女武者
「勝利のカギは反粒子量と、巨神甲冑用電離分子高周波刀だな」
「でしょうね」
俺は海上基地のグラウンド、軍事甲冑の訓練をする区域を歩きながら、青い空を見上げた。
隣を歩くのは今度の敵であるフィリディーナ同様、騎士然ならぬ、武士然とした我が隊の白姫武者の天道ウサミだ。
ウサミは高周波刀を量子化せず、常に腰に挿した帯刀スタイルだ。そのせいで、美人だけど男に声をかけられることはない。
「セツラ。今回は任務の性質上、貴方は最初から巨神甲冑に搭乗した状態での出撃となる。フィリディーナとまみえる前に反粒子が尽きれば終わりですよ?」
「密集陣形で突撃するから、後方からの狙撃もちょっとなぁ。今回はノノとフワリも前線に出そう」
移動操縦が上手く、巨神甲冑の運び手であるノノ、名スナイパーのフワリは、今回射撃兵として連れて行く。
「敵部隊が貴方の防衛戦を破るまでは我々の軍事甲冑で支え、反粒子の消費量を抑えます。それより問題は、フィリディーナとの勝負です……セツラ」
不意にウサミが立ち止まり、声を硬くする。
「当日は、私が巨神甲冑に乗るわけにはいかないでしょうか?」
「なんで?」
「お言葉ですが、剣術だけならば私は貴方に負けない。相手が騎士道に執着するというのならば銃は使わず剣のみで戦えばフィリディーナの騎士道をより刺激できるでしょう。サクが電離分子高周波刀を勝ち取ったならば、私が刀のみでフィリディーナと抑えてみせます。ですからセツラは」
ウサミの唇に指を当てて、俺は笑った。
「女の子に俺より危険な仕事はさせられないよ」
「……セツラ…………御免‼」
ウサミの右手が、腰の刀に伸びた。
一瞬の動作は、人間の反射反応を遥かに超えるものだった。
俺のウサミの視線が交差する。
ウサミは諦めたように目をつむった。
「私の負けです」
再び開いたウサミの視線の先には、白刃の柄を抑える俺の右手があった。
俺の手は居合抜きをしようとする刀を柄を抑えて、鞘から出させないようにしている。
「前は左手だけで白刃取りをされましたが、今はもう、抜かせてもくれないのですね……」
「抜かれると危ないからさ、攻撃力はお前のが上だよ。実際に」
男達の声がしたのはその時だった。
「おい、あれって桐生大尉じゃねぇの?」
「本当だ。また女連れかよ、死ねばいいのに」
「次の戦いで流れ弾に当たる呪いをかけてやる」
軍事甲冑に乗った連中が噂し合う。俺は平気だけどウサミが顔をしかめる。
「セツラ、気にしないでください。ああいう馬鹿は」
「天道までじ胸でけぇな」
「本気でシェイクしてぇ」
「いや俺は尻が、ていうか全身エロ過ぎだから。絶対あれセツラの性欲処理班だぜ」
「俺も処理されたい」
ウサミは赤面して、自分の胸に視線を落とした。
電撃オンラインにインタビューを載せてもらいました。
https://dengekionline.com/articles/127533/




