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開廷!!

「人事異動?」


 サエコちゃんは真摯な目で、落ち着き払った。


「他言無用でお願いします。セツキ様の見立てだと、近々大きな人事異動が起こりそうなのです。新しく第四大隊に配属される何者かが、下調べの為に我々の執務室へ忍びこんだのかもしれません」


 リアリティが無さ過ぎて、僕は顔の前で手を振る。


「いやいや。下調べで忍びこむなんて、セツキ先輩じゃないんだから…………ね?」


 サエコちゃんの目は、あくまで真剣だった。


「まぁ、被害は無かったのでこの事は保留と致しましょう。それよりも問題は、今回の裁判です」

「今のところ勝てる要素が不倫の証拠だけですからねぇ」

「うっ、それは……」


 僕は肩を落とした。


「私が第一中隊に潜入して、ルイがハッキングをしましたが、第一中隊は一切の不正を行っていません」

「今回僕ら第四大隊の五個中隊は全員共同作戦だからね。使っている敵や戦場のデータは全員共通だもの、不正のしようがないよ」


 ルイちゃんは唇を尖らせる。


「それに今回は第一中隊も激戦地に行くわけですからねぇ。向こうは正当な正攻法で強気に出て来るのですよ」


「第一中隊の山本清三曹長が剣の達人っていう経歴は本当なの?」


「本当なのですよ。彼は剣道場の息子で幼い頃から剣道界の有名人で一五歳から刀を使った実戦的な刀道を始めて、その道でも達人と呼ばれています」


「私が関係者にそれとなくかまをかけてみましたが、間違いありません」


「じゃあ当日はセツラ隊長と清三曹長のどっちが電離分子高周波刀の所有者にふさわしいか、互いの身内自慢合戦になるのかな? セツラ隊長の戦果はまとめてあるけど」


 僕が弱気に言うと、ルイちゃんが目をぱちくりさせる。


「何故ですか? 第一中隊の中隊長がナミカ殿の友人と不倫しており、ナミカ殿はその事実を知りながらアドバイスまでしていたという事を暴露すれば勝てるではないですか」


「それはそうかもしれないけどさぁ……」


 そんなことしたらナミカちゃんはうしろ指差される人生に。

 サエコちゃんが口を挟む。


「ふむ。ですがむざむざ最強のカードを切ることもないでしょう。こういうカードは使わずにとっておくとのちのち便利ですし。サク様、可能な限り他の方法で勝てるように致しましょう」


「うん、そうだよね!」


 僕は両手でぎゅっとガッツポーズを作った。


   ◆


「開廷。それではこれより兵站裁判最終弁論を始めます。」


 兵站裁判当日。


 僕とサエコちゃんは法廷で、ナミカちゃんと対峙する。


 結局、決定的な勝利のカードは手に入らなかった。


 ここはいかにセツラ隊長が凄い人で、彼にこそ新兵器の試作品を与えるべき、としなくっちゃ。


 僕は心の中で勝利を誓って、心を奮い立たせた。

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