相思相愛
「ははは、それは素晴らしいラッキースケベだったな」
次の日の午前。病室ではサエコを前にセツキが痛快に笑っていた。
「笑いごとではありません。裁判の時は多少見直したのですが」
サエコが溜息をつくと、セツキがニヤリと顔を歪める。
「惚れたか?」
「他人のモノを盗る趣味はございません。何せサク様は、“セツキ様の男”ですので」
「ふふ、その通りだよ」
実を言うとそうなのだ。セツキは学生時代、サクに告白された事を思い出す。みんなの前で大声で大告白をして、以来サクはセツキの男になった。軍に引っ張って来たのも、それが理由だ。
「それよりも、今回の裁判は愛の鞭ですか?」
足を骨折しても、車いすに乗れば裁判はできる。入院するから裁判を任せる、など不自然過ぎた。
「まあな。それにそろそろあいつの力が必要な時が来る」
重みのある声に、サエコは表情を変え、セツキは続ける。
「近いうちに巨大な人事異動がある。その時、私の邪道だけでは対処できん。邪道は正道とならんでこそ完璧な力を発揮するのさ」
◆
「はーはっはっはっ! 私! 退院!」
「おめでとうございます先輩」
恋人の退院を、僕はばんざいで喜んだ。
「ふはは、今日からまた可愛がってやるぞお前ら♪」
なんて言いながら、先輩は隊舎の方へ小躍りしながら歩いて……階段から落ちた。
「せ、せんぱーい!」
◆
足にギプスをした先輩が、ベッドの上で一言。
「というわけでサク。次回の裁判もよろしく」
僕は、真っ白になって硬直した。




