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第9話:私まだGランクですけど

いつもありがとうございます。

第1話を除いてやっと2日目です汗


瞼の奥が明るくなってきた。

どうやら夜が明けたみたい。

目を開けて首だけ動かして周りを見れば昨夜のまま。

少しだけ心配していたジンさんも夜中にやってくる事はなかった。

私はと言えば結局一睡も出来ず、せめてもと目を閉じてじっと我慢していた。

こう真夜中にひとりでぼーっとしてると色々と考えるよね。

自分の行動は本当にあってたんだろうかとか、もしかしたらこの状態が今後もずっと続くんじゃないかとか、実はジンさんにいじめられてるんじゃないかとか、ね。

と、扉が開いてジンさんが音もなく部屋のなかに入ってきた。

手には水差しがあるので、多分私が喉が渇いてると思って持ってきてくれたみたいだ。

その気遣いが出来るならこの魔導着を止めてほしい。


「……」

「え、なんですか?」


ジンさんが何か言ったみたいだけど全然聞こえない。

と思ったらスタスタと枕元に近づいてきて何かに手をかざした。

あ、そう言えば消音の魔道具が動いてたんだった。


「気分はどうだ?」

「あまり良くないです」


寝不足だから当然です。

全部ジンさんのせいなんですけどという思いを込めながらぶっきらぼうに答えた。

といってもこの人は私の些細な反抗くらいで何を思う訳でも無いだろうけど。


「魔力の方はどうだ」

「えっと……あれ?」


言われて考える。

昨日あれほど体内を吹き荒れていた魔力の嵐は、今はそれ程でもない。

もちろんまだ魔力は流れっぱなしではあるけれど、多少身体が火照る程度だ。


「だいぶ落ち着いたみたいです」

「そうか。予想以上に早いな。

起き上がれるなら朝食にしよう。

裏庭に井戸があるから顔を洗って居間に来なさい」

「はい」


ジンさんはそれだけ言うとさっさと部屋を出て行った。

私もよっと上半身を起こし、続いてベッドから立ち上がる。


「ん~~」


伸びをすれば意外とスッキリしているのに驚いた。

寝不足と故郷からの旅でもっと疲れているかと思っていたけど、いつも以上に元気な気がする。

きっと若さと目的地に辿り着けたって高揚感のお陰ね。

私は言われた通り顔を洗って居間に行くと、昨夜同様かなり多めの食事が用意されていた。

昨日のスープの残りと目玉焼きが2つに焼き立てのパンにボウルいっぱいのサラダ。

ちなみにサラダは両手いっぱいのサイズが1人分らしい。

やっぱり分量がおかしいと思うのは私だけ?


「あの師匠。このサラダの山はいったい……」

「好き嫌いは認めないから全部ちゃんと食え」

「いえ、そうじゃなくて」

「ん?」

「……何でもないです」


やっぱり言っても無駄だった。

私は黙々とフォークを往復させてサラダを口に運ぶ。

うーん、味は悪くなくもないというか、食べたことの無い味というか。


「あの師匠。この野菜ってこの辺りでは一般的なんですか?

地元では食べた事が無いみたいなんですけど」

「一般的ではないな。ただ裏庭に沢山生えているぞ」

「え”」


それってただの雑草なんじゃ……

そう思ったけどジンさんの視線を受けて仕方なく全部食べ切った。

朝は雑草、夜は肉の山って私ここに居たら身体おかしくならないか心配になって来た。


「食べ終えたら街に出るぞ。

冒険者ギルドに顔を出してから今日の所は挨拶回りだ」

「挨拶回り、ですか?」

「そうだ。冒険者っていうのは魔物の討伐の他に街の便利屋みたいな側面もある。

だから街の人たちに顔を売っておくのは大事なんだ。

他にも理由はあるが、それは追々自分で体感して行けばいい」

「分かりました」


食事を終え家を出た私達は冒険者ギルドへと向かう。

この家、街外れにあるからギルドまでちょっと遠いんだよね。

あ、それと今日は昨日と違ってちゃんと1人で歩いてる。

いつまでもジンさんに掴まりながらっていうのは恥ずかしいからね。

そうしてギルドに着くと、中は閑散としていた。


「……人少ないんですね」

「時間が早いからな」


確かにまだ夜が明けてから1時間くらいしか経ってない。

途中にあったお店もパン屋さんを始め、朝早いお店しか開いてなかったし。


「冒険者ギルドって開業時間は何時からなんですか?」

「基本は朝8時から夜22時だ。夜中も宿直が居るから緊急の時は駆け込めば対応してくれる。

まああまり良い顔はされないがな。

さて、ギルドに来てやることは、起きてる奴が居たら挨拶して回る」

「と言っても今は数人、机で寝ているだけみたいですが」

「そうだな。朝早いからな。寝てるところを起こすと怒られて最悪殴られるから近づかない様に」

「は、はぁ」

「続いてやるのが掲示板のチェックだ」

「はい」


なんかやっと真面な話になった気がする。

連れて行かれた掲示板には幾つもの張り紙があって中には『早い者勝ち』とか『お買い得』とか書いてあってまるで商店の呼び込みのようだ。


「字は読めるな?」

「はい、大丈夫です」

「掲示物の見方だが、Cランクに指定されている依頼から順に確認していく」

「私まだGランクですけど」

「良いから読め」

「はぁ」


Cランクなんて今の私には縁のない情報だと思うんだけど。

でも読めと言われたら読むしかない。

えっと。


『調査&討伐依頼。

脅威度Cの魔物が出現したと思われる。

場所は南西に4日ほど行ったスパインの森付近。

報酬は……』

『素材募集。

ユニコーンの角を最大3本まで買い取り。

金額は品質を見た上で相談』


他にも魔物の討伐や希少品の納品依頼などが数点ある。

掲載日も昨日のものもあれば1か月前から貼ってあるものもある。

やっぱりCランクともなると受けれる人が少ないって事なんだろう。

続いてDランクを見ようとしたところで奥から声がした。

昨日も受付に居たおじさんだ。


「お、ジンが居るじゃねえか。済まんがちょっと来てくれるか」

「あん?その様子だと厄介ごとか」

「まあな」

「ちっ。仕方ないな」


ジンさんは頭を掻きながら私を置いて奥へと向かっていった。


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