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開廷! 新兵器を手に入れろ!

「それではこれより、兵站裁判を行います。今回の補給物資。反粒子一〇〇〇ミリグラム。量産型軍事甲冑アシガルの修理パーツ三〇機分。高機動型軍事甲冑センゴクの修理パーツ一〇機分。巨神甲冑用電離分子高周波刀(プラズマ・ヴァイブロ・ブレード)。他、各種重火器の弾薬は省略します。各隊の希望物資は、事前に渡したデータの通りです」


 裁判長は机に肘をついて、息を吐きだした。


「えーっと、やはり今回の争点ですが、大刀を欲しがっているのは第一中隊と第四中隊、それから第五中隊ですね。まず第一中隊、二階堂ナミカ交渉人、何故大刀が必要なのですか?」


 裁判長に名指しされて、ナミカちゃんは勢いよく立ちあがった。


「はい、我が隊には剣の達人、山本清三曹長がおります。電離分子高周波刀は是非とも彼のいる我が隊に。でなければ宝の持ち腐れです」


 ナミカちゃんは胸に手を当てて、自信たっぷりに言い切った。


「なるほど、それはごもっとも。では第五中隊鷺澤サク交渉人、貴方の隊長は大変武勇に優れていると聞きますが、セツラ中隊長に?」


 裁判長に問われて、僕も自信たっぷりに、毅然とした態度で立ち上がる。


「はい。それに何よりも、セツラ中隊長は今回、ギリシャの英雄フィリディーテ少将との一騎打ちをすることになっています。セツラ中隊長の巨神甲冑強化は必須です。作戦内容を考慮すれば、我が隊が電離分子高周波刀を受領するのは当然です。何せセツラ中隊長がフィリディーテ少将を如何に足止めできるか、それが今回の作戦のキモなのですから」


「それはどうかしら?」


 挑発的な声で口を挟んで来たのは、もちろんナミカちゃんだ。


「そのセツラ大尉をフィリディーテが出撃してくるまで守り奥地まで届けるのは我が第一中隊の役目なのよ。セツラ大尉ばかり優遇して、我が隊の強化を怠ればセツラ隊はフィリディーテと戦うこともできません」


「それは一人二人の達人でできることじゃあないよね? 第一中隊みんなでセツラ隊長を護衛するなら弾薬の方が大事だよ?」


「山本清三曹長に電離分子剣をお与え頂ければ、みごと戦場の奥まで敵軍を切り開いてみせます」


 僕とナミカちゃんの間で、バチッと火花が散った気がする。


 そこへ、第四中隊のおじさん交渉人が、


「ふっふっふっ。二人はお若いな。裁判長、ここはあえて剣の達人を保有していない我ら第四中隊の出番ですよ」


「ほう、それは何故ですか?」


「大刀は試作品ですよ? つまりデータが必要なのです。剣の達人が使えば戦果を残して当然。特別剣の達人というわけではない、普通の兵が使わなければ装備の性能はわからないもの。我が隊の巨神甲冑乗りは刀と銃をバランスよく使うオールラウンダータイプ。なのでここはこの第四中隊が」


「寝ぼけたこと言ってんじゃないわよオッサン油! 今回の作戦はギリシャ戦線の今後を左右する大事な戦いなのにデータ収集を優先するボンクラファイヤーがどこにいんのよ!?」


「ていうか第四中隊は僕らの左翼担当ですよね? 僕らの真正面を担当する第一中隊の戦力強化なら納得もしますが左翼なんかを強化してどうするんですか? ポンコツブリザードですか?」


 第四中隊の交渉人は家のローンを抱えたままリストラされたサラリーマンみたいな顔で席に座った。


 どうしよう、ポンコツブリザードとか言い過ぎちゃったかな? 僕は罪悪感で心が痛んだ。すると、僕の脳内にセツキ先輩がにょっこり顔を出す。


 ――サク。敵は二度と立ち上がれないよう、完膚なきまでに抹殺するのよ。ほら、前々回の兵站裁判を思い出すのよ。


「第四中隊は中隊長が恐喝事件起こしてその隊長が功を焦って部下の三割を失ったのにまだ無能アピールがし足りないのですか? 第四中隊は無能アピールしないと死んじゃう病なんですか? 今度はどんなおバカ劇場をみせてくれるんですか?」


 交渉人は目に涙を浮かべながら、


「さいばんちょう……わたくしめは人員さえ補充してくれればもうどうでもいいです」

「え!? いいんですか!?」


 よし、心を折った。って、僕は今何を!?


 僕の頭の中から、セツキ先輩が立ち去った。

   

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