タイマン
ブリーフィングが終了。
俺を含めた各隊長達が部屋から出て来ると、廊下ではみんなが待っていた。
トモカ、ウオン、ウサミ、マイコ、フワリ、ノノ、レイの七人が俺に詰め寄り『どうだった?』と尋ねて来る。
「俺とフィリディーナで一騎打ちだとよ。みんなは俺のサポートよろしくな」
ボーイッシュなマイコが拳を作る。
「サシなの!? ボクも手を貸すよ!」
そう言って俺の右手を握って来る。
「いや、フィリディーナの騎士道精神を利用するらしい。一騎打ちにすれば、よそへは行けないからな」
白髪紅瞳の透き通るような爆乳美女、ウサミが品のある顔を、辛そうにしかめた。
「騎士の矜持を利用するとは、武士として、心苦しいな、私が力になれることはあるか?」
ウサミが俺の左手を握る。
「気持ちだけ受け取って、いや、じゃあ当日まで剣の相手をしてくれよ」
ロングヘアーのセクシー姉さん、ノノが嬉しそうに俺の右肩に手を乗せた。
「んー、勇ましいわねセツラ。ワタシそういうの好きよ、性的な意味で」
ノノは唇を使い、耳元でキス音のような音を鳴らしてくる。
「ははは、だてにお前らの隊長やってないからな、ん?」
上着の右裾を引かれて見下ろすと、小柄で可愛らしいふわりが、不安そうな顔で、
「でもセツラ、わたし不安だよ。ピンチになったら、わたしが狙撃でサポートするからね」
「心配すんなよ、俺は不死身の魔王マンモン様だぞ♪」
金髪美女のトモカが、俺の左肩に手を置いて握り拳を作る。巨乳が腕に少し触れてる。
「燃えるなタイマン! なぁに、お前なら死なないさ!」
トモカがバチーン、とウィンクをする。
クールビューティー、を演じている可愛いレイは、左裾をためらいがちに握りながら、
「フッ。我が魂の伴侶なれば当然のことよ。だがまぁ機体の整備はいつも以上に、うむ」
最後に、背後からウオンが俺の頭を抱き寄せた。身長差で、俺の後頭部はウオンの超乳にうずもれて、マジでキモチイ。もう一生この最高級低反発力枕から離れたくない。
「でもあたしも心配だよ。セツラ無理しないでね」
見上げると、ウオンは大人びた美貌を子供のようにふにゃりと歪めて、悲しそうな顔をしていた。
「いつも心配かけさせて悪いな。でもみんなも知っているだろ。俺、上層部から嫌われているから、今だってほら」
周囲を見渡せば、他の中隊長や大隊長が、悪鬼羅刹がごとく形相で俺を睨んでいる。
ウオンの超乳に頭をうずめる俺を見て血の涙を流し、
七人の美女に寄り添われる俺を見て歯ぎしりをして、
自分達の体育会系または堅物な野郎部下を思い出しているのだろう。どす黒く落ちくぼんだ両目から邪気を滲ませ喉の奥から呪詛を漏らしている。
う~ん、どうしてこうなってしまったのだろう。
俺は自分の人生を振り返る。
まずこの七人とサエコちゃんとルイちゃんを合わせた九人の美少女と幼馴染と妹のセツキと毎日遊んで、
軍事学校ではひょんなことから俺だけ女子クラスで授業を受けることになって、
またひょんなことから俺だ女子寮に住むことになって、
クラスや寮唯一の男子として過ごす間に学校中の女子の人望を勝ちとって、
卒業後は異例のスピードで小隊長や中隊長になったけど上層部の根回しでみんな俺の隊へ転属拒否したけど、幼馴染や元クラスメイトの女子達が俺の隊に転属願を出して、
そうしたら自然と女兵中隊が出来上がってそこの隊長をやっているわけだけど、う~む、俺はいったいぜんたいどうして他の隊長達から嫌われるんだろう。
俺の副官が美女ぞろいで他の隊の副官がおっさんなのは俺のせいじゃないのに。
ま、いっか。
「じゃあみんな、とりあえずこれからスイーツ食べに行こうぜ。ここの海上基地、イタリアの名店が揃っててさ」
七人の顔が上機嫌になって、歩きながら俺に抱きついてくる。
「帰りはみんなにお土産買おうな♪」
ウサミが溜息をつく。
「まったく貴方という人は。そうやってすぐに危険地手当てやボーナスを我々に」
「いいじゃんいいじゃん。みんなには頑張って欲しいしさ。美味いもん食い逃したまま死にくたくねぇじゃん? お前もお菓子好きだろ?」
真面目なウサミの武士顔が、ほんのり赤く染まった。
「それは、そうですが」
背後から殺気をビシバシ受けながら、俺はみんなと一緒に会議室から遠ざかる。




