミカちゃんに喋らせることなく、今回の裁判は第五中隊の独壇場だったろう。


 僕はナミカちゃんの経歴を守った。

 ナミカちゃんとマミさんの関係を修復した。

 でも、その結果自分の隊を見捨てた。

 僕は第五中隊の交渉人補佐官だ。


 第五中隊のメンバーで、第五中隊のみんなを何よりも優先させないといけなかったんだ。


 なのに僕は、他の中隊の人間をかばった。


 ナミカちゃんと仲間を天秤にかけて、その場の安っぽい正義感で、その後の事を考えずに行動した結果がこれだ。


 やっぱり僕みたいに頭の悪い臆病者なんかが交渉人なんて無理だったんだ。

 セツラ隊長には何度謝っても謝り足りないのに、どう謝っていいのか解らなかった。


「……なぁサク」


 画面を見上げると、セツラ隊長は怒るわけでも肩を落とすわけでもなく、いつものように優しい表情だった。


「サクはさ、それが正しいと思ってやったんだよな?」

「え? それは……」

「じゃあいいじゃん。自分が正しいと思ってやったことなら胸晴れよ。じゃないと、ナミカちゃんを助けた想いが嘘になっちまうぞ♪」


 セツラ隊長は温和な笑みを見せてくれる。


「それに電離分子高周波刀は取ってくれたんだから大成功じゃねぇか。というわけでサク。俺も、俺が正しいと思う事をやるぜ。じゃ、俺はみんなと作戦会議すっから♪」


 最後まで笑顔のまま、セツラ隊長は通信を切った。


「セツラ……隊長?」


 あまりに不謹慎で身勝手なことに、セツラ隊長の笑顔を見て、僕の心は軽くなっていた。


 子供っぽくて単純だと思うかもしれないけど、でも、セツラ隊長の笑顔には『この人なら大丈夫だ』と思わせてくれる、不思議な魅力があった。


   ◆


「さてと」


 俺は通信を切って、ブリーフィングルームのみんな、俺の仲間一五〇人に向けて笑った。


「はいはいみんなちゅーもーく。これから重大発表がありまーす♪」


 トモカやレイ、ウオン、ウサミ、ノノ、フワリ達はもちろん、他の女の子達も俺にバッチリ注目してくれた。


「うーん、こうして女の子に囲まれるとやっぱりテンション上がるよねぇ。っと、そうじゃなくて」


 俺は気を取り直した。


「なぁみんな、俺さ、今回の戦いで」



「本気出すよ」


『え………………………………………………………………………………………………?』

 

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