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パワードスーツで巨大ロボと戦う男

『ならばこれで!』


 イラードはバックジャンプで距離を取ると、今度は両手で巨人サイズのライフルを構える。


「そして三つ目! これが重要! 銃を向けられたら絶対逃げろ! バケツサイズの弾丸を喰らえば即死! 剣の刀身は一本だけど毎秒一〇〇発も襲って来る弾丸を全部」


『撃ち落としてくれる!』


 ダダダダダダダダダダダダダダダダダッ‼


「かわせるわけがないだろ!」

『かわしているぅううううううううううううううううううううううううううううう!?』


 射線に入らなければ銃など怖くない。

俺はバケツサイズの弾丸一発一発の弾道をすべて目で見て読み切って避ける。


 軍事甲冑は、搭乗者の反射神経、動体視力、思考速度を強化する。


 だからこそただの人間が超音速の世界でビルにぶつからず飛行して、弾丸や剣をかわししながら戦える。


 ただしこの強化量、実は足し算じゃなくて掛け算である。


 ようするに、元の動体視力などが高いほど、その分だけ極端に強化される。


 俺は元から裸眼で対人銃の弾道を見切れるので、ローレンツ・ガンなんてドッジボール感覚でかわせる。

 それでも、


「そこだ!」


 俺は背後に回り込んで、腰のブースターにミサイルを撃ち込んだ。分厚い軍事甲冑の八倍の厚みを持つプラズマ・アーマーは通り抜けたが、装甲へのダメージは薄い。


「なら!」


 クイックブーストでイラードの首の裏に接近。ブースターの推進力をそのまま高周波刀に乗せて、横薙ぎの一撃を叩き込んだ。


 ブースターの推進力、全身の人工筋肉のパワーを余さず乗せ、完璧な入射角で叩き込んだ。軍事甲冑なら、例え防御特化型のカスタム高機動甲冑でさえ両断する一撃。分厚いプラズマの守りを破り、高周波で高速振動する刀身が火花を噴きあげながら装甲に深く食い込んだ。


「チィッ!」


 俺は舌打ちをして、クイックブーストで後方へ退避。一〇〇分の一秒後、イラードが振り返りながら裏拳で俺がさっきまでいた空間を抉った。


 俺の刀身は装甲に深く食い込んだ。でも巨神甲冑視点にすれば、皮膚を少し斬っただけだ。


 俺の刃は、イラードの命には届かない。


 でもそれでいい。だって、


「うっしゃあああああああああ! 我が隊のエロ姉さん登場!」

『来たわよセツラ♪』


 頭上から、高速物体が接近。


 それは、戦闘技能はともかくとして、操縦テクだけなら俺以上の浅野ノノが操る俺の愛機、武尊だった。


 きっとここに来るまでに多くの敵機と敵機の攻撃を華麗な飛行テクで避けてきたことだろう。


 ノノはうちの超優秀な巨神甲冑配達員だ。


 超高価な反粒子を燃料として、稼働時間に限界がある巨神甲冑は、最初から運用できない。ここぞと言う時に、必殺技的に使うべきだ。


 でも戦地までの移動に手間取っては燃料が尽きる。だから、とにかく移動力の高い奴が前まで運んで来てくれると助かるわけだ。


『させるものか!』


 イラードは上空のノノを撃ち落とそうとする当たらない。イラードの巨神甲冑も飛翔。一五〇トンの巨体で鳥のように飛んで、剣を構える。


『悪いけど先約があるの、貴方とデートする気はないわ♪』


 刹那の見切りで、ノノはイラードをかわした。まるですり抜けるようにして、イラードは空中で孤立した。


 慌てて眼下を見下ろしているがもう遅い。


『セツラ! 受け取って!』

「おうよ!」


 俺は武尊に向かって加速。


 空中で、武尊の胸部ハッチが開く。中から、センゴクに乗ったノノが飛び出して、俺と交差。一瞬視線を交えた瞬間、俺らは笑みもかわし合う。


「行くぜ武尊!」


 センゴクに乗った俺が武尊と合体。

 ハッチが閉まり、手足が固定される。同時に、俺の脳は武尊とリンクする。

 俺は自分の身体を動かすように、ブーストで減速しながら地面に足から着地した。


『逃げるのが上手いだけの卑怯ものが! 機体の性能差というものを教えてやる‼』

『そうかよ!』


 俺は量子情報化されている高周波刀とローレンツ・ライフルを再構築して飛翔!


 高層ビルの間で、俺とイラードは空中戦を展開する。


 超質量にして超音速。


 自然界ではありえない剛撃同士の激突で大気が激震して絶叫。


 何せ巨神甲冑は、身長二〇メートル、重量一五〇トンという巨体でありながら、軍事甲冑と同じ飛行速度を持つ。


 軍事甲冑同士の戦いで周辺のビルの窓ガラスが割れるのはよくある事だ。


 そして今は、巨人同士の戦いが生み出す衝撃波で、隣のビルの壁面に亀裂が走った。


『おのれぇえええ!』


 剣では勝てないと悟ったか、イラードは距離を取って、荷電粒子砲を構える。

 荷電された粒子の波動が、激流となって放たれた。

 俺が右へかわすと、延長上にあったビルの上半分がまるごと粉砕されながら溶けて、地上に高音の雨を降らせる。

 俺はクイックブーストで接近しながら飛び蹴りを腹に叩きこむ。


『ぐああぁあああ!』


 イラードの機体は近くのビルに背中からめり込んで、壁を貫いて、上半身がフロアの床に乗り上げてしまう。


 巨神甲冑の身体能力なら、要塞でもないかぎりビルなんて紙切れだ。

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