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第88話:雷撃を身に纏い、飛脚術で空を駆ける。

全ての町で人々が翼竜迎撃の為に走り回り王都から騎士団が出撃するなか、別の場所でもひとつの戦いが始まっていた。


『皆様ご覧ください。

これは10年前の映像ではありません。

今。そう、まさに今起きている事なのです!

千を越える翼竜の群。

それが今、港湾都市の西の海上に出現しました』

『それにしても本当に10年前を思い出しますね』


そう声高に話すのはレースの実況ウーギスと解説ナルギスの2人だ。

だが彼らの目的は国民に現実を突きつけて恐怖を煽り混乱を引き起こす事ではない。

むしろ逆だ。


『ですが10年前とは違う点がいくつもありますよ』

『と言いますと?』

『まず違うのが規模です。以前の数十万に比べ今回は万にも満たないでしょう』

『なるほど。比較的対応しやすいと言うことですね』

『そうです。それに魔物のボスですが、まだ遠目ではっきりとは言えませんが暗黒龍ではないでしょう。

なにせ圧が違う。あの時私は王都に居ましたが、それにも係わらず暗黒龍の発する威圧に身がすくみましたが今回は何も感じません。

そして何より前回と違うのは私達です。

過去の災厄を乗り越え、懸命に準備してきた私達にはあの程度、屁でもありませんよ。

見てください。早速敵の先遣隊となる翼竜達が海岸線に用意されたバリスタ隊によって次々に撃ち落とされて行ってます』

『本当ですね。

皆さん。私達はもう災厄に怯えるだけの存在ではありません。

むしろ私達こそが災厄を叩き潰す側になったのです!

今こそ私達の力を結集し、災厄を討ち滅ぼしましょう!!』


その放送を聞いて、我先にと逃げ出していた人達が足を止め、スクリーンに釘付けになった。

映されているのは港湾都市だけじゃない。他の町でも迎撃の準備が進められ、中には小さな子供まで震えながらも懸命に手伝っている姿もあった。

しかも一部の町からは早くも遠目に翼竜が接近してきたのも見える。


「頑張れっ」

「負けるなよ!」


スクリーンの前で声援を送るが当然向こうに聞こえるわけもない。

だけど気が付けば逃げようとする人は誰も居なかった。

そしてそれは王都だけではない。同じようにスクリーン越しにレースを観戦していた東側の人達も同じだ。


「前の時は完全他人事だったけどさぁ」

「ああ。こうもまざまざと見せ付けられて黙って居られるかよ。

俺達にだって出来ることはある。そうだろ!?」

「俺は行くぜ。今ならまだ間に合うだろ」

「なら私は支援物資を集めて送るわ」

「護衛は任せろ!」

「よっしゃあ。魔物ごときに俺達の国を荒らさせはしないぞ!」

「「おおーーっ!!」」


そうやって若者達が中心になって国全体が災厄に立ち向かっていく。

年配の人達もそれを眩しそうに眺めながらも彼らを後押ししようと重い腰を持ち上げた。

それを知ってか知らずか実況の声も熱が入る。


『おおっと。港湾都市のはるか上空を翼竜の集団が飛び越えて行きます』

『あの高さでは地上からでは手も足も出ませんね』

『先程までも散発的に突破していった個体は居ましたが、今度は一気に30体近く。これはまずいですよ。

誰か飛行能力のある冒険者は居ないのでしょうか!』

『有力な人達はレースに参加しています。彼らが港湾都市に着くのはまだしばらく掛かるでしょう。

……いや待ってください。

東の空から青い一条の光が一直線に翼竜の群れに飛んで行きます。いや違う。駆け抜けて行きます!

あれはリーン選手です。

リーン選手が雷撃を身に纏い、飛脚術で空を駆ける。

そして今、翼竜の群れに接触!迸る雷光!!』

『私はこの光景を見るのは2度目です。

1度目はそう、10年前の災厄の時。雷神公は100体近くの翼竜を一瞬で消し炭に変えていました。

そして今また翼竜の群れが消し炭になりました』

『そうです。彼女こそが雷神公秘蔵の愛弟子。雷姫リーンなのです』


そんな放送が流れるなか、スクリーンの向こうで一瞬立ち止まったように見えたリーンは、墜ちていく翼竜を見送った後、すぐさま次の翼竜の群れへと突撃していった。


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