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可愛い同僚たち

「まったく、レイは可愛いなぁ」

「天誅!」


 背後からの飛び蹴りを察知して、俺は半身なるだけで回避した。

 俺の背後を、我が隊の貴重なボーイッシュ美女が飛び過ぎて行った。


「ちぃっ! ボクのキックをかわすなんて……」

「よっマイコ、御機嫌いかが?」


 我が隊の近接戦闘担当、須鎌マイコ少尉が着地姿勢を正す。Tシャツ短パン姿で拳を構えて、俺と対峙した。


「セツラ。前から言っているけど女の子の胸を触るのはいけないことなんだよ!」

「知ってるよ」

「知ってるの!?」

「おうよ、だけどほら」


 あっけらかんとしたまま、俺は近くで武器を運んでいた宗堂ウオンを手で差した。


「レイも揉んだらウオンみたいなビッグサイズになるかと思って」


 ウオンが武装ケースを床に落として、顔が一気に紅潮。


「おっきくないもん! セツラの馬鹿!」


 ゼロ秒後、俺の左肩を強い衝撃が襲った。


 その衝撃は車にはねられたように俺を、体ごと持っていき、上下も解らぬ浮遊感に支配されながら、俺は宙を舞った。


 視界がスローモーションに見える。


 眼下では整備員や俺の部下達が『今日もか』という顔で見上げている。


 走馬灯を見ながら、俺は口から赤い尾を引いて壁に激突した。


 壁からズルズルと落ちる間、遥か前方ではウオンが泣きながらマイコに迫っている。


「うぅ~、マイコ、あたしおっきくないよね?」

「だだ、大丈夫だよ! 二メートル未満だもん! おっきくないよ!」

「うわぁーん! やっぱりおっきいんだぁ~!」

「また身長伸びたの!?」


 俺は鼻と口と目から血を流しながら意識が遠のく。すると俺のもとに『てふてふ』という足音が聞こえて来る。


「セツラー、だいじょうぶー!?」


 我が隊随一の名スナイパー兼マスコット、小野寺フワリが心配そうな顔で走って来る。


 こいつが歩くと何故か『てふてふ』という幻聴が聞こえるからすぐわかる。


 俺の分隊メンバーはこの他にあと三人。その三人はガレージ入口近くのテーブルで顔を突き合わせていた。


「あはは、何よあれ、滅茶苦茶飛んだわよ! ウオン砲ハンパないわね」


 腹を抱えて笑うのは我が隊の貴重な金髪美女、凪本トモカ。金髪は地毛らしい。


「隊長には、品格をもって欲しいですね」


 冷静な顔でマイ武器の高周波刀を磨くのは、白髪紅目のアルビノ美女、天道ウサミ。


「んー、でもワタシ的にはセツラのああいうところが好きなのよねぇ。あっ、もちろんワタシはウサミちゃんの事も好きよ、性的な意味で」


 危険度MAXのロングヘアー美女、浅野ノノ。俺より危ない。

 以上七人が、ぞろぞろと気絶寸前の俺の元へと集まって来た。

 ウサミが刀を鞘に納める。


「それでセツラ。そろそろ攻勢に出るべきだと思うのですが」

「あーそれな」


 俺は首をゴキゴキ鳴らしながら立ちあがると、両手を上げて背筋を伸ばした。


「今のままだと反粒子が足りないからなぁ。次の兵站裁判で、うちにどれだけの反粒子が来るかだな。でないと」


 俺は、すぐ隣にそびえる相棒を見上げた。


「こいつが可愛そうだ」


 白銀に輝く、全長二〇メートルのたくましい巨躯。

 その一五〇トンもの巨体を空へ飛翔させるに足る腰の巨大飛行ユニット。

 日本軍第三師団第四大隊第五中隊所属、巨神甲冑、武尊。軍事甲冑の武尊は、厳密には隊長機であり俺、セツラ専用機、というだけだ。

 あいつを武尊と呼ぶのは、こいつと合体するからに他ならない。


「さてと、次の兵站裁判は、どうなるかねぇ……」


 現代の戦場において、どれだけの戦果を上げられるか。それは、巨神甲冑を何分動かせるかにかかっている。と言っても過言ではない。

 俺は相棒を見上げながら、溜息をついた。

  

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