表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/62

侵入者

 第五中隊の執務室へ向かう途中。やっぱり僕の頭にあるのは、ナミカちゃんとマミさんの事だった。


 子供の為にあえて嫌われて、誤解したまま親を嫌って、そんなのってないよ。酷いよ。


 でもそれを他人の僕に言うなんて、きっとセバミさん自身もかなり追い込まれているんだと思う。


 ナミカちゃんとマミさん。親子二代に渡る悲劇をその目で見て……


「あれ? セバミさんて何歳なんだろう?」


 美人メイドの顔を思い出しながら、僕は執務室のドアを開けた。


「みんなおはよう」

「本部への報告お疲れ様です。コーヒーはブラックとブラックどちらいいですか?」

「どうせ缶コーヒーでしょ? 砂糖たっぷりのブラックで」

「そんなことよりもサク殿!」


 ルイちゃんが珍しく語気を強めながら僕に詰め寄って来た。


「ど、どうしたのルイちゃん?」

「昨晩、サエコちゃんが襲われたのですよ!」

「え? サエコちゃんが? 襲ったんじゃなくて?」

「サエコちゃんをなんだと思っているのですか!?」

「確かに私が襲ったのですが」


 サエコちゃんはキリッとした目で語り出す。


「昨晩、女子寮に帰宅してから、コーヒー用の砂糖を塩と交換すべく執務室に戻ったのですが」

「え? なんの為に?」

「執務室から気配を感じたのです」


 無視された……


「中へ飛びこむとアサシンスーツに身を包んだ尋常ではない胸の女がいました」


 そこの説明いるのかな?


「私は悪鬼羅刹が如く勢いでホルスタイン野郎に斬りかかり、マシンガンとライフルを撃ちまくりました。本当はハチの巣にしてやりたかったのですが、不利とみるや躊躇わずに逃亡。逃げられました」

「サエコちゃん、侵入者は殺さずに捕まえようね」

「犯人はおそらく他の中隊でしょう」


 また無視された。


「それってどういうこと?」

「もしも敵のスパイならば、交渉人の執務室に入る意味がありません。交渉人の部屋に忍び込むのは、同じ交渉人だけですよ」

「まさかナミカちゃんが?」

「いえ、彼女にそんなことをする度胸はありません。それに監視カメラと盗聴機からは、そのような指示を出した様子が見られません」


 盗聴機と監視カメラ、まだつけてたんだ……


「じゃあ他の三つの中隊のうちの誰かってこと? でもこんなの初めてじゃない?」


 僕が交渉人補佐を始めて一年が経つけど、今までこんなことはなかった。

 他の交渉人執務室に忍びこむなんて……悪いけど僕らぐらいのものだろう。


「セツキ様の言っていた人事異動と関係が……」

「人事異動?」


 サエコちゃんは真摯な目で、落ち着き払った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ